第214話 結果オーライだな


ミノタウロスは、それぞれが俺たちに向かってゆっくりと移動してきている。

俺が近づいているミノタウロスが斧を振り上げて、思いっきり振り下ろす。

まだ100メートルくらいはあるだろう。

ミノタウロスの前面に斧が突き刺さり、地割れが俺に向かってくる。

この距離で影響するのか?

俺は驚きつつも、それを右に避けた。

!!

その俺の避けた方向に、ミノタウロスは斧を投げてくる。

トマホークか!

威圧感は結構なものだ。

大型トラックもあろうかという大きさの斧が、高速回転しながら飛んでくる。

俺はミノタウロスに向かってそれをくぐり抜けた。


ミノタウロスは両手を振り上げて、そのまま地面にたたきつける。

「グォォォォオオオ!!!」

雄叫おたけびは相変わらずだが、石礫いしつぶてが俺の方に向かって飛んでくる。

放射状に広がっていくので避けるのは難しそうだ。

刀を抜きつつ、薙ぎ払ってみた。

いくつかはヒットするが、それほどのダメージはない。

その時に、何か背後の音が消えたような感覚を受ける。

後ろをチラッと振り向く。

!!

斧が回転しつつ戻ってきていた。

俺は、そのまま加速+ダッシュしてミノタウロスに向かう。

ダッ!

ミノタウロスの横をすり抜けて、背後にでる。

フレイアともう1体のミノタウロスが見えた。


フレイアは一定の距離を保ちつつ、矢をひたすら放っていた。

それを見て、すぐに後ろを振り向く。

ミノタウロスは斧をキャッチしたところだった。

うまいじゃないか、キャッチするのが。

俺はそう思うと同時に、ミノタウロスに向けて突きを連打。


ドドドドドドド・・・・・!!!!


突きつつ、一気にミノタウロスに向かって飛び込む!

そのまま刀の影に隠れるようにミノタウロスを突き抜ける。

ドン!!

やはり、レベルと刀のおかげだろう。

ミノタウロスの身体に大きな穴が開く。

ミノタウロスはそのまま前に倒れ、蒸発する。


固有結界というから、とんでもない代物かと思っていたが普通だな。

いや、慢心はいけない。

そう自分に言い聞かせて、フレイアの方を見る。

フレイアはまだ戦っている。

その光景は・・なんというか、針の山といった方がいいのだろうか。

ミノタウロスに矢が無茶苦茶、刺さっていた。

・・・・

ミノタウロスの動きが鈍くなってきている。

というか、矢だらけでミノタウロスの腕がかろうじて見える程度だ。

だが、フレイアもかなりしんどそうな感じだが。

あ、片膝をついた!

大丈夫か?

しかし、ミノタウロスはあまりにも多く矢が刺さって、斧もうまく握れないようだ。

とにかく、見守っていよう。


俺は自分の倒したミノタウロスの魔石を拾い、ゆっくりとフレイアの方へと近づいていく。

すると、フレイアがバックステップをして距離を取る。

!!

大きく弓を引いた。

力を溜めている感じだ。

フレイアの弓が少し光ったような気がした。

そのまま一気に矢が放たれる。

放たれた矢は、白い航跡を描きつつミノタウロスに向かって飛んで行く。

そしてミノタウロスを突き抜けた。

・・・

ミノタウロスがパァッと白く光って、そのまま消える。


俺はその光景を見ながらフレイアに駆け寄って行く。

「凄いな、フレイア」

「そう? はぁ、はぁ・・」

フレイアは普通でしょ、と言わんばかりだ。

だが、身体は正直だぞ。

フレイアはかなりしんどそうだった。

何でも弓を引くたびに身体が重くなっていく感じがしたそうだ。

どうやら、ミノタウロスの固有結界は魔力を使うと、その消耗度がひどいようだ。

なるほど・・俺が刀で戦ったのは、ある意味正解だったというわけか。


ミノタウロスは力任せの魔物だからな。

そういう意味では、魔法を苦手としているのかもしれない。

だからこその固有結界か。

魔法を主体としている連中には天敵だな。

俺は勝手にそう考えた。


フレイアだが、直感的に距離を取って戦わないと危ないと思っていたようだ。

身体にまとわりつくような重い感じがしていたという。

流石さすがといったところか。

フレイアもミノタウロスの魔石を拾いつつ、

「後少しね・・・」

そうつぶやいていた。


俺にはよく聞こえなかったので聞き直してみる。

「え? 何、フレイア」

「ううん、別に。 ただ、お腹が空いたなって思って・・」

フレイアが微笑みながら返答。

確かにお腹が空いたな。

俺もそう思う。


ミノタウロスの固有結界は、2体が倒れたら自然と薄まって消えていた。

フレイアに聞くと、俺がミノタウロスを1体倒した辺りから、かなり身体が軽くなったということだった。

なるほど。

!!

そうか!

俺が刀だけで戦ったのではなく、じいちゃんの防具のおかげもあるのだろう。

この防具、付与能力があったよな。

そうか、それで・・俺はそう納得する。

とにかく、結果オーライだ。

やはり、じいちゃんが一番凄いんじゃね?

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