第223話 ハイエルフ
俺は周りの状況を確認する。
・・・
見渡す限り何もない。
岩も溶けているのか蒸発しているのか、真っ平な地面が続いている。
ただ、ビームの通った後はドロドロとしているところがある。
徐々に固まっているようだが。
タイタンが公平に処分した感じだな。
それを確認してフレイアの方を見る。
フレイアはその場でしゃがみこんでいる。
!!
俺は急いでフレイアのところへ駆け寄った。
もしかして、怪我でもしたのか?
「フレイア、大丈夫か?」
「はは・・テツ・・ふぅ・・魔力を使い過ぎたようだわ」
「あの白い矢か・・」
「そう・・魔力をかなり込めて撃ったから。 はぁ・・それよりも、私・・レベル40を超えたわよ」
通常状態なら飛び上がって喜ぶところだろう。
だが、フレイアは笑いながら息を整えていた。
「ついになれるんだな、ハイエルフに」
「えぇ・・たぶん・・」
フレイアがしんどそうな声で答えてくれる。
「え? たぶんって・・」
「だって・・ふぅ・・どうやってなるかわからないもの」
・・・
は?
どういうことだ?
「レベルが上がるとなれるんじゃないのか?」
「そうね・・そう言われていただけだから・・」
「え? もしかしてなれないのか?」
「たぶん・・大丈夫だと思うけど・・それよりもテツとかの転職ってどうやっているの?」
フレイア、しんどそうだな。
「フレイア、すまないな疲れてるのに」
フレイアは首をゆっくりと振って話を聞こうとしている。
「俺の転職は、ステータス画面で職のところをタッチすると、上位職などが表示されるんだ」
俺の言葉に合わせてフレイアがステータス画面を見ていた。
「なるほど・・エルフって職業なんてないから、知らなかったわ。 えっと、じゃぁ・・このエルフってところかな・・」
フレイアはブツブツいいながら、ステータス画面を操作している。
!!
フレイアが目を大きくして立ち上がった。
「あった! あったわ! ハイエルフ。 1つだけの表示だけど・・これね」
フレイアはそういうと画面をタッチして、転職をしたようだ。
少しくらい迷えよ。
俺は心の中で突っ込む。
すぐにフレイアの身体が金色の光に包まれた。
輝いている。
俺はそれを
もしかして、とても貴重な場面に遭遇しているんじゃないのか?
そう思ったが、それを共有する相手がいない。
俺だけの宝にしておこう。
金色の光がだんだんと弱くなっていく。
フレイアの髪が、フサァとなびく。
耳が少し長くなっているような気がする。
髪の色は、前よりも鮮やかな金色の感じだが。
!!!
うぉ、衝撃だ!!
フレイアの胸が、前よりも豊かな感じがする。
いや、確実に大きくなっている!
俺は目を閉じで、目を開き、もう一度見てみた。
・・・・
幻覚じゃないようだ。
確かに、フレイアの胸が豊かになっている。
間違いない!
俺は、遠慮なく凝視している。
ドゴ!!
ボディを殴られた。
「まったく、どこ見てんのよ!!」
「いや、しかし・・フレイアなぁ・・その・・」
バコ!
今度は頭を殴られた。
「まったく・・せっかくハイエルフなれたっていうのに。 呆れてものが言えないわ!!」
俺は心の中で繰り返していた。
フレイア!
胸がハイエロフです!
シルビアほどじゃないが、前みたいに板じゃないぞ!
・・・
また殴られた。
「フレイア・・もしかして、ハイエルフって狂暴なのか?」
「あんたがバカなだけでしょ!」
フレイアはその場でクルクルと回転したりして、身体の確認をしている。
疲れは大丈夫なのか?
ま、何にせよ無事に生き残れた。
それにフレイアがハイエルフになれたのは何よりだ。
おっと、まだお祝いの言葉をかけてなかったな。
「フレイア、本当におめでとう」
俺は言葉をかける。
その場でいろいろと、身体のチェックをしていたフレイアだったが、ピタッと止まった。
ゆっくりと俺の方へ歩いて来る。
「テツ・・本当にありがとう。 まさか、この若さでハイエルフになれるなんて思わなかった。 私、あきらめようかと思っていたのに・・それが・・」
後は言葉にならなかったようだ。
フレイアの頬を涙が流れていた。
俺は言葉を発することなく、静かにその場でフレイアを見つめていた。
フレイアを見ていると、うれしさと今までの苦労とが、いっぺんに噴出してきたように感じる。
「良かったな、本当に・・」
俺はただそう言葉をかけるだけだった。
フレイアは立ったまま、うんうんとうなずいていた。
それにしても、フレイアの胸がなぁ。
こんな時だってのに、そこが気になる。
俺はうれし泣きをしているフレイアを見つつも、胸ばかりに注意がいく。
これって、男の
そこまで思った時だった。
やはり殴られた。
「ほんっとに・・せっかくの大イベントが大なしよ!!」
涙を流しながら、笑いながら、俺を殴る。
やっぱり、ハイエルフって狂暴だろ!!
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