第262話 狙撃だと? いったい、誰だ?
単純な戦術なんだが、一般人がなかなかできるものでもないだろう。
誰だ?
泉か?
いやしかし、あいつは横須賀方面で街を作っていたはずだ。
それに迷わず攻撃してきた。
やっかいなやつだな。
俺は息を潜め、いろいろと考えていた。
◇◇
<狙撃を行った側>
「おい、何かあったのか?」
城壁の上にいる狙撃手に声をかける男がいた。
「あ、小隊長。 今、堀のところで金色の長い髪が見えたので撃ったところです」
狙撃手が答える。
その回答を聞きながら小隊長は呆れた顔でいう。
「お前なぁ、いきなり撃ってどうするんだ。 それよりも金色の髪って・・何だろうな?」
小隊長と呼ばれる男は、狙撃手に近寄って双眼鏡で眺めてみる。
「・・・・」
双眼鏡で見ながら小隊長は言う。
「おい、土煙とくぼ地が見えるだけで何もいないぞ」
「すみません・・」
「まぁ、魔法と銃の融合で、小銃が戦車の銃砲くらいの威力になっているからな。 それに、お前の狙撃手の職種も合わさって・・とにかく、隊長に報告しておくよ。 警戒を怠るなよ」
「はい」
微笑みながら狙撃手に声をかけていた。
二人とも夜だが、スキルでよく見えるようだ。
小隊長は城壁を降りて行く。
狙撃手は小銃を立てて、抱え込むようにして座り土埃がおさまるのを見つめていた。
小隊長は歩いて隊長のところへ向かって行った。
城壁の中は小さな町になっている。
とりあえず、人が生活するのがギリギリのような町というか村だ。
それほど広くはない。
城壁の中で生き残っているのは、20人ほどだろうか。
建物がいくつかあるが、その中心部に3階建ての建物がある。
そこを目指して歩いているとヨロヨロと歩いている女の人がいた。
小隊長が近づいて行くと、ビクッとして後ずさる。
「どうしたんだ?」
小隊長は声をかけるが、相手は震えながら言葉にならない言葉をつぶやきながら、腰が抜けたようにその場にしゃがみこんだ。
「ふぅ・・またか・・」
小隊長はもはや言葉にすらならなかった。
女は異世界人だ。
当初はいろいろ知識を共有して、街づくりを一緒に
・・・
だが、隊長の悪い趣味の犠牲になっていた。
毎日、女を抱く。
それだけならいいが、普通じゃないようだ。
自分にはそんな趣味はないのでわからないが、日を重ねるごとに女たちが疲弊していく。
小隊長は現役陸上自衛官、練馬の普通科連隊の隊員だった。
魔物が現れ治安出動したが、何の役にも立たなかった。
そのうち、連隊は魔物襲撃を受け壊滅。
小隊長は自分を含め3名だけを確認し、言葉を悪く言えば逃げてきた。
どう考えても、戦車を持ち上げて振り回す魔物と肉弾戦をする気にはなれない。
目の前に戦おうとする隊員がいたが、それだけでも助けなくてないけないと思った。
治安出動しているが、治安どころではない。
どうすることもできない。
嫌な気持ちになりながらも、現場から逃げた。
つまりは、一般市民を見捨ててしまったわけだ。
逃げるときにはそれほど罪の意識を感じなかったが、落ち着いてくると毎日悩んでしまう。
あの時に死んでおけばよかったのだろうかと。
いや、偽善だな。
俺は自分の命が惜しかったのだ。
頭を軽く振る。
また、逃げている途中で元隊員の先輩に遭遇。
関東連合とかいう反社会組織に属しているという話は聞いていた。
組の構成員も3名いた。
非常事態ということもあって一緒に行動することになったが、今となっては後悔の方が強くなっている。
先輩を隊長として、7名で名古屋方面に向かって移動していた。
名古屋市街地でも戦車などの残骸を確認。
もっと都市部から離れた方がいいと思い、京都方面に移動していると大きな城壁が見えてきた。
城壁に沿って歩いていると入り口が見える。
小隊長たちが入り口で助けを求めると、中の住人は
住人は40人程だろうか、どの人もこちらを気遣ってよくしてくれた。
聞けば、異世界人という。
初めは信じられなかった。
だが、魔物などというわけのわからない怪物から逃げてきたところだ。
自分では理解できない何かが起きているのだろう。
それにきちんと会話ができる。
保護を受けていろいろ話しているうちに、どうやらこの地球が魔法やレベルが存在する世界になったらしい。
信じられないが、自分もそういった話は聞いたことがある。
後輩たちが話していた。
何を中二病みたいなことを言っているんだと笑っていたが、現実になったようだ。
そして異世界人たちは、魔法で建物などを一瞬で建てていた。
地球人はいなかったのかと聞いてみたが、いなかったようだ。
小隊長たちは魔法の知識と現状を確認しつつ、これからどうにかやって行こうと思っていた。
魔法の効果は絶大だった。
自分のイメージがそのまま身体能力に反映される。
自分の職を選び、城壁を出たり入ったりしながら魔物を倒しレベリングを重ねていた。
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