第238話 ギルマスの思い付きで仕事がパッと進むんですけど・・


「テツ君、大活躍だね」

ギルマスがニコニコしながら俺に席を勧めてくれる。

俺は席につきながら恐縮する。

「ギルドマスター・・私は、本当にそんなに活躍しているのですか?」

「あはは・・・何を言ってるんだ。 ドワーフ王国を助けて、その後の調整までしたそうじゃないか。 大功績だよ」

・・・

俺には言葉がない。

「ギルドマスター・・私は、単にその場その場をしのいでいるだけなのですが。 活躍って言われても何かいい気分にはなれないですね」

俺は正直な気持ちを打ち明けた。


ギルマス(ギルドマスター)はニコニコしながら俺を見ている。

なんか、このギルドマスターには何でも話せそうな感じがある。

「そうか・・君はあまり欲がないね。 普通なら皆、自分をアピールするんだがね。 それとも、地球人の特性なのかな?」

ギルマスは真剣に考えているようだ。

「いや、私の性格だと思います。 後、アニム王からいただいている報酬も・・私の感覚では莫大なものですが・・」

俺はゆっくりとギルマスを見る。

「う~ん・・王様から出る報酬は、決して多すぎることはないと思うんだが・・ま、遠慮なく受け取っておくことだな。 邪魔になるわけじゃないし」

ギルマスは軽く言ってくれる。

「それとテツ君。 君のランクだが、Aランクになってもらうよ。 無論、フレイアも同じだ」


あれ?

そういえば、フレイアのライセンスカードって・・。

そうか!

もともとこちらの住人だ。

持っていて当然だろう。

なるほど。


「それはありがたくいただきます」

俺はうなずく。

ランクが上がるのは問題ないだろう。

誰に迷惑をかけるわけでもない。

「なるほど。 テツ君、充実しているようでなによりだ。 それと、ランクA以上はライセンスカードにはBとしか表示されないようになっているから」

ギルマスがそう言って、ライセンスカードを見てみろと顎で合図する。

見ると、確かにライセンスカードにはBと表示されている。

そのカードをギルマスが持っているパネルに置くと、カードのBの表示がAに変化した。

「あ・・」

俺は思わず言葉が出た。


「テツ君、なんでこんな面倒なことをやっているのかという顔だな」

ギルマスは続けて言う。

「ランクが高いと、良い面もあるが不都合な面も出てくる。 B表示なら、そこそこの冒険者だろうとみてくれる。 無理な仕事も押し付けられなければ、められることも少ない。 まぁ、今までの経過から我々のギルドネットワークではそうしているんだ。 だから、カードの表示がBだからといって、その人の実力はわからない」

ギルマスはそういって軽く背中を叩いてきた。


「なかなかおもしろいシステムだろう?」

ギルマスがニヤッとしながら言う。

俺もうなずいた。

確かに、高ランクなら敬遠されたり、名声などのために狙われたりする可能性がある。

でも、Bランク表示なら、もしかしてAランクかも・・なんて思うと、変なちょっかいを出せないし、Bランクになりたてでも余計なトラブルが減るだろうな。

そんなことを思ったりした。


「ところで、テツ君はこれからどうするんだい?」

ギルマスが聞いてくる。

「はい、地上へ買い出しに行って来ようと思っています」

「なるほど・・地球の食材を調達だね」

「はい」

「ふむ、そのうちにこの街にも同じような店を出してもらうとしようかな・・」

ギルマスが顎に手を当てながらつぶやいている。


「え? 帝都にスーパーを持ってくるのですか?」

俺は思わず聞いた。

「そうだな・・テツ君が必要ということは、他の人たちも必要になるだろう。 それに、我々も同じようなものを食べているんだし、問題ないだろう」

「・・・」

俺は言葉がない。

パッと決めて実行に移そうとする。

仕事が早い。


「そうだ、テツ君。 地上へ行くなら、ついでにそのお店、スーパーだったかな? 帝都にも作れるかどうか聞いてきてくれないか?」

ギルマスがいきなり聞いてきた。

なんか軽いけど、重要な仕事のような気もする。

その時にフレイアが口を挟んできた。

「ミラン、そうなのよ。 そのお店でとってもおいしそうなスイーツがあるみたいなの。 私、食べれなかったんだけど・・」

俺をジロッと見てくる。

「だったら、なおさらだね。 頼んだよ」

ギルマスはそういうと席を立った。

俺たちも席を立ちギルマスに挨拶をする。

そして、早速ギルドの定期船の発着場へ向かった。


ギルドの受付のフロアからエレベーターみたいな昇降装置に乗って発着場へ移動する。

音もなく運んでくれる。

発着場についてみると、結構人がいる。

みんな、すでに地上と行き来しているじゃないか。

適応力は早いな。

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