第215話 ハイエルフ?


「フレイア、今日はここまでにして帰ろうか」

「うん」

索敵をしてみると、レベルの高い魔物はいないので次の階層に行く階段を降りて行く。

ライセンスカードには40階層と表示されている。

なるほど・・これで、次からはこの階層から始められるだろう。

俺たちは帰路についた。

帰りは地道に帰らなきゃいけないが、別に戦闘をするわけでもないので、ひたすら移動のみに徹した。


他のパーティなどもいたようだが、スルーする。

向こうにも気づかれてないようだ。

・・・・

・・・

帰りの道のりは、とても早く移動できた。

1つのエリアの移動に1分もかかってなんじゃないかと思える。


地上に到着した時には20時30分になっていた。

数組のパーティなどが見られるが、それほど多くはない。

俺たちは、入り口の門番に軽く挨拶をしてダンジョンを後にする。


「フレイア、またラピット亭で食べて帰る?」

俺は歩きながら、フレイアに聞いてみた。

「そうね、それがいいわね」

フレイアも賛成のようだ。

そうと決まれば、ギルドへ急げだ。

生活魔法で身体をきれいにする。


いらっしゃいませ~!


ラピット亭に到着すると、店員が近寄ってくる。

2名だと伝えると、カウンターでもいいかと言われた。

フレイアをチラッと見ると、うなずいてくれたのでカウンターに案内してもらう。


いつもの定番、今日のお勧めを注文。

食事が運ばれてくるまで、今日の出来事なんかを話していた。

まずは、俺の魔法に対する苦言から始まった。

フレイアも笑いながら話してくれてるので、許してくれたのだろう。

死にかけたのが嘘のようだ。

・・・・

・・・

そんな反省会? とまではいかないが、今度はしっかりとやって行こうとなった。


食事が運ばれてきた。

オーク肉の照り焼きみたいだ。

ジュージューと音をたて、おいしそうな匂いがする。

第一印象・・でかい肉だ。

オークだろ?

俺は、なるべくその姿を想像しないようにした。


一口かじりついてみる。

!!

うまい!

じゅわっと口の中に脂が広がって、噛み応えがある。

それでいて、堅くない。


「おいしいなぁ・・」

思わず口から言葉がでた。

「でしょ?」

フレイアが横から賛同してくれる。

そして、フレイアが周りを少し確かめて、俺に身を寄せてきた。

ん?

「テツ、あのね・・」

フレイアが言いにくそうな感じで下を向いている。


俺は食べるのをやめてフレイアの方を向く。

「何?」

「うん・・テツにだけは言っておこうと思うの」

フレイアが真剣な顔をして俺を見つめる。

なんだ?

「あのね・・」

・・・・

・・

早く言え!!

俺は黙って聞いている。


「うん、あのね・・私、後少ししたら、たぶんハイエルフになると思うの」

「・・・」

俺は言葉が出なかった。

もしかしたら、どこかへ行ってしまうんじゃないかって思っていたんだが、違ったようだ。

「ハイエルフ?」

俺はオウム返しで言葉を出す。

フレイアは周りをキョロキョロと見て、俺の耳元近くで話す。

「テツ、あまり大きな声で言わないで・・」

だったら、家に帰ってから言えよ、と突っ込みたかったがまぁいい。

「まぁ、別に知られても問題ないのだけれど、何か・・恥ずかしいというか、照れくさいというか・・」

フレイアはモジモジしながら言っている。

結構いいぞ、その姿!


「そうなんだ・・で、ハイエルフになるとどうなるの?」

俺はパッと浮かんだ疑問をそのままぶつけてみる。

「うん、特に変わるわけじゃないと思うんだけど、魔力が飛躍的に向上すると言われているわ。 それに寿命もかなり延びるのだとか・・」

俺は、それを聞いていて不思議に思った。

「フレイア、聞いていると、言われているとか何とかだとか・・なんかよくわからないって感じだな」

「そうなの。 私もよくわからないの。 でも、レベルが40を超えるとなれると言われているの」

フレイアが指を顎に当てながら言う。


「なるほど・・でも、今まではいなかったのか?」

「いるにはいたけど、なった人はどこかへ行ったみたいだから。 それにエルフのおさが、ハイエルフだったけど、あまり接触がなかったしね・・後、私のような若さでなった人はいないと思うわ」


俺は聞いていて、やはり疑問が浮かんだ。

「フレイア、エルフって長寿種族だよな?」

「ええ、そうよ」

「だったら、時間がある分、誰でもそのレベルにはいずれ到達するんじゃないのか?」

俺の頭には、その疑問が一番に浮かんだ。

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