第199話 優・・うれしそうだな


もうギルドには用はないので、俺は家に向かう。

歩きながら考えてみた。

貨幣価値は、日本のときとそれほど変わらない。

ということは、数日で3000万を稼いだことになる。

・・・

実感がない。


俺ってそんなに仕事をしたのだろうか?

納品なんてしてないしなぁ。

いや、待てよ。

これって、王国を離れにくくする意図も含まれてるんじゃないのか?

他国よりも待遇がいいとか。

いや、考え過ぎか。

・・・

考えても、俺の頭ではわかるはずもない。

そう思ったら、素直に喜んでおこう。

こういう切り替えは早い方だが、やっぱり金額がなぁ。


家が見えてきた。

自分の家に入ってみる。

誰もいない。

あれ?

フレイア達が先に帰って来てるはずだが。

そうか、ばあちゃんのところでお茶を飲んでいるんだな。

そう思ってばあちゃんの家に移動してみる。

時間は18時になっていた。


ビンゴのようだ。

ばあちゃんの玄関に近づくと、中からフレイアたちの笑い声が聞こえる。

玄関の呼び鈴を押した。


「はーい」

中からばあちゃんの声が聞こえてくる。

ドアが開く。

「おや、テツかい。 いらっしゃい」

俺は中へ入れてもらった。

リビングの方へ向かっていく。

あれ?

何か雰囲気が違う。


「あ、テツ、おかえり~」

フレイアが声をかけてくれた。

「テツ、おかえりなさい」

レイアも続いて声をかけてくれる。

「おやじさん、お帰り!」

・・

なんで優がいるんだ?

それよりも変な違和感があるので、ばあちゃんに聞いてみた。

「ばぁちゃん、なんか部屋が違う感じがするのだけれど・・」

ばあちゃんがニヤッとして言う。

「気づいたかい? 部屋を少しいじったんだよ。 まさか、こんなに人がくるとは思ってもいなかったからね。 それにしても魔法って本当に便利だねぇ」

「そうですか・・」

俺はそう返答するしかできなかった。


ま、ばぁちゃんは部屋づくり好きだからな。

魔法で簡単に改造できるから、やりたい放題だろう。

それよりも、だ。

「優、どうしてここにいるんだ?」

「・・べ、別にいいだろ!」

優がやや強い声で返事をしてくる。

すると、ばあちゃんが近寄ってきた。

「別にいいじゃないか。 私にとってはかわいい孫なんだから・・それよりもお前がなんで来てんだよ?」

俺が反対に言われた。

「いや、家に帰ると先に帰ったフレイア達がいなかったから、ばあちゃんのところだろうと思って・・」

というか、俺の話を聞いてないな。

フレイアとレイアはお茶を飲んでいた。

ばあちゃんはお茶のおかわりを入れている。

じいちゃんはフレイアとレイアにはさまれてご機嫌だ。


ま、フレイア達がここにいることが確認できたから俺も帰ろう。

「ま、みんながいることがわかったから、俺も帰るよ」

俺はそういって、ばあちゃんによろしくと頼んで外に出た。


優の奴、うれしそうだったな。

フレイアも美人だが、レイアも美人だからな。

もしかして、レイアにかなり興味あるとか。

いいなぁ、若いって。

そんなことを思いつつも、俺はまたラピット亭に行こうかと思った。

その前に、嫁たちに挨拶した方がいいかな?

そう思い嫁たちの家へ向かう。


家の入口の呼び鈴を鳴らしてみる。

・・・・

しばらくすると、お義母さんが出てきた。

「あらテツさん、いらっしゃい。 梓~! テツさんが来てくれたわよ」

お義母さんが嫁を呼んでいた。

「入ってもらって~」

嫁の声が奥から聞こえてくる。


初めて嫁の家に入ったが、洋風の作りになっている。

リビングに案内された。

「あ、パパお帰り~」

凛が迎えてくれた。

「テツ、お帰り」

颯も同じように言ってくれる。

・・・

お帰りと言われても、ねぇ・・なんか複雑な心境だな。

でもまぁ、こういった家のスタイルを選んだ俺にも責任はある。

それぞれの家を各自の部屋感覚で使おうと言って作ったからな。

まぁいい。

さて、颯たちは相変わらずスラちゃんとバーンとで遊んでいるようだ。

「テツ、やっぱりスラちゃんがおびえてるよ」

颯に言われた。


そんなこと言われてもなぁ。

まぁ、俺のレベルが41になっている。

魔物はそんなのがわかるのかもしれない。

いや、テイムされた魔物だけかもしれないな。


どうやら夕食の用意をしていたらしく、嫁とお義母さんが交代で作っているようだ。

「で、パパさん、どうしたの?」

嫁が明るく聞いてくる。

「いや、引っ越してきてから何か変わったことがないかなって思って・・」

俺がそういうと、嫁があっけらかんとして返答。

「別にないわね。 用はそれだけ?」

・・・

あぁ、それだけだ。

俺はそう思いつつ聞いてみる。

「そっか、帝都は住みやすいからな・・あ、嫁さんは何か仕事とか見つかった?」

「えっと、今探しているのよ。 何かいいのある?」

「いや、それはわからないが・・たぶん、なんでもあると思うよ。 ギルドに行けばわかるしね」

「そう・・で、パパさんは何か仕事見つかったの?」

俺はそう聞かれた瞬間に、一瞬、心臓がバクッとなった。

ここで一気にいろんなことを言おうかと思ったが、やめた。


「うん、冒険者をしてるんだ」

俺はそう答えた。

「冒険者? それって、何するの?」

「えっと、いろんな場所に行って調査や魔物の討伐なんか・・なんでもありだな」

「それって、お金になるの?」

嫁は軽く聞いてくる。

さすがだな、嫁。

常にお金換算しやがる。

やっぱ、変わってないな。


「多分、お金になってると思うし、既にいくらかもらったからな」

俺は少し意味深に答えてみる。

案の定、嫁は目を大きくして興味を示した。

「ほんとに? で、いくらもらったの?」

こいつは!

即座に金額かよ。


「えっと、少しだけなんだけど、300万ギルもらったよ」

「え?」

嫁がポカンとしている。

「300万ギルです」

俺はもう一度答えた。

本当はもっとあるが、控えめに言っておこう。

こういう嫁のタイプの場合、お金の匂いをさせてはいけない。


「「ええ~~~!!!」」

嫁とお義母さんが一緒に驚いていた。

「300万ですって?!」

「テツさん、すごいじゃない!」


似てるな、この親子は。

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