第232話 ドワーフ王


博物館のようだな。

俺はそんなことを思いながら案内の後をついて行く。

ルナは何を感じるでもなく、普通に歩いている。

俺だけか・・キョロキョロしているのは。

シルビアはルナについていってるだけだしな。

フレイアも軽い足取りで歩いて行く。

・・・

みんな、凄いな。

俺はそう思わざるを得ない。


どうやらドワーフ王のいる場所についたようだ。

大きな扉が開かれて、広い空間が現れる。


扉から王の座っているところまで、赤い絨毯じゅうたんが敷かれていた。

その絨毯の両側に兵士らしき人たちが立っている。

その兵士たちが、剣をかざして剣のトンネルを作った。

王のところまで続いている。

ルナは平気でその中を歩いて行く。

俺もその後を恐縮しながらついて行く。

なんか俺ってねずみみたいだな・・そんな考えが頭をよぎる。

王の前に到着。


王様ってかなりでかい・・いや雰囲気がそう感じさせるんだ。

そう思って見ていると、長老が王の前に出て行った。

「ガイアス王、面目ない。 ワシがしっかりしていなかったばかりに、カッツェを死なせてしまいました・・」

長老は自分の不甲斐なさをびていた。

「ノムルよ、ご苦労だったな」

王はそう言うと席を立ち、ルナの前に歩いてきた。


!!

俺は衝撃を受けた。

ドワーフの王がルナの前で片膝をついている。

王様だろ?

マジか!!

ルナさん、あんた一体どれだけ偉いんだ?


「姫様、この度はお手数をおかけいたしました。 ご協力、感謝いたします」

ドワーフ王が膝をついたままルナに語り掛ける。

「別によい。 それよりも災難だったな。 生き残ったものの処理は任せる」

ルナはそういうと、王が案内した席につく。

王の椅子の奥に、客人を接客するスペースがあるようだ。

20人くらいならくつろげる広さだろうか。

椅子もそれくらいはある。

・・・

俺はまだ信じられない。

こんな偉いおっさんが、ルナに膝をついて丁寧に挨拶をしてるその姿が。


「お客人たちも、協力感謝する」

ドワーフ王は俺達にも礼を言った。

俺はうなずくしかできなかった。

ただ、王様は膝をついてはいなかったが。


俺たちも席について王と話をする。

ここに来た目的を伝えた。

・・・・・

・・・・

・・・

「そうか・・アニム王の配慮か。 感謝しなければな」

すると、王の元へ一人の男が近づいて行って何やら耳打ちをしている。

・・・

「うむ、すぐに来てもらえ」

王がそういうと、男は急いでその場を離れた。


ルナは出された飲み物をゆっくりと飲んでいる。

俺は緊張して飲めない。

というのは、ずっと王が俺を見ていたからだ。

・・・

「お、王様・・何か、私についてますか?」

俺はその緊張に耐えきれず、思わずドワーフの王に聞いてみた。

「うむ・・おぬしはアニム王国の人間ではないな。 この星の住人のようだが・・」

ドワーフ王は落ち着いた感じで聞いてくる。


「は、はい、その通りです」

「う~む、そうか・・」

まだ、俺を見ている。

あの、息苦しいんですが。

「見えぬな・・」

え?

俺はチラッとドワーフ王の方を見たが、やはりダメだった。

目をそらしてしまう。


「おぬし、名前は何という?」

「あ、はい。 テツといいます」

「そうか。 テツよ、ワシはスキルで、ある程度相手の状態を読み取ることができる。 だからこそ、攻めてきた連中など相手にしなかったわけだが・・見えぬのだ」

??

「は?」

俺はどんな顔をして言葉を出していたのだろう。


「テツ、おぬしの状態が読めぬのだ」

「・・・」

「まぁ、深くは詮索しないが不思議なものだな」

ドワーフ王はそういうと、後はもう何も言わなかった。

俺に対するプレッシャーが解除されると、先ほど王のところへ来ていた男が戻ってきた。

王に一礼すると、誰かを招き入れていた。


「失礼します、ドワーフ王」

その言葉の後、全身を銀色の鎧でまとった男が入ってきた。

「ドワーフ王、ご無事でしたか。 私はアニム王国より派遣されてまいりました、騎士団第一隊長ウベールと申します。 貴国が襲撃を受けているとの情報を受けて、急遽きゅうきょせ参じましたが・・」

そこまで一気に話すと、言葉が途切れた。

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