第233話 ウベール、お前の責任じゃないから


ウベールは咳ばらいをして続ける。

「え、えへん・・ドワーフ王、失礼いたしました。 まずは質問させていただきたい。 その場におられるのは、ルナ様とテツ殿、それにフレイア殿とシルビア殿だとお見受けいたしますが、何故ここにおられるのでしょうか」

ウベールは明らかに混乱しているようだ。


ドワーフ王が、ウベールに着席するようにうながした。

俺が皆の顔を見渡して詳細を話してみる。

・・・・・・

・・・・・

・・・

「なるほど。 それは大変でしたね。 しかし、我々が遅れたばかりに・・申し訳ありません」

ウベールは素直に自分を責めていた。


いやいや、ウベール。

あんたの責任じゃないから。

ルナの飛ぶ速度が殺人的過ぎたのと、その戦闘力が半端でなかっただけだ。

決してお前のせいじゃない。

心の声です、はい。

俺はウベールとドワーフ王を見て口を開く。

「ウベールさん、先ほどドワーフ王にも申し上げましたが、襲撃犯の生き残りの処理を頼んであります。 その時に、情報を引き出されてはいかがですか? ドワーフ王もよろしくお願いします」

ドワーフ王は黙ってうなずいてくれた。


俺、いったい何やっているんだ。

なんでドワーフ王との調整なんてしなきゃいけないんだ?

場の空気というか、貧乏性というか。

はぁ・・。

ルナなんて完全にマイペースでくつろいでるし、シルビアもフレイアも飲んでいるだけだしな。

はぁ・・。

ウベールはうなずきながらドワーフ王にお願いしていた。

・・・・

・・・

ドワーフ王との会話も終わり、ウベールが情報を引き出すべくドワーフの人たちと一緒に奥へ移動していく。


襲撃犯にはルナが魔法でチャームをかけてあるので、簡単に答えてくれるだろう。


ドワーフ王国は、この居城の奥が本当の街になっているそうだ。

入り口からここまで続く街並みは、いわば旅宿的な感じのものらしい。

居城奥の街には、ドワーフの許可を得た人たちだけが入場できるシステムになっているという。

俺たちは許可を得て、街を見て回ろうということになった。


ルナが退屈そうにしていたので、俺のアイテムボックスからスイーツを取り出した。

「ルナさん、これでも食べて元気出してください」

俺はチーズケーキを差し出す。

スーパーエイトで買ったやつだが、俺の好きなケーキの一つだ。

「テツ、なんだこれは?」

「これは、チーズケーキといってお菓子みたいなものです。 俺の好きなスイーツです。 おいしいですよ」

俺はそう言ってルナに勧めてみた。


ルナはチーズケーキを半分だけ手の爪で切り取り、口に運ぶ。

・・・

!!

ルナの目が大きくなった。

「テツ! おいしいではないか!!」

残りのチーズケーキも一気に口に運ぶ。

なるほど。

どこの世界も女子に人気なのはスイーツだな。

・・・

背中に強烈な視線を感じる。

ゆっくりと後ろを振り向くと、フレイアとシルビアがジッと俺を見ていた。

「テツ・・」

フレイアが静かに、だが重厚感のある言葉で言う。


「すまん! あれ1個しかないんだ」

俺はシルビアとフレイアに謝った。

俺が食べようと思っていたものだったと伝えたが、聞こえないようだ。

「なんだ、1つしかないのか・・しかし、おいしかったぞ。 また頼む」

ルナは簡単に言ってくれる。


でも、地上も落ち着いてきているようだから、物流も戻って来てるかな?

そんなことを思ってみたが、それよりも今の危機を回避しなければいけない。

・・・

・・

ドワーフの街を歩きながら、フレイアとシルビアにしぼられた。

今度また仕入れておくということで、とりあえず収まってくれる。

・・・

ドワーフの街並みは完全に中世の石造りの街並みに近い。

だが、すべてに魔素を含んでいるようだ。


生産職が得意なだけあって、鍛冶屋や装飾、服などの店が並んでいた。

まだ転移してきて間もないので、それほど人は行き交っていない。

また展示されている製品も素晴らしいものなのはわかる。

だが、じいちゃんの作ってもらったものに比べると見劣りしてしまう。

鑑定するのはさすがに失礼だろう。

ということは、やはりじいちゃんは凄いということか。

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