第261話 これって・・まさか!!


移動はゆっくりとしているつもりだが、結構な速度なんだろうな。

何せ、俺たちはレベル40超。 

冒険者ランクでいえばSランクだ。


いつものように高速道路を使って移動する。

すぐに淡路島に入り、明石大橋が見えてきた。

5分も経過していないだろう。

いやいや、かなりゆっくりと移動しているつもりなんだが。

前はここから直線で藤岡の所へ向かったが、今回は高速道路沿いをゆっくり行ってみたいと思った。 

夜の散歩だ。

索敵をしてみると、魔物の反応はある。

だが、どれもレベル20前後だ。


なるほど・・急速に状況が落ち着いてきている感じだな。

ただ、都心部だったところでは、まだまだレベル30近くの魔物もいるかもしれない。 

確認はしていないが。

そう思うと、少し気になることができた。

京都だ。

藤岡も京都だが、北京都だしな。

・・・

少し寄り道してもいいだろう。 

どうせ、夜に着いてもやることないし。

そう思って、六甲山の南側を横切り高槻から京都へ向かおうと思った。

琵琶湖も近いしな。

琵琶一びわいちなんて、自転車で走るイベントがあったような・・ついに参加できなかったが。


フレイアに、散歩がてら回り道して行くというと、了解してくれた。

フレイアは夜の月明かりの中を気持ちよさそうに移動している。

なんか鼻歌も聞こえてきそうな感じだ。


周りに注意しつつ、索敵は怠らないようにはしている。

・・・・

やはり、格段に災害レベルが下がってきているのだろうか。

あれほどレベル20オーバーの魔物がいたのに、そんなに見かけない。

いることにはいるのだが、それほどでもない。

バジリスクやスフィンクスなど、今のところ遭遇していない。

アニム王の街づくりとダンジョンの役割が大きいと言ったところか。


出発して、30分も経っていないだろう。

スムースに移動でき、京都駅の辺りについたようだ。

京都タワーは見る影もない。

ローソクみたいでランドマークになっていたのに。

そんなことを思いつつ、やはり都市部はひどいなと、改めて思った。

ここから北へ行けば、漫画ミュージアムがあったよな。 

だが、きれいな街並みは見る影もない。

まぁ、人が大勢集まる場所だったから、レベルの高い魔物も現れたのかもしれない。

俺的には結構ショックだが、仕方ない。


「テツ・・ここの街もひどいね」

フレイアがゆっくりと歩きながら声をかけてきた。

「あぁ、そうだな」

俺もぼんやりと答える。

「フレイア、何か変わったこととか感じるかな? 魔物の反応は、それほどないのだが・・」

俺はフレイアに聞いてみた。


「うん・・人の魔素みたいなのは・・あるわよ!」

フレイアが答えてくれた。

「本当か?!」

俺は少し驚いてしまった。

まさかこんな状況で人が生きているとは。

それとも、街が出来ているのだろうか?

俺はフレイアが示してくれる方向へゆっくりと移動した。

少し歩くと、城壁のような壁が見えてきた。


瓦礫がれきに隠れながら横に広がっている。

一見すると、瓦礫のように見えないこともない。

誰かが、うまくカムフラージュのためにしているのだろうか?

そんなことを思いつつ、その壁に近づいて行く。


壁の手前20メートルくらいに来たところだろうか?

堀のようなものがある。

5メートルくらいの幅があるぞ。

その堀に近づいてみる。

・・・・

ん?

これって、まさか・・。

!!

俺は急いで、フレイアの頭を捕まえて一緒に地面に突っ伏した。


ドシューーーーーン!!


直後、今まで俺たちのいた頭の高さのところ、近くの瓦礫がれきが爆発して崩れた。

明らかに狙撃と思われる土埃が、周りの瓦礫にできる。

そして、連続して爆発が発生する。


ドン、ドン、ドン・・・・。


「テ、テツいきなり何をするんだ!!」

顔に泥をつけ、フレイアが俺に向かって言う。

俺はその言葉を聞きつつも、フレイアを引き寄せ、後ろの瓦礫がれきの中へ飛び込んだ。

・・・・

・・・

俺たちのいたところは、爆発とともに土埃つちぼこりが舞い上がっている。


俺はフレイアを抱きしめつつ、息を殺して辺りを探ってみた。

・・・

・・

!!

遠く、500メートルくらいか・・いやもっとか。

誰かいる。

・・・・

レベル24・・人か?


俺がそうやって探っていると、耳を赤くしたフレイアが俺の腕の中でそっとこちらを向いた。

「テ、テツ・・いったいどうしたんだ?」

そうだった、忘れていた。

フレイアを抱っこしていたんだ。


俺はフレイアをそっと横に置く。

「あぁ、フレイア・・いきなりですまないな」

俺の警戒している雰囲気を見てわかったのだろう。

フレイアも警戒しつつ、俺のそばで身をひそめる。

「実はな・・」

俺はあの堀の違和感を話した。

城壁の前に堀が作られていた。

それはいい。

その堀に近づいて、俺たちが何があるのかと思って身体を起こしたのがいけない。

つまり、引っかかってしまったんだ。

相手の単純な戦術に。


よく有刺鉄線ゆうしてっせんなんかで道を塞ぐのだが、それは通行止めの意味もある。

だが、その時に何だこれ? と思わせて、相手の身体が起き上がるのが目的なんだ。

その起き上がったところを狙撃する。

そういったことをフレイアに話してみた。

「なるほど・・理にかなっているわね」

フレイアは納得していた。

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