第225話 ルナさん・・あんたねぇ
アニム王がフレイアに言葉をかけていた。
「フレイア、これでようやく報われたね」
「えぇ、ありがとうアニム」
フレイアはまた涙を流していた。
だが、そんな感動の時間が続くはずもなく、ギルマスがアニム王に頭を下げて合図をする。
アニム王も気づきギルマスと一緒に俺の方を向く。
ギルマスが俺に言う。
「テツ君、ギルドの方でもドワーフ地域の支援依頼を受け持っているんだ。 既にAランククラスの冒険者パーティが1組、出発してくれている。 テツ君にもその後を追って参加してもらいたいと思っているんだ」
そこでギルマスが一息ついて、続ける。
「この案件は、おそらくAランク以上でないと危険だと判断したんだ。 俺が行ければよいのだが、帝都の守りもあるし、多くの高ランクの冒険者を派遣できないのだよ」
ギルマスがそこまで言うと、アニム王が続けた。
「実はね、テツ。 どうもこの襲撃事件が王国に敵対する集団と地球人の混成部隊みたいなのだよ」
・・・・
・・・
アニム王が話してくれたところによれば、邪神教団と呼ばれる団体らしい。
向こうにしてみれば、光の神の崇拝者の集まりらしいが、唯一の神しか認めず、
光の魔法のみを追求し、他の存在は光の魔法で浄化されるべきという考えらしい。
恐ろしいな。
俺はよく転移できたなと思ったが、神は意思を持たず信仰するものを公平に転移させたようだ。
アニム王国は基本、光の神を信仰する国だが、別に他を排除しているわけではない。
むしろ、多様性を重んじているくらいだ。
それが、どうやら許せないらしい。
昔から、続いている争いなのだそうだ。
地球人もいるようだし、その襲撃に対する防衛として参加して欲しいという。
「どうだろう、テツ君。 行ってくれるかね? ドワーフは友好国だし・・テツ君のレベルはなかなかいないのだよ」
ギルマスが申し訳なさそうに言ってくる。
アニム王も複雑な顔をしている。
俺は問題なく行く気でいる。
今、俺がここでこうしていられるのはアニム王のおかげだ。
別にそれだけではない。
俺自身が、参加したいと思っている。
そんな狂信者、許せるわけないだろう。
それに地球人もだ。
・・
俺は即答した。
「ギルドマスター、それにアニム王。 私は問題なく参加させてもらいます」
俺の返事にギルマスがやや驚いたようだ。
「本当かね、テツ君。 そりゃ、君が参加してくれればかなり心強いが・・」
「テツ、本当にいいのかね? これは私の国の勝手な事情であり、もしかすれば君の同族との戦闘になるかもしれないよ」
アニム王が申し訳なさそうに言ってくれる。
「アニム王、何を言っているのです。 私も帝都の人間になったのです。 お気になさることはありません。 それに私自身が参加したいのです」
まだ詳細はわからないが、情報を信じるならロクでもない連中だろう。
俺が返答していると、ルナが横から話しかけてきた。
「アニムよ、面白そうだな。 私も行くぞ」
「ルナ様!」
ウルダが止めている。
「ウルダよ、ダンジョンの管理はお前に任せる」
「ルナ様、しかし・・」
ウルダが困っている。
当然だな。
ウルダが俺の方を見る。
いや、ウルダさん、俺の方を見られてもどうすることもできませんけど・・。
するとルナがウルダの方を向いた。
「ふむ・・仕方ないな。 では、私の分身を置いて行こう」
分身?
俺は思わずルナに見入った。
ルナは、自分の横に自分よりも二回りくらい小さな自分を作っていた。
黒い霧の塊ができたかと思うと、ルナと同じような顔形になり落ち着いた。
ルナよりも幼い感じがする。
「ウルダ、私の1/10をこちらに置いて行く。 これで文句はあるまい」
「はぁ・・」
ウルダがあいまいな返事をする。
「お互いが共有感覚でつながっているから、問題ないぞ」
ルナが楽しそうに言う。
ウルダ・・少しかわいそうだな。
ウルダがあきらめたのか、シルビアの方を向いて言った。
「シルビア! ルナ様を頼むぞ」
「え? あ、はい・・」
シルビアは戸惑いつつも、返事をする。
・・・
シルビア、全く予測していなかったんだろうな。
ルナが俺の方に近寄って来る。
「では、テツ。 行くか」
!!
ルナさん、行くかって・・あんたねぇ。
アニム王も俺の方を見ながら笑っている。
ギルマスも、やれやれという感じだ。
「ではテツ君、騎士団員に送ってもらうといい」
ギルマスがそういうと、ルナが話を
「私が運んでやろう。 その方が速い」
ギルマスは言葉を失っている。
ルナがアイテムボックスから袋を取り出す。
ルナさん、まさに我が道を行くだな。
「テツ、荷運び用の袋だが、これに入ってもらえるか」
ルナが勝手に進めていく。
「・・・・」
俺は言葉にならずに、袋に近づいて行った。
俺たちは間違いなく荷物扱いだな。
「ルナ様、私も連れて行ってもらってもいいですか?」
フレイアが声をかけてくる。
「ふむ、エルフの娘か・・構わんが、テツ、いいのか?」
え?
なんでそこで俺に聞くの?
意味わからないんですけど。
「えっと、ルナさん・・私が判断できることではないのですが」
俺がそう答えると、聞いているのかどうかわからないがルナが言う。
「そうか、好きにするがいい」
「ありがとうございます」
フレイアがルナに頭を下げていた。
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