第230話 いったい、どこの連中だ?
「お、おそらく、空間魔法を使ったのだと思いますが・・」
異世界人だろう一人が答えていた。
「空間魔法?」
「はい、おそらくですが・・」
「チッ! おそらくだとか、役に立たない連中だな」
指揮官らしき男は吐き捨てるように言う。
さて、俺の出番かな?
無論、俺は地球人だがこんな連中に対する慈悲はない。
どうせ生き残らせても後で面倒なことになる。
いろんな漫画でもよくあるパターンだ。
確実に
そういえば、平家物語だったか。
源氏の源頼朝の命を子供だからと
いや、でも子供に罪はないといいたいところか。
・・・・
しかし、このおっさんたちは確信犯の大人だ。
俺の中では遠慮という言葉は存在しない。
「では、ルナさん・・後は俺が処理してきます」
「テツ、大丈夫か? 私が処理しても良いのだぞ」
ルナが微笑みながら言う。
「俺もこういった連中は、どうも許せないたちみたいで・・それからフレイア、援護を頼む」
フレイアは黙ってうなずいてくれた。
俺はゆっくりと歩いて行く。
相手連中は、俺の接近に気づいたようだ。
「き、貴様ぁ! 止まれぇ!!」
その声に反応して、俺の方に指揮官らしき男とともに複数の視線を集める。
「お、お前、地球人だったよな? こんなことをしてタダで済むと思っているのか? いったい何が目的なんだ?」
男はそういいつつも片腕を挙げる。
おいおい、言ってることとやってることが違うだろ?
俺はそう思いつつ、歩くのをやめた。
指揮官らしき男は手を挙げたまま、ニヤッとして俺に言う。
「お前、見たところアジア人みたいだが、俺たちと同じ目的か?」
俺は黙って指揮官らしき男を見つめる。
「フッ、何も言わないところ見ると図星か。 俺たちも今のこの能力を手に入れて、更なる力を求めているところだ。 だが、一足違いだったな」
ペラペラとよくしゃべる男だなと思い、俺は見ている。
指揮官らしき男は言葉を出して少し安心したのだろうか、まだ話が続くようだ。
「お前たち、もし俺たちに協力するのなら、今の出来事は見なかったことにしてやろう。 それにドワーフの利権も分けてやってもいい」
は?
何言ってるんだ、こいつ。
しかも上から目線で、分けてやってもいいだと?
アホか。
俺はその言葉を聞いていて、暗く静かに落ちついていく自分を感じていた。
たかが現場の指揮官に判断できることではないだろう。
その場しのぎの言葉に違いない。
諸外国の外交手段だ。
後で、ほんの少しのおすそ分け程度に舐めさせてくれるだけだろう。
こちらの知識だけを絞り上げ、自分たちが利用したカスを俺たちに回す。
外交の常だな。
俺もおっさんになっていろいろ学んだからな。
指揮官らしき男の言葉を聞きながら俺は手を挙げる。
おっさんが発言を中断。
俺も一言話してみた。
「あー・・おっさん、嘘だと顔に書いて在るぞ」
指揮官らしき男は急いで顔に手を当てる。
・・
日本の格言だが、通じたんだな。
俺は少し驚く。
「き、貴様、俺たちの好意がわからないとみえる」
指揮官らしき男は少し顔を引きつらせている。
俺は可笑しくなった。
「ハハハ・・西洋のジョークなのか? 力で攻めてる奴が交渉などするか。 子供でもわかるぞ」
「ヘッ! イエローモンキーの言いそうなことだ。 所詮、猿は猿ということか」
指揮官らしき男は鼻で笑い、吐き捨てるように言葉を出す。
「よくわかった。 お前の言う通りだった。 言葉は通じるが会話はできないようだ・・死ね!」
指揮官らしき男はそう言うと、サッと片手を振り下ろす。
ダッ!!
その瞬間、俺は一気にダッシュした。
同時に小銃を構えてる連中、20人前後だろうか。
刀を横薙ぎにして振り払う。
そう思いつつも、異世界人数人や指揮官らしき男など少しくらいは残しておかなきゃいけないだろう。
そんなことを考えて、フレイアに念話を送る。
『フレイア、この指揮官みたいな男と周りの連中は残しておいてくれ』
『わかったわ』
念話を送りつつも、俺は移動する。
フレイアも矢を連射していた。
すべての矢が見事に命中している。
相手に俺の動きを捕えるのは無理だろう。
俺が動くたびに人が倒れる。
魔法も銃も役に立たない。
銃声が聞こえるが、聞こえるだけだった。
魔法も発動する前にバタバタと倒れていく。
まるで刀の素振りをしているように俺には感じる。
ルナが城の攻略組を中心に、かなりの規模を消滅させたので、残りは1/4くらいになっていただろう。
フレイアも矢で援護してくれている。
・・・
・・
指揮官らしき男と周りの数人、後は異世界人らしき連中4人ほどを残してすべて消滅していた。
ルナがその残った連中のところに近寄って行く。
俺もゆっくりとルナの方へ近づいて行った。
フレイアが俺のところへ駆け寄ってくる。
「テツ、お疲れさま」
微笑みながら声をかけてくれた。
「うん」
俺も軽く返事をする。
ドワーフの長老はシルビアを抱えて待機してくれている。
シルビア、まだ寝てるのか。
のんきなやつだな。
長老に抱かれていると安心するのかな?
ま、それはいい。
ルナが男の前に立つ。
「お前たち、言い残すことはないか?」
!
いやいやルナさん、まだ早いです。
俺は焦ってしまった。
「ルナさん、まだ聞きたいことが・・」
俺は急いでルナの近くに行く。
「そうなのか?」
ルナは不思議そうな顔で俺を見る。
「はい、そうなんです」
俺は指揮官らしき男に向き直り聞く。
「おっさん、なんでここを襲ったんだ?」
「お、お前たち・・こんなことが許されると思っているのか?」
男は震えながら答えている。
「は? 何を言ってるんだ、おっさん? 何故、ここを襲撃したんだと俺は聞いているんだ」
・・・
指揮官らしき男は震えながらも答える。
「さ、さっきも言ったが、俺たちの領土に勝手に国を作ったからだ」
俺は呆れた。
「おっさん・・知っていると思うが、もう昨日までの世界はないぞ」
指揮官らしき男はニヤッと笑って言う。
「貴様もよくわかっているじゃないか。 そうだ、だからこそ我々の領土を整備しなければならないのだ」
ダメだな、こりゃ。
男の周りの連中が不安そうに俺を見たり、男をみたりしている。
「おっさん、俺って拷問とか好きじゃないんだよ。 あんたどこの所属だったんだ?」
俺がそう問うと、指揮官らしき男は少しビクッとしたようだった。
「お、俺は、某国の軍人だ。 国名は言えない」
男は震えているのか引きつっているのかわからないが、片頬を吊り上げながら言う。
なるほど、こういうのを西洋人独特のアイデンティティというやつか?
常に自分が正しく優位な位置にあると思っているらしい。
初めから黄色人種を下に見ている。
俺の偏見かもしれないが、それは仕事を通じて常に感じていたからな。
優しく丁寧に接してくる西洋人もいたが、まるで子供に接する感じの優しさだ。
対等という感じではない。
まぁいい。
すると、俺の視界の端にドワーフの長老が膝をついて、丁寧に死体を抱えている姿が見えた。
どうやら仲間らしい。
「おっさん、もう1度聞く。 どこの国というか集団の指図なんだ?」
俺の言葉に、指揮官らしき男は同じ回答だった。
「俺も軍人だ・・答える義務はない。 それに、人を扱うには人権が・・」
指揮官らしき男の言葉の途中で俺はつぶやく。
「そうか・・」
俺は迷わず男の頭から地面までを一気に刀で振り抜いた。
・・・
男はニヤッとした顔のまま、ゆっくりと蒸発する。
斬られたこともわからなかっただろう。
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