第234話 帰りは快適な移動だな


街もそれほど大きくなく、一回りできたので王城へ帰ってきた。

俺達はすぐにドワーフ王のところへ案内される。

ウベールもいた。

ウベールが俺たちに気づき、話しかけてくる。

「ルナ様方、帰りは我々に送らせてください」

ルナはどちらでもいいらしく、おとなしくうなずいていた。

俺たちもお願いした。


ウベールは情報を引き出せたらしく、用も終わったので引き上げるという。

どうやらルナのチャームの魔法が効いているのか、何の抵抗もなく知っている情報はすべて話してくれたようだ。

俺たちも特に用はないので、帰ることにした。


ドワーフ王が見送ってくれる。

「姫様、本当にありがとうございました」

ドワーフ王がそういって、深々とルナに頭を下げていた。

ルナは軽く片手を挙げてその場を後にする。

俺たちもルナについて行く。

ウベールはドワーフ王に丁寧に挨拶をしていた。


ウベールが俺の横に来て話す。

「テツ殿、この度はお世話になりました。 何と言いますか・・申し訳ない限りです」

「ウベールさん、そんなに自分を責めても仕方ないです。 たまたま私たちが早く着いただけですから・・それにほとんどルナさんのおかげですよ」

俺は慌てて返答する。 

事実だしな。

ウベールは自分が許せないだろうと思う。

ルナはどこ吹く風で歩いている。

ほんとにどうでもいいみたいだな、この人は。


王城を出ると、俺は少し驚いた。

ワイバーンに乗ってる騎士団がかなりいる。

整然と並んでいるが、威圧感がすごい。

ウベールが前に出て指示を出していた。


ウベール、凄いな。


俺たちが乗せてもらうワイバーンを選んでくれているようだ。

みんなそれぞれ別々のワイバーンに乗せてもらった。

俺はウベールの横に待機しているワイバーンに案内された。

俺が近づいていくと、一人の女の子がビシッと姿勢を正して俺に挨拶をする。

「テツ様、よろしくお願いします!」

元気よく挨拶された。

・・・

ん?

何で、俺の名前を知っているんだ?

俺は不思議に思ってウベールを見た。

ウベールは笑いながらワイバーンに乗っている。


あ!

そういえば、俺のうわさが独り歩きしてるって言ってたっけ?

そんなことを思いだしながら、ワイバーンに乗せてもらった。


ゆっくりとワイバーンが浮かんでいく。

それぞれが2列になり、ドワーフの王城を後にして飛んでいく。

すぐ外に出て、一気に上空へ上がった。

それほど揺れないんだな。

それに風圧もほとんど感じない。

俺は不思議に思ったので、ワイバーンを操縦している騎士団員に聞いてみた。

「あの・・君なんて名前? こんな速度で飛んでいてもとても快適なんだが、何か秘密があるの?」

俺は矢継ぎ早に聞く。

いきなり聞き過ぎたか?

そう思ったが、気持ちよく答えてくれた。


「はい、私はヘレメスといいます。 ワイバーンで移動中は、風魔法を発動させておりますので、地上と変わらない環境が設定されています」

「そうか、ありがとうヘレメス」

「いえ、どういたしまして」

・・・

会話が続かないな。

なんかこっちも緊張してしまうぞ。

帝都まで結構時間があるだろうに・・そんなことを考えていると、眠くなってきた。

ワイバーンの飛行はとても快適だ。

「ヘレメス・・俺、少し寝るかもしれないから、よろしく頼む」

俺は無責任な発言をしつつも、眠気の方がまさる。

「え、あ、はい。 わかりました」

ヘレメスはそう答えると、俺の方を見た。


俺はすぐに眠りに落ちたようだ。

あまりにも眠かったからな。

ヘレメスは、俺を落としてはいけないと思ったのだろう。

俺を半分抱えつつ飛んでくれていたようだ。

俺の記憶にはない。

・・・

・・

軽い振動を感じる。


ワイバーンがどうやら地上へと到着したようだ。

この振動で俺も目が覚めた。

目覚めはいい方だ。

俺は大きく手を伸ばして、一気に息を吐きだした。

「んんっ・・ぷはぁぁ・・ヘレメス、ありがとう」

俺はヘレメスに礼を言ってワイバーンから離れる。

よく寝た感じだ。

時間にして1時間ほどだっただろうか。

フレイアがきつい目で俺を見ていた。

何だ?


「テツ殿、私は今から王様のところへ報告に参りますが、一緒に行かれますか?」

ウベールが聞いてきた。

「あぁ、そうだな・・ルナさんはどうします?」

俺が聞くのと同時に、ルナは背中を向けて歩き出している。

「あぁ・・テツ、後は頼んだ」

そう言い残すと、シルビアと一緒にダンジョンの方へと向かって行った。

・・・

・・

「ウベールさん、ご一緒します」

俺は急いでウベールの後を追う。

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