第227話 ドワーフの居城へ向かって


「ふむ、ご苦労だったな長老。 ではテツ、このまま進むぞ」

ルナは前を向いて歩いて行く。

え?

ルナさん・・あんた、何考えてるんですか?

「ルナさん、進むって・・」

俺は意味がよくわからない。


「長老、中の案内は頼めるのだろうな」

ルナは歩いて行くのが当然という風に聞く。

長老もルナが何を言っているのかよく理解できないようだが、返事だけはする。

「え、えぇ、この中でしたら街までご案内できますが・・」

「頼むぞ」

ルナはそういうと、またゆっくりと歩き始めた。

俺は、シルビアを背負いつつルナの後に従う。

長老もフレイアもあわててルナを追いかける。


長老はすぐにルナの前に出て、道を案内する感じになった。

ルナは歩きながら誰に話しかけるでもなく話している。

「賊が侵入してきて、外へ出ていないのだろう。 中を進めば当然賊と出会う。 そこで処分すれば済むことだ」

・・・・

ルナさん、簡単にいいますねほんとに。

しかし、その言葉には重みを感じる。


「姫様、そりゃそうですが・・姫様にご迷惑をかけてしまいます」

ドワーフの長老が申し訳なさそうに話していた。


ドワーフの街は扉から3キロほど中へ進むとあるらしい。

道中の道は暗くはない。

魔法で明るく設定されている。

道が終わると、街が工場地帯のように広がっているという。

その奥に王の居城がある。

ほとんど要塞のような作りになっているらしい。

俺たちは長老の案内でゆっくりと奥へと進んで行った。


途中、長老が俺の腰の刀に気づいた。

!!

「人間の旦那さんよ、あんたのその腰につけてる武器・・えらい代物じゃないのか?」

俺はそう聞かれて、父が錬金術士なので、作ってもらったと伝えた。

「えっと・・」

長老が俺の顔を見ながら言葉に詰まっている。

「テツです、ドワーフの長老さん」

俺がそう言うと、少し顔を明るくして俺に聞いてきた。

「そうかい、テツ。 良ければその武器を見せてくれないだろうか?」

長老は興味深々のようだ。

俺も断る理由はないので、長老に刀:飛燕を手渡した。


長老は刀を手に取ると、歩くのをやめた。

「ぐっ・・」

歩けないようだ。

飛燕を抱えて動けない。

「あんた・・こりゃ、どえらい代物じゃないか。 それに、これはあんた専用の武器だな」

長老はそういうと、刀を丁寧に俺に返してきた。

「えぇ、そうです。 俺専用の武器で飛燕っていいます」


!!

「名前があるのか! そりゃ、そうだろうな。 それにしても、その武器は生きている」

長老が真剣な顔で話してきた。

「え?」

俺は長老の言葉に一瞬反応できなかった。

「あんた、まさか知らなかったのか?」

長老は俺をのぞき込むような視線で見る。

「いや、成長する武器というのは知っていたのですが、生きているというのは・・」

俺も少し驚いた。

「いんや、ワシの言葉が悪かったかもしれねぇな。 いや、しかし生きてる武器だ。 言葉を話したりするんじゃねぇんだ。 あんたの魂というか、心を受け取って成長していくんだよ。 ワシらドワーフでも、そんな武器はなかなか作れねぇ」

・・・

そうなのか?

じいちゃん・・あんたもしかして、レジェンド?


「そうなんですか・・」

「いやぁ、あんたのおやじさんはすごいもんだな。 いっぺん、会ってみたいもんだよ」

ドワーフの長老は顎髭あごひげに手を当てて感心してるようだ。


「長老よ、テツの父は素晴らしい職人だぞ。 ワシの加護も受けてるしな」

ルナが後押しをする。

!!

「ほんとですかい、姫様? そりゃ、大したもんだ」

長老は少し声を大きくしながら、ゆっくりとうなずいていた。


「それよりも長老・・先程から道筋に血の匂いがするぞ・・」

ルナの言葉に俺たちはハッとなる。

ルナの視線の先、地面を見つめてみた。

・・・

なるほど、血だまりができるほどではないが、血が流れたのだろう。

それからもたまに地面に血がついているところがところどころあった。

そして、俺たちの先にはどうやら街が見えてきたようだ。


道幅も少し広くなっていく。

街並みが少しずつ見えてきた。

街はかなり壊れていた。

爆発音も聞こえてくる。

人のザワザワした雰囲気も感じる。

歩きながら俺は背中のシルビアをチラッと見る。

まだ寝てるのか?


近づくにしたがってわかってきた。

どうやら、王の居城に攻め入ろうとしているが、決め手に欠けているようだ。

長老が言うには、城には結界が張ってあるのと、城を作るときに建物にも刻印を施したらしい。

相当の物理攻撃や魔法攻撃でも壊れないそうだ。

「まぁ、あんな攻撃では、城は落ちねえですが。 時間をかけられればわからねぇ・・」

長老がつぶやいていた。

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