第213話 固有結界


索敵しても敵の反応がない。

俺はそれを確認したら、休憩しようとフレイアに提案。


差し込む光のようなところに大きな木がある。

そこで俺たちは休むことにした。

俺が座ると、フレイアは辺りを見渡して少し散歩してくるという。

まぁ、魔物もいないし問題ないだろう。

俺も、大きな木に背中を預けてくつろいでいた。

・・・・

・・

知らない間に眠っていたようだ。


俺が目を覚ますと、フレイアが何やら作っている。

まさか卵焼きじゃないだろうな。

などと思っていると、ほんのり赤く光った液体がガラス瓶の中にあった。

それを持ちあげて、フレイアが見つめている。

「うん、大丈夫ね」

そういうと、ゴクゴクと飲み始めた。

半分くらい飲み終わったら、俺が起きたのに気づいたようだ。

残りを俺に差し出した。

「テツも飲むといいわ。 魔力が回復するわよ」

!!

魔力回復薬か?


っていうか、フレイア・・作れるのか?

俺は驚いた。

聞けば、エルフは森の住人の特性か、薬草なんかには詳しいという。

それに、少し勉強すれば、エルフならこれくらいの魔力回復薬や体力回復薬なんか作れるのだそうだ。


俺は遠慮なくいただいた。

苦い・・。

だが、何だか身体が軽くなったような気がする。

「ありがとう、フレイア」

俺の言葉にフレイアが微笑む。

作れたのは2個だけで、残り1個はフレイアのアイテムボックスに入れていた。

かなり回復できた感じだ。


さて、出発しよう。

・・・・

・・

32階層~38階層くらいまでは、それほど高いレベルの魔物は出てこなかった。

地上で遭遇したような魔物ばかりだ。


サーペントやバジリスク、スフィンクスやワイバーンなどの魔物がいた。

ジャイアント:レベル33なんてのがいたが、それほど脅威きょういにはならなかった。

エリアも、ほとんどがきれいな森や湿原、たまに岩場なんてのもあったが、砂漠はない。

俺も適当に魔法を使いながら、順調に進むことができた。


途中、レベルは上がらなかったが、職レベルが10になり、また上位職を選ぶことができた。

かなり魔物を討伐したのと、30階層では殲滅せんめつだったからな。

相当経験値が手に入ったのだろう。


「賢者」「セイント」と選択できたので、魔法使いの定番、賢者を選択。

今は、賢者3となっている。

セイントは魔法剣士の属性が強い感じだと、フレイアが教えてくれていた。


さて、ここまで深い階層まで来れたのは、俺たちがレベルの恩恵を受けているのは間違いない。

俺たちじゃなく、俺か?

それを忘れてはいけない。

普通なら、レベル35まで到達する人間など、なかなか存在しないと聞いていた。

俺は素直に感謝しつつも、ゲーム感覚のレベリングを意識していたのかもしれない。


時間は19時30分前。

「フレイア・・もう少し行ったら、帰ろうか」

俺はフレイアにそう声をかけた。

かなり進んだだろう。

十分だと思う。

「そうね・・また、次からは行った階層から始められるしね」

フレイアも了解してくれた。


さて、39階層。

岩場の空間だ。

岩の山が見えるし、クレバスも見える。

山の上にはワイバーンが飛び交っていた。

索敵をしてみる。


範囲を広げつつ、感じてみた。

ピ、ピ・・・ミノタウロス:レベル38×2。

どうやら、この階層では一番高いレベルなんじゃないか?

そう思いつつ、俺たちはミノタウロスに近づいて行く。

対1体なら、仕留めたことはある。

今なら問題ないだろう。


ただ、2体同時はない。

問題ないとも思えるし、もしかしてコンボの攻撃を仕掛けてくるかもしれない。

そう思いつつも、近づいて行く。

ミノタウロスは斧を構えてこちらを見ている。

・・・

俺たちの気配は隠されているはずなんだが、気づいている感じがある。


俺たちが50メートルくらいに近づいた時だろうか。

ミノタウロスがゆっくりと斧を振り上げて、地上にたたきつけた。

2体が同時に同じように動く。

すると、ミノタウロスのいる場所から空間が侵食されていくような雲が見える。

それが空を包むように広がっていく。

俺たちの上空を超えて、後ろの地平へとつながった。

・・・

「やられたわね」

フレイアが少し嫌な顔をしてつぶやく。

「え?」

俺は何がやられたのかわからなかった。

「固有結界よ」

「・・・」

俺はフレイアの顔を見る。


「たぶん、ミノタウロスの有利な条件の空間だと思うわ。 引きずり込まれたのね」

「フレイア・・俺たちが弱くさせられたということは・・ない?」

俺はそれが心配だった。

「それはないと思うわ。 私も、固有結界に引きずり込まれたのは初めてだけど、単に相手の有利な環境だと聞いているわ」

「・・・」

フレイアも初めてなのか。

でもまぁ、俺たちが弱くさせられたりしたわけでもないなら、大丈夫だろう。

ここで魔法をぶっ放したら・・お互いに死ぬな、たぶん。

いつも通り刀で戦おう。

俺は1人うなずく。


「フレイア、俺が向かって右側のをやる」

「わかったわ。 じゃあ私は左側ね」

フレイアもそれほどネガティブな感じにはなっていない。

俺たち左右に広がりながら、ミノタウロスに向かった。

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