第239話 スーパーエイトは健在!


定期船に近づいて行くと、到着口の方から歩てくる人たちと遭遇。

その集団の中から、一人のフードを被った人が俺たちに近寄ってくる。

俺は少し警戒したが、近寄りながらフードを外した。

!!

「テツじゃない! 今から地上へ行くの?」

ココだった。


「え? あ・・ココ!」

一瞬、俺は言葉に詰まってしまった。

まさかこんなところで出会うとは。

「テツ・・あなたねぇ、今、言葉に詰まったでしょ?」

「いえ、そういうわけでは・・」

「ま、いいわ。 私も今は急ぐから、またね」

ココはそのまま手を振って、発着場を去っていった。

いったい何だったんだ?

フレイアが不思議そうに俺を見ている。

「あぁ、フレイア。 今の子が地上の街の審議官だよ」

定期船へ向かいながら説明した。

「ふ~ん・・」

フレイアはあまり関心がないようだな。

ま、いっか。


俺たちは船に入り、そのままそのフロアの奥の方へ歩いて行く。

このフロアは自由席エリアのようだ。

ところどころに椅子があるが、地上まで5分もかからないだろう。

今、俺たちが立っているフロアの下は運搬物資の区画のはずだ。

上のフロアは普通の船なら、くつろげる空間が装備されている。

この船だけは、物資輸送がメインとなっているため上のフロアも自由空間らしい。

窓から下を見ると、ギルドの屋根が見える。

目線を水平方向へ移動させると、帝都の街並みがきれいに見えた。

本当に放射状に広がっているな。

きれいな街だ。


船内アナウンスが流れる。

『間もなくドアが閉まります。 ご注意ください』

定期船のドアが閉まり、ゆっくりと船が移動する。

振動は感じられない。

変に浮いてる感じもない。

軽い加速感を感じると、雲の中に入っていく。

雲の流れを見ていると、結構な速度が出てるはずだが静かだ。

フレイアは窓の外をずっと見ている。

すぐに雲を出て、下に陸地と海が見えた。

時間は16時を過ぎている。


街がどんどん大きくなってきて、すぐに市役所の横に到着。

市役所を上から見たことなかったけど、しょぼいな。

それに比べてギルドがきれいに大きくなっていた。


船のドアが開き、俺たちは下船。

なんか久々の地上のような感じがする。

俺は両手を上にあげて大きく伸びをした。

「んんっ・・ぷはぁ」

フレイアが横でクスクス笑っている。

「なんだよ、フレイア」

「ううん、別に・・」


さてと・・まずは地上の家を一度見ておこう。

「フレイア、地上の家を見てから、スーパーエイトへ行っていい?」

「いいわよ」

フレイアの返事を聞くと、俺たちは軽く走る。

・・・

まぁ、当然といえば当然だが、すぐに家に到着。

家の周りを見てみるが、変化はない。

よし!

今度はスーパーエイトだ。


すぐに到着するが、スーパーエイトには結構人がいる。

駐車場には車はなく、人がバラバラと歩いていた。

まぁ、ぶつかるほどではない。


中に入ってみると、かなりのお客がいる。

俺の第一印象。

これだけの人が生き残っていたんだ。

そう思った。

よく無事に生き延びれたな。

そう思いつつ、いつもの通り入り口から入ってまっすぐ歩いて行く。

お客の中にいる男たちが、チラチラと俺たちの方を見る。

そりゃ、フレイアがねぇ・・。

ま、放っておこう。


この通路は野菜や総菜ものを並べてある列だ。

その野菜を並べているところに店員の服を着た人がいた。

ん?

見たことあるぞ。

!!

あ、この店の店長だ。

俺はやや早足で店長に近づいて行った。

おそるおそる声をかける。

「すみません・・」

「はい、いらっしゃいませ!」

店長は条件反射で威勢のいい声を出して、こちらを向いた。

「あ・・あなたは、誰でしたっけ?」

俺はカクッと膝が抜けそうになった。

「店長、あの・・」

「いや、わかっているんです。 あの大きな犬のときに助けていただいた人ですが、お名前が思い出せずに・・すみません」

店長は頭を下げながら言っている。

・・・・

・・

話を聞けば、あの事件の後、店を片づけて在庫を整理していたそうだ。


当分の間は、発電機の燃料もあるし運営できるという計算もあったという。

そのうちに、市役所のところに異世界人が来ているという話をキャッチ。

それを見に行って、ライセンスカードなどを発行してもらったりしたそうだ。

店も魔法できれいに直してもらい、エネルギーも魔石で発電するシステムになったという。

当初は発電機を利用していたが、そのうちに燃料が入ってるのに動かなくなったりするのが出てきたようだ。


そういえば、店もきれいになっているな。


レジも読み取りなんかは従来通りにしているが、会計はライセンスカードで行っているという。

もはや日本のお金は使えない。

結果的には、以前よりも効率がアップしているという。

それに物流も安定して運営できてるそうだ。

元々、地産地消をモットーに運営してきたのが、役に立ったみたいだ。

・・・

・・

「そうですか・・大変でしたね」

俺はその店長の意気込みに敬意を払った。

「いえいえ、あの時に助けていただいたおかげです。 ありがとうございました」

店長は丁寧にお礼を言ってくれた。

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