第236話 手料理


「今日は疲れただろう。 ゆっくりと休むといい。 それから、報酬は当然受け取ってくれたまえ。 また、ミランが時間ができたらギルドへ寄ってくれと言っていたよ」

アニム王の言葉に俺は謝意を示す。

俺たちをねぎらい、アニム王は公務へと戻って行った。

その姿を見送り、俺たちも王宮を後にする。


アニム王・・本当に気にしなくていいのになぁ。

俺はかなり充実した時間を過ごさせてもらっている。

感謝しかないぞ。

俺の正直な気持ちだ。

・・・

なんか、お腹空いたな。

ホッとしたのだろうか。

「フレイア・・お腹空いてない?」

俺はフレイアに聞いてみた。

「う~ん・・そういえば、空いたかも・・」

気分かよ!!

「なんか食べて帰る? それとも何か食材でも買って家で作ろうか?」

フレイアはおそらく卵を焼くことくらいしかできないだろうと、勝手に思ってみる。

俺も毎回ラピット亭では芸がないだろう。

なんとなくそんな風に思った。

「それじゃあ、テツの料理を食べてみたいわね」

フレイアは軽く答える。


「そうだな、野菜炒めばかりでもなぁ・・」

俺はつぶやきながら考えてみた。

・・

そうだ!

チキンステーキがいい。

確か、ロックバードだったっけ?

まんま鳥肉だったからな。


「フレイア、鳥肉を買って行こう」

俺はそう言ってギルド周辺の店へと向かう。

食材なんかはほとんど露店で売っている。

ギルドで引き取ったのを売ったりしているようだ。

狩猟専門のハンターなんかもいるようだし、自分で採って来たのを売ってる人もいるだろう。

自分で売るとなると、解体スキルがいるんじゃないか?

そんなことを考えながら店を物色。

「いろいろあるなぁ・・」

正直、どれがいいのかわからない。

!!

あ、俺、鑑定があったんだ。

早速鑑定をしてみる。

・・・

なるほど・・肉の塊になってるが、いろんな情報が見えるな。

鮮度と種類、レア度等々。

フム、フム・・。


「テツ・・何かいいのあった?」

フレイアが横で話しかけてくる。

そして指を差して言う。

「あれなんかどう?」

一塊の肉があった。

見ると、ロックバードだ。

なるほど・・状態もいいようだ。

これでいいだろう。

「そうだな・・これにしよう」

俺はその肉を買う。

1000ギルとある。


肉を手に入れて、そういえばどれくらい残高って残ってるのか気になった。

アニム王が報酬をくれたと言ってたしな。

フレイアと家に向かって歩きながら、ライセンスカードを確認。

えっと、残高は・・いち、じゅう、ひゃく、せん、まん・・。

??

あれ?

桁を数え間違えたかな?

前は3000万を数えたところだったが。

もう一度数えてみる。

・・・

・・

1億2000万って、マジか?

・・・

とりあえず、今は考えるのはよそう。


家に到着。

時間は14時前だ。

家に入り、魔法で身体をきれいにする。

フレイアも当たり前のように入ってくる。

う~ん・・ま、いっか。


「テツ、それにしてもいろいろあったわね。 まずは、私がハイエルフになれたこと。 改めてお礼を言わせてもらうわ。 ありがとう」

フレイアが俺の方を向いて、深々をお辞儀をしていた。

「フ、フレイア・・別にいいよ。 俺のレベル上げに付き合ってもらったんだから。 あ、それよりも、改めておめでとう、だね」

俺もフレイアに言葉をかける。

「うん、ありがとう」

フレイアはそういうと、にこにこしながら弓を取り出して手入れをし始めた。


さて、俺はチキンステーキでも作るか。

フレイアのレベルアップ祝いだな。

フライパンにオリーブオイルを入れて、買ってきた肉を入れる。

塩、コショウ、バターを少し。

後はしょうゆを霧吹きでひと吹き。

弱火でふたをしておいておこう。

焼けるまでに玉ねぎと人参をスライスした。

それを皿に並べて、後はチキンが焼きあがるのを待つだけだ。

料理をしながら、後でギルドへ行き、地上へ買い出しに行ってみようと考えていた。

定期船も出てるしな。

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