第231話 ドワーフの居城へ


その状況を見せられて、男の横にいた女は声も上げずに気絶した。

残った連中の中には泡を吹くものもいる。

こうなったら情報は引き出せないかもしれない。

失敗したかな。

俺がそう思っていると、ルナが声をかけてくる。

「テツ、もしかして情報を引き出したいのか?」

「はい、どうしてここを襲ったのか、それが聞きたいのですが・・」

「なんだ、早く言えばよいものを」

「え?」


ルナはそういうと、一人の男に左手を向けて一言つぶやいた。

「チャーム!」

「テツ、これでいいぞ、聞いてみろ。 男! お前なんでも正直の答えろよ」

ルナが男にそういう。

「はい!!」

男は喜んで返事をしていた。

駄犬か?

・・・・

・・・

聞くところによれば、中央アジアに魔物から逃れてきた国々の人が集まり、自然と集団が出来てきたようだ。

その時に、異世界人が転移してきたという。

言葉も通じるし、いろんな情報を教えてくれる。

また、街などをすぐに魔法で建設して魔物からの脅威が激減。

そのうちに魔法の有効性と力を使うことを覚え、帝国主義思想が芽生えてきたらしい。

つまりは、侵略によって自国を豊かにするということだ。

異世界人もアニム王国のような人もいれば、邪神教徒のような狂信者もいるそうだ。

そのうちに、その地域に集まる地球人と異世界人の親和性が適合。

その集団が大きくなり、合わないものは外へ出たり、行方不明になったという。


ロクなものじゃないな。


その時、どうも近くにドワーフがいるらしいことがわかり、その重要性を確認。

できることなら取り込みたいと思い、この襲撃計画を立てたようだ。

ちなみにこの国のトップは地球人だという。

・・・

俺がそんな情報を引き出していると、残りの連中からつぶやく声が聞こえる。

「そんな、まさか・・」

「黒髪・・・」


「あんたたち、何を言っているんだ?」

俺はそのつぶやいている連中に向けて、声をかけてみた。

連中の一人がビクッとして答える。

「いえ、あの・・もしかして、あの女性は・・夜の王とか呼ばれたりしてませんか?」

!!

どうやら異世界人らしい。

「確かそう呼ばれていたが・・」

俺のつぶやきに目を大きくして沈黙。

「「「!!!!」」」

「ヴァ、ヴァンパイアのルナだ・・」

「終わった・・」

・・・・・

・・・

残った連中の乾いた声が聞こえてくる。


「テツ・・で、どうするのだこいつらは?」

ルナが聞いてくる。

「う~ん・・どうしましょ?」

俺も一気に仕留めれば良かったのだが、一度区切ってしまうと勢いがなくなるというか・・どうしよう。


異世界人らしき連中は、すでに戦闘する意思はない。

地球人の連中はただ泣いている。

・・・・

!!

よし、ドワーフに丸投げだな。

うん、それがいい。


「ルナさん、残りの連中はドワーフに迷惑をかけたので、ドワーフに任せればいいのではないですか?」

「ふむ・・そうだな」

ルナはそういうと、ドワーフの長老の方を見た。

長老はその場で手を合わせていた。

!!

長老の横でムクッと起き上がる人物がいた。

シルビアだ。

俺は一瞬、死体が起き上がったのかと思ったが、今のシステムは蒸発するよな?

俺はすぐに情報を修正。


ようやくシルビアが起きたようだ。

ドワーフの長老と一緒にこちらに歩いてくる。

なんか、じいさんが孫と散歩しているみたいだな。

・・・

俺たちの近くに寄ってくると、シルビアがルナに謝っていた。

「ルナ様、申し訳ありません。 私、気を失っていたみたいで・・」


俺たちはドワーフの長老に残りの連中の処理を頼んだ。

後は、襲撃者を捕縛ほばく

ルナの魔法で拘束する。

シルビアがルナに謝った後に、気絶してからの出来事を俺は説明した。

・・・・・

・・・

・・

シルビアは手を前でモジモジさせながら、恐縮している。


「ほんとに姫様にはお世話になりました。 王城が無事で何よりですわい」

長老がそう言っていると、王城からドワーフが出てきた。

「ノムル、それにお客人方も中へどうぞ。 王がお待ちです」

中から出てきたドワーフが言う。

俺たちはその案内してくれるドワーフについて行く。


建物の作りは大きい。

その建物の中をゆっくりと進んで行く。


通路には細かい細工がなされているのがわかる。

装飾品など、とても手が込んでいるようだ。

こういったイメージを考えながら作るのは大変だろうと思う。

強烈なイメージを焼き付けなければ無理だろう。

王城の入口から通路を歩いているのだが、両脇にいろんな細工の装飾品や武器が展示されていた。

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