第216話 変な条件だな
「うん、時間はあるのだけれど・・なかなかそのレベルにはなれないのよ。 それに、ハイエルフになる条件が・・その・・」
フレイアが答えながら耳を赤くしていた。
「条件? どういうこと?」
俺にはよくわからない。
時間が自由に使えれば、ゆっくり成長してもなれるだろうに。
それとも、エルフってレベリングがあまり好きじゃないのか?
フレイア、はっきりしないな。
フレイアはモジモジしながら、何か言いにくそうだ。
俺的にはその仕草、グッジョブだ!
「うん・・その・・」
「なに?」
俺はやや呆れる感じで聞いた。
すると、フレイアが顔を近づけて俺の耳元でささやく。
「えっとね・・そのレベルを超えるまで、交配をしてはいけないの」
ブフォ・・俺はむせてしまった。
ゴホ、ゴホ、ゴホ・・・。
「え? 何、その条件・・まさか、交配って・・」
俺が最後の部分をしゃべろうとしたら、フレイアに口を押えられた。
「テツ! 声が大きいから!!」
俺もゆっくりと呼吸をして、自分自身を落ち着かせる。
「何か変な条件だな・・」
「そうかな? でも、みんなそのレベルになるまでに、交配期があるからほとんど無理なのよ。 それに、仮に到達したとしても、おばさんエルフかおばあさんエルフでしょ。 誰も相手にしてくれないし、魔力が増大しても・・まるで魔女みたいだしね」
フレイアが顎に人差し指を当て、微笑みながら答えてくれた。
なるほど、確かに無理ゲーだな。
交配期があるのに交配できないって・・喉が渇いているのに水が飲めないようなものだろ?
俺は聞いていて思った。
人間でいえば、おばあさんまで独身で地位を得たような存在なのだろう。
独身といっても、生娘のままいなきゃいけない。
地位を得ても、それまでの時間は返ってくるわけじゃない。
青春と引き換えにするには、あまりにもリスキーだな。
誰もそこまでしないよな、そりゃ。
「でも、フレイアはもうすぐレベル40に到達というわけか」
「そうなの。 今日のダンジョンでレベル39になったし、すぐに到達できると思うわ」
・・・
!!
そうか!
今までのフレイア達の環境なら、それほど高いレベルの魔物も出現しないし、これだけ層のあるダンジョンもなかったわけだ。
レベル自体、そうそう上がるものじゃない。
俺も納得した。
「そっか、フレイア良かったな」
「ありがとう、テツ」
フレイアは喜んでいた。
・・・
そんな姿を見ながら、俺は余計な一言を付け加える。
「ということは、フレイアは交配期でもないし、まだ男とも関係が・・」
そこまで言ったら、思いっきり殴られた。
ボゴ!
・・・
グーパンだ!
「いてて・・ちょっと待・・」
ボコ!
また殴られた。
・・・
・・
とりあえず、俺は謝った。
ひたすら謝った。
運ばれてくる料理を食べて、俺たちは店を出る。
店を出るときに、店員に心配そうな顔で見られていたのを覚えいる。
結構、フレイアに殴られたからな。
ギルドの外に出て、帰路につく。
星がきれいに見えている。
時間は21時30分前。
俺は歩きながら、
「フレイアさん、回復魔法をかけてくれないのかな・・」
「知るか!」
フレイアに殴られて、結構ダメージを負っているのだが。
まぁ、そのうち自動回復で回復するだろう。
フレイアはご機嫌斜めかと思ったら、嬉しそうに星空を見ながら歩いていた。
・・・
家の前に到着。
優たちの家の明かりはついている。
あそこは今、春だろうな。
俺も家の中に入ろうとして、ふとフレイアを見る。
「フレイアはまた屋根で寝るのか?」
「当たり前だ!」
「寒くないのか?」
「風魔法で身体を覆おおっているから問題ないぞ」
フレイアが俺の方を振り向きつつ答える。
夜の星明りの中、フレイアの髪がきれいに輝いていた。
「そっか・・じゃ、また明日、ダンジョンへ行こうな」
俺はそういうと家の中へ入った。
フレイアはうなずきながら、微笑んでいる。
「テツ、ありがとう」
小さくつぶやいていた。
俺には聞こえなかったが。
俺は身体をクリーンアップする。
靴を脱いで裸足になり、服も軽いものに着替える。
そのままベッドに横になり、今日のことを考えていた。
まさか魔法があれほどの威力だとは思わなかった。
そして、イメージを固定化するために言葉が大事なんだと、つくづく思う。
ただ、それを考えるには疲れていたようだ。
すぐに睡魔が襲ってきて眠っていた。
・・・
・・
すぐに朝がくる。
時間は5時過ぎ。
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