第243話 どや顔だな、嫁さん


お茶のお礼を言ってばあちゃんの家を俺は出る。

さて、嫁の家にも寄って行くか。

時間は19時前。

嫁の家の前に来た。


呼び鈴を押してみる。

「はーい」と、凛の声が聞こえた。

しばらくすると、ドアが開く。

「パパ、お帰り~」

凛がスラちゃんを抱えて、出迎えてくれた。

凛の無邪気さが心に刺さるよな。

後ろに颯もいた。

頭の上にバーンが乗っている。


「あ、テツ、お帰り。 あのさぁ、テツ知ってる? 兄ちゃんに彼女ができたの・・」

颯がいきなり聞いてくる。

俺も家の中に入れてもらった。

「お邪魔ぁ~」

リビングへ行くと、嫁とお義母さんがいた。

「あら、テツさん、いらっしゃい」

お義母さんが言ってくれる。

「あら、パパ、どうしたの?」

嫁は普通に接してくる。

お義母さん、普通に娘の家にいるよな。


地上ではスーパーエイトがきちんと運営されていて、もしかしたら帝都にもできるかもしれないと俺は伝えた。

・・・・

・・

「へぇ、そうなんだ。 それは便利ね」

嫁がそう答えつつ、何か明るい雰囲気だなと俺は思った。

「それよりも、優に彼女が出来たでしょ?」

嫁さんはそれが気になるようだ。

「あぁ、レイアか・・」

「よく知ってるわね、そうその美人な子よ。 颯が兄ちゃんが遊んでくれないって、ねぇ」

嫁が颯を撫でていた。

「そっか・・ま、仕方ないよ颯」

俺にはうまい言葉が見つからない。

「そうそう、優兄ちゃんはそうやって大人になっていくんだから・・・」

嫁が微笑みながら言っている。


颯は黙ってバーンを抱っこしていた。

「後は・・何か変わったこととかない? 俺もいろいろ忙しくなってきてるからな」

俺が現状を伝えていると、嫁がニヤッとしながら言ってくる。

「あのね、私たちレベルが上がったのよ」

・・・・

・・・

聞けば、どうやら優の支援の下、嫁とお義母さん、それに凛がそれぞれレベルアップしたみたいだ。

ダンジョンの攻略に挑戦したという。

嫁:レベル23(スナイパー)

お義母さん:レベル21(プリースト)

凛:レベル22(アークメイジ)


なるほど。

優が見ていて我慢できなくなったんだな。

自分だけがレベル高かったからな。

家族が心配になるのも無理はない。

それにしても、お義母さんもそうだが、年配者って回復系を選びたくなるのだろうか?

ま、何にせよいいことだ。

颯はレベル28あったしな。

「凄いな、みんな良かったな」

俺はそう言ってみた。

「えへへ・・」

凛が喜んでいる。

「これで、私たちも立派な冒険者ね」

嫁が自信ありげに答えている。

・・

いや、無理だから。

心の声です、はい。


優の支援でレベル上がって、実戦などほとんどしてないだろう。

俺はかなり不安になったが・・大丈夫かな?


「それに、ダンジョンで魔物倒して魔石を持って帰るとお金になるしね。 素材なんかも買い取ってくれるし。 良い世界になったわね」

嫁の言葉にお義母さんもうなずいていた。

いやいや、無理だから。

簡単に考えてるんじゃない?

しかしまぁ、そんなものかな。

どうせ言ってもわかるような嫁じゃないし、どこかで適度に痛い目を見ればわかるだろう。


「そうだな・・」

俺はゆっくりうなずいて答える。

「パパさん、冒険者でしょ? お金とかどうしてるの?」

嫁が聞いてきた。

「あぁ、前にも言ったが、君たちと同じようにしてお金にしているよ。 それに、依頼を達成したりしても報酬をくれるしね」

俺がそういうと、嫁が突っ込んで聞いてきた。

「パパさん、いくらくらいお金稼いだの?」

!!

来たか!

言ってやろうかな・・億を超えるギルを持ってますと。

しかし、既にお金の価値がほとんどないしなぁ。

「あぁ、ある程度は稼いでるから、そのうちに嫁さんのところに振り込んでもらうよ」

俺はとっさにそう言ってしまった。

ギルドやアニム王がライセンスカードに入金できるんだから、俺のギルを誰かに振り込むくらいわけはないだろう。

金、金とうるさい奴だったからな、この嫁は。

おかげで、俺の方が変に委縮してしまった。


「そう・・ありがとう。 私たちも結構稼いだからねぇ」

嫁がお義母さんの方を向きながらニヤッとして言う。

嫁は単にどれくらい稼いでるか気になったようだ。

「結構稼いだって、どれくらい稼げたんだ?」

俺の方が気になった。

「えへへ・・言えません。 でも、50万以上100万ギル未満です」

嫁がドヤ顔で言ってくる。

「そうか・・ま、そんなものだな」

俺が驚くこともなく答えると、反対に刺激したのだろうか。

嫁が聞いてくる。

「じゃあ、パパはいくら位稼いだの?」

どうしようかな。

俺は少し迷ったが、答えてやった。

「俺も同じようなものだが、500万以上1000万ギル未満です」

!!

嫁とお義母さんが驚く。

実際には10倍以上は稼いでるけどね。


嫁は言葉を失っていた。

・・・

ここら辺が潮時だろう。

俺は立ち上がる。

「じゃ、また。 凛おやすみ~。 颯おやすみ~。 ギルドへ行って嫁のカードにお金が振り込めるか聞いておくよ」

俺はそう言って、凛と颯をギュッとして二人のほっぺにキスをした。

子供たち二人は、笑いながら手でぬぐっていた。

冗談とはいえ少し落ち込むぞ。

いや、真剣にされていたらショックが大きすぎる。

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