第212話 ダンジョンの中に光が差し込んでいるが
「そうか・・フレイア、すまないな」
俺の魔法の実験で、危うくフレイアを殺してしまうところだった。
俺も、自分の魔法で死ぬところだった。
「テツの魔法が凄いのはわかったわ。 でもね・・これは、やりすぎでしょ」
確かにやりすぎだ。
俺は素直に謝った。
「しばらく、回復するまでジッとしてましょ。 それに、テツの剣にも感謝してあげてね」
フレイアが微笑みつつも、疲れた顔で言う。
「え、俺の剣・・刀?」
俺はそうつぶやくと、フレイアの目線の先を追う。
俺とフレイアの前に、まるで俺たちを守るように地面に飛燕が突き刺さっていた。
「防御魔法を発動したら、私たちの前に剣が刺さっていたの。 私たちを守るように・・」
フレイアが優しく俺に言ってくる。
「そうか、フレイアありがとう。 それに、飛燕にも感謝だな。 それにしても、フレイアが防御してくれなかったら、俺死んでたな」
俺も
「別にもういいのだけれど・・無茶しないでね」
俺は、うん、とうなずいて反省。
そして、ゆっくりと身体を起こしフレイアにお礼を言う。
その後、飛燕を迎えに行った。
飛燕を手に取り、心の底から感謝する。
ありがとう。
・・・
それにしても、この飛燕・・無傷だな。
やっぱ、恐るべきはじいちゃんか。
そんなことを思ってしまった。
そうだ!
アイテムボックスに食材とか入れてたよな。
そう思って、まずはお茶を出した。
フレイア、お茶好きだからな。
フレイアは喜んで飲んでくれる。
俺もお茶を飲みつつ、ワンパターンだが野菜炒めを作ってみる。
これくらいの火力の魔法なら大丈夫だろう。
それに、自動回復で急速に回復してきている。
後でギルドに聞いたところによると、28階層に来ていた冒険者が、大地震が発生したと騒いでいたという。
また、30階層にようやくたどりついた冒険者パーティが、この階層の状況を見て、即座に引き返したそうだ。
とてもヤバい状況が起こっていると判断したのも当然だろう。
30階層が自然に砂漠の状態に戻るまでの1週間ほど、誰もこの階層には近づかなかったようだ。
時間は16時を過ぎている。
俺たちは食事も終わり、魔力も少しずつ回復してきていた。
完全回復には及ぶべくもないが、普通には動けるようになっている。
フレイアも生活魔法で身体をきれいにしていた。
体力はそれほど減ってないのだが、魔力が一気に持っていかれたからな。
・・・
俺はフト思ってしまった。
もし、俺の魔力がもっとあったら、あれ以上に強力な威力になったのだろうか?
そう考えると、少し怖くなる。
「フレイア、もう少し行ってみてもいいかな?」
俺はフレイアに聞いてみた。
「ダメ、といっても行くんでしょ」
フレイアが微笑みながら答えてくれる。
俺も笑いながらうなずいた。
この30階層に、生きてる魔物はいないだろう。
奥の方に次の階層に行く入り口があった。
31階層。
今度は普通の森の中のエリアだ。
太陽があるはずもないだろうが、木々の間から光が差し込んでいる。
まず第一印象。
きれいな森だなと思った。
フレイアもきれいね~、と言っている。
どうやらエルフはこういった森があると元気になるようだ。
俺の魔力も少しずつ回復してきている。
移動しつつ、魔法のことを少し考えていた。
イメージで魔法が作られているのはわかった。
誰でも強力なイメージはできるだろう。
だが、加減というものがあるのを痛感した。
イメージが乏しい人なんかが、詠唱の恥ずかしい言葉を使うんだろうなと思う。
大人になると、その経験でいろいろイメージができるからな。
ただ、魔力に合わないイメージはキャンセルされるんじゃないか?
なんとなくそう思った。
でも、言葉で固定化すると、確かにイメージがパッと浮かぶよな。
だから、詠唱というよりも、現象を見て魔法を固定化すればいいのだろう。
スーパーノヴァ。
これはもう頭の中に植え付けられた。
危険だが。
さて、このエリア・・魔物がいないようだ。
もしかして、休息できるエリアなのか?
フレイアにも聞いてみる。
「う~ん・・わからないわ。 でも、深いダンジョンなんかになると、そういった休息できるエリアはあるのは事実ね」
フレイアは軽く答える。
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