第210話 魔法


この辺りになると、冒険者の数も少なくなってきた。

みんな頑張っているみたいだ。

4人くらいのパーティが多い。

あまり多くても、経験値が得られないからな。

とはいえ、少なすぎても危険があるような気もするが・・って、俺たちのことか。

俺たちはそれらを横目に見ながら移動速度を速めた。

気づかれることはないだろう。

・・・・

・・・

入り口を通過してから、1時間くらいは経過しただろうか。

俺たちは25階層に来ていた。


レベル的には20~25前後の魔物が現れる。

戦闘になっても俺たちには問題ないレベルだが、他の冒険者がいるところではあまり目立ちたくない。

フレイアにそう伝える。

フレイアは別にいいじゃないというが、余程のことがない限り目立ちたくない。

ロクなことがないだろう・・たぶん。


なるべく他のパーティと遭遇しないように、次の階層へ行く階段を目指していた。

まぁ、そんなに他の冒険者とも出会うこともなくなってきたが。

さて、次の階層へ行く階段を探すのも20階層を超えると結構面倒だった。

中心付近にない。

探していると魔物が現れる。

まぁ、特に問題ないのだが、ギリギリのレベルだったらかなりヤバいだろう。

いきなり現れる。

確かに命の危険を伴うな。

索敵を注意していればわかるのだろうが、階段を探す方に注意を向けている。

他の冒険者もそうだろう。

次の階層、次の階層と進みたいに違いない。

変なブービートラップみたいだ。

それに、階段付近にいる魔物はゲートキーパー的な役割をしているかもしれない。

ただ、俺たちはそれをサクッと倒して、コソコソ移動。

フレイアは何でコソコソ移動しているのかと変な感じで俺を見るが、俺的には性に合っている。

余計な仕事はごめんだ。


そんなことを思いつつ、俺たちは25階層をクリアして次の階層へ移動した。


上の階層では、トロウルやオーガが普通は難敵になると思う。

この辺りになると、スフィンクスなどが現れる。

レベルは25くらいだ。

俺たちは問題なく進んで行く。

見られたら、ヤバいよな。

そんなことを考えつつも、他の冒険者はこの階層レベルにはいない。

とにかく移動速度だけを意識した。

俺の意味なくせっかちな性格だろうか。

・・・

・・

29階層に到着した時だ。


きれいな星空が見えた。

とてもきれいな空間だった。

澄み切った水も流れている。

索敵をしてみると、レベル28:ワイバーンがエリアの中心付近にいるようだ。

ここまで来ると、さすがに誰もいない。

俺たちは一気にワイバーンに近づいていく。

ワイバーンが俺たちを視認して、吠えようとした瞬間にフレイアが矢を放っていた。

俺もその矢の下を走って近づき、下から刀で薙ぎ払った。

俺は魔導士になったのに刀を振っている。

変だよな、やっぱ。


初めは魔法を使おうと思ったが、ギャラリーが多すぎた。

だからある程度進んでから使おうと思っていたが、とうとうここまで来たわけだ。

次のエリアから使って行こう。

そんなことを思いながらもステータスを見る。

・・・

俺の魔導士のレベルが9になっている。

なんで?

魔法を使ってないのにだ。

後、気になったのは罠解除が地道にレベルが上がっていることだ。

階層をクリアするたびに、次の入口を見つけることになる。

それで経験値を得ているんじゃないかと、勝手に思っていた。

また、後でわかったことだが、剣を振るう度に斬るときのイメージが魔法として付与されていたみたいだ。


時間は14時30分を過ぎていただろう。

30階層に来た。

・・・

赤い砂漠だ。

砂しかない。

何にもない。

砂だけの世界。

ルナさんの性格を考えてしまう、大丈夫か?


さて、索敵をしてみるとバジリスクが引っかかった。

レベル31×2、30と、3匹いる。

他にも魔物は結構いるが、低レベルなので無視していいだろう。

バジリスクは距離的には前方200メートルくらいのところにいる。

遮蔽物しゃへいぶつもないので、レベルがない冒険者なら苦労するだろうと思う。


俺は、これは絶好の魔法を試すところだと思った。

「フレイア・・俺、魔法を試してみたいんだが、いいかな?」

「え・・テツ、魔法って・・大丈夫?」

「あれ? 言ってなかったっけ? 俺って今の職業、魔導士だけど」

俺は普通に答える。

「え? はぁぁ? 呆れた。 ここまで剣で戦ってきたわよね?」

フレイアは本当に呆れていたようだ。

「すまない・・」

「いや、別に謝るところじゃないから・・でも、大丈夫なの?」

フレイアが不安そうに言う。

「だから練習するんだよ、フレイア」

あまり自信はないが、俺はそう言ってみた。


話をゆっくりする暇もなく、バジリスクがのっしのっしと身体を揺すって迫ってくる。

俺はそれら三体に向けて、ネットで捕らえるイメージで片手を前に出してみた。

「そりゃ!」

バジリスクの上空に、白く光る網のようなものが現れてバジリスクに絡みつく。

バジリスクたちは、その魔法の網の中でもがいている。

それを見ていたフレイアが少し驚いたような顔で言う。

「テツ、あなたねぇ・・無詠唱でバジリスクを捕らえる魔法なんて・・」

え?

フレイアさん、その評価ってすごいの、すごくないの?

どっち?

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