第217話 ショップ


いい匂いがする。

俺は服を着替えると、リビングへ向かう。

・・・

フレイアが卵を焼いていた。

昨日と同じだ。

「フレイア、おはよう」

「あ、テツ、おはよう」

フレイアはいつも通りだな。

軽く鼻歌を歌っているようだ。

皿に焼いた卵を移してくれる。

・・・

やはり、料理スキルを上げた方がいいぞ。

いや、料理をするたびに上がっているのかもしれない。

ただ、俺の分を用意してくれるのは本当にうれしい。

嫁ではありえないイベントだからな。

そんなことを考えつつ、フレイアと一緒に食べる。


「「いただきます」」

!!

やっぱりおいしいな、この卵。

「フレイア、おいしいね」

俺の言葉に、フレイアも微笑みながらうなずいていた。

「朝ごはん終わったら、早速ダンジョンに行ってみようか?」

「そうね、行ってみましょう」

フレイアも即答だ。


俺たちは食事を済ませると、食器類を魔法できれいにして家を出た。

まだ優たちも起きていないようだ。

嫁たちの家は言うまでもない。

ばあちゃんの家は、明かりがついてるな。

ま、挨拶しなくてもいっか。

そう思いつつ、俺とフレイアはダンジョンへ向かった。

ダンジョンの入口に到着すると、フレイアが近くのショップへ立ち寄りたいという。

俺も言われるままに一緒にショップに入っていった。

時間とか関係なく運営しているみたいだ。


「いらっしゃい」


おっさんの声が聞こえる。

まだ、6時にもなっていないが、店の中に人が少しいた。

フレイアは店員に話しかけている。

俺も何があるか見て回った。

それほど広い店ではない。

ちょうどコンビニくらいの広さだろう。

並んでいるものには、回復のポーションやアクセサリー、手軽な武器や消耗品が並んでいた。

それを見ていると、黒髪の女の人がこちらに近寄ってくる。

「あら、あなた・・」

確か、プローメスさんだっけ?

「あ、おはようございます」

俺は挨拶をした。


「おはよう。 えっと・・テツさんだったわね」

「はい」

「ここにいるってことは、ダンジョンに挑戦するのね?」

俺はどう答えようか迷ったが、とりあえずダンジョンに行くことを伝えた。


「はい、ダンジョンに挑戦します」

「そう、まさかソロで行くんじゃないわよね?」

プローメスは心配してくれているのだろうか?

「いえ、相棒がいますので・・」

俺はそういいながら、フレイアの方をみた。

プローメスも俺の目線を追って、フレイアを見る。

「なるほど・・あのエルフと一緒に組んでいるわけね」

「はい、だからプローメスさんとは・・申し訳ありません」

俺は頭を下げた。

「ううん、気にすることないのよ。 私が勝手に引き込もうとしただけだから。 じゃ、気を付けてね」

プローメスはそういうと、仲間とともに店を出て行った。

歩く後ろ姿・・色っぽいな。


少しして、フレイアが近寄って来る。

何かツンとしている感じがするぞ。

「テツ、さっきの人、誰?」

フレイアに尋問を受けているようだ。

・・・

もしかして、フレイアって縛る女なのか?

そんなことがフッと頭の中をよぎったが、振り払う。


「あぁ、あの人・・ギルドとかで一緒にダンジョンにいかないかって、誘ってくれた人だよ。 俺は相棒がいるから無理だって断ったけど」

俺がそういうと、フレイアの雰囲気がパッと変わる。

そして、ニヤニヤしながらつぶやく。

「そう、相棒・・だものね」

フレイアはその場でクルッと一回転をした。

「テツ、これ見て」

フレイアが手にポーションのようなものを持っていた。

「回復薬・・かな?」

「そう、魔力回復薬よ」

「売ってたのか?」

俺はなんでそんな簡単なことに気づかなかったのだろう。

ゲームとかなら常識だっただろうに。

即座に反省した。

急いで俺も購入しに行こうとした。

すると、フレイアが俺を止める。

「大丈夫よ、テツ。 一応20個くらい買ってあるし、作ればいいんだから」

フレイアがニコニコしながら言う。


「一応これ・・テツのアイテムボックスにも入れて置いて」

そう言われて小さなビンに入った魔力回復薬を受け取った。

フレイアは、とりあえず店を出ようといい店を出る。

ゆっくりとダンジョンに向かって歩きながら、話してくれた。

・・・・

・・

昨日作ったのは応急的なものだが、中級くらいの回復薬なんかも作れるという。

欠損部位を回復させるのは無理みたいだが、結構なレベルのものならアリだとか。

魔力回復薬もなかなかのものが作れるみたいだ。

もしもの時のために買ったのだそうだ。


昨日、ダンジョンで移動しているときに、そういった素材がかなりあるのに気づいたらしい。

でも、まずは40階層から進むから、そのための予備みたいだ。

昨日の、俺の例があるからな。

そんな話を聞きながら、ダンジョンの入口に来た。

俺たちはパネルにライセンスカードをかざして、そのまま通過する。

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