第254話 無茶苦茶、美味しいぞ!


「どうしたの、テツ?」

フレイアがのぞき込むように聞いてきた。

「い、いや、別に・・その・・俺って勝手に動いているから、それでいいのかなって思って・・」

フレイアが不思議そうな顔をこちらに向ける。

「え?  別にいいんじゃない? 私だって行きたいところが出来れば言うわよ」

そんなことを言っていると、スープが運ばれてきた。


俺たちの前に、どうぞとスープを置くと係の人は奥へと帰って行く。

野菜スープのような感じだ。

一口スプーンですくって飲んでみる。

!!

おいしい。

野菜スープだろ?

俺には作れない味だ。


しばらくすると、食事が運ばれてきた。

鉄板の上に、ジュージューと音をたてて、きつね色の肉が一口サイズに切られていて並んでいる。

「こちらのタレをつけてお召し上がりください。 ロックバードのグリル焼きです」

そういうと、その鉄板を俺たちの前に置いて、係の人は奥へと下がって行く。

俺とフレイアは、肉をフォークで刺し、タレにつけて食べてみた。

!!

お互いに顔を見合わせて、鉄板を見る。

もう一度、お互い顔を見合わせた。

「「おいしい~!!」」


ラピット亭もおいしかったが、帝都ホテル・・伊達じゃないな。

これはおいしい。

肉を噛んだ瞬間に、肉汁がじゅわっと口の中に広がる。

それを、タレがすっきりと甘くもなく辛くもなく流す。

後味は肉を口いっぱい食べた感覚にさせてくれる。


俺たちは無言になった。

動作はゆっくりと気持ちは急ぎつつ、肉を次々と口に入れていく。

・・・・

半分くらい食べたときに、次の食べ物が運ばれてきた。

卵サンドのようなものが3つ乗っている。

これも一口サイズだ。

その横にチーズのようなものがスライスされて、はちみつのようなものが添えてあった。


係の人が何やら説明していたが、肉がおいしくてその味に夢中になっている。

ほとんど聞いてなかった。

品がないな、俺って。

しかし、あまりにもおいしいからな。

係の人は皿を置いて下がって行く。

俺はチーズのようなものを手に取り、一口食べてみる。

チーズのような、豆腐のような・・よくわからん。

はちみつみたいなものにつけて残りを食べてみる。

・・・

これもおいしい。

ほどよく甘い。

はちみつだな。


後は卵サンドだが。

一口サイズになっているので、そのまま手に取って口に運ぶ。

おいしい。

卵の味は、フレイアが採ってくる卵のようだがおいしさが違う。


フレイアが話しかけてきた。

「この卵・・私が朝採ってくる卵ね。 こんなにもおいしくできるのね、すごい」

フレイアは感心しながら食べている。

すると係が次の品を運んできた。

デザートのようだ。

「こちらでお勧めは終わりになりますが、お気に召したものがあれば、おかわりをお持ちいたします。 ご遠慮なく御申しつけください」

そういうと、軽く会釈をして下がっていく。


おかわりができるのか。

だが、俺は結構お腹いっぱいになった。

そう思っていると、フレイアが手を挙げていた。

ブフォ、ゴホ、ゴホ・・。

あんたいきなりだな。

すぐに係の人がやってくる。

どうやら、卵サンドをおかわりしたようだ。

フレイア、よく食べるな。

その身体のどこに入っているんだ?

そんなことを思いつつ、デザートを食べる。

パンナコッタのような感じの味だ。

それにアイスクリームのようなものもある。

口に運ぶと濃いミルクの味がする。

おいしい。

嫌な味ではない。

アイスは口の中をさっぱりとさせてくれた。

・・・

・・

俺はもう満足だ。

フレイアもおかわりの卵サンドを食べて満足したようだ。


「フレイア、ありがとう。 こんなおいしいところを紹介してくれて・・」

俺は実際に感動していた。

「ほんとに・・ルナ様にお礼言わきゃね」

ふぅ・・とお腹をポンポンと軽く触れながら、俺はフレイアに話しかける。

「フレイア・・この食事が終わって家に帰ったら、俺は帝都の外を回ってみようかと思っているんだ」

フレイアについて来てくれとは言えない。

俺の勝手な行動で振り回しているからな。

フレイアにもやることはあるだろう。


「そう・・テツ・・私もついて行っていい?」

フレイアがまっすぐに俺の方を向いて言う。

俺は少し戸惑った。

まさか一緒に行ってくれるとは思ってなかった。

少しくらいの嫌味程度ならアリだろと思っていたくらいだ。

「も、もちろん。 ありがとうフレイア。 君がいればとても心強いよ」

俺は本心から答える。

フレイアは微笑みながらうなずいていた。

女の子って、いつまで経ってもよくわからないな。


俺たちは席を立ち、会計を済ませる。

無論、俺がごちそうする。

1人5000ギルだった。

高いのか安いのかわからないが、とにかくおいしかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る