第198話 Bランクですか


小さな部屋だ。

テーブルがあるが、4人も座ればいっぱいだろう。

俺が座ろうとすると、ギルマスがやって来た。

「やぁ、テツ君、お待たせしたね」

俺たちは握手を交わして、ギルマスが座るようにうながしてくれたので、そのまま座った。


「テツ君、いろいろ仕事をしてくれているみたいだね」

「いえ、そんな・・私はただ、自分の思うように行動しているだけなのですが・・」

「それが結果的に良い方向につながっているのだから、言うことはない」

「はい、ありがとうございます」

「うむ。 素直なのはいいことだ。 さて、本題だが、まずは君のランクアップだ。 Bランクにアップしてもらう」

ギルマスが当たり前のような顔で言う。

俺は驚いた。

何もしてないのに、ランクアップとは。


そんな俺の表情を読み取ったのだろうか、ギルマスが続けて話す。

「君の不審に思うのはわかる。 だが、地上での新しい街の発見や交渉などの評価がある。 それに、君の強さはCランクでは強すぎる」

「そうですか・・」

「そうなんだ!」

ギルマスに強く言われる。


「それにテツ君、レベル39だったよね? 普通ならそれはAランクでも問題ないんだよ」

ギルマスが話してる途中だったが、レベルのことを言われて、俺がアッ! と発言してしまった。

「ん? どうしたんだ? 確かレベル39だったよな?」

「はい、いえ・・その・・」

「なんかはっきりしないな」

ギルマスが俺を見つめる。

この人には嘘はいいたくない。

俺は正直に話すことにした。

「実は、レベルが41になっていまして・・」

!!

「え? 本当かね? まだ、俺と手合わせをしてから2日くらいしか経過してないはずだが。 それに高レベルになってくると、一つ上がるのに年単位が必要なんだが・・」

ギルマスは、下を向いてブツブツ言っていた。

「いやしかし・・ダンジョンが60階層もあるから可能かも・・でも・・」

ギルマスが俺の方を向いて、少し待っててくれと言って部屋を出て行く。


すぐに戻って来た。

ボードパネルのようなものを持っている。

「テツ君、ライセンスカードをこのボードに乗せてくれ」

俺は言われるままにカードを乗せた。

・・・

どうやら、パネルに俺のステータスが表示されるらしい。

ギルマスが見るなり、うなっていた。

「う~ん・・間違いなくレベル41だ。 テツ君、一体何をしたんだ?」


どうせアニム王に聞けばわかることだから、ギルマスにあれから起こったことを伝えた。

フレイアと一緒に行動していて、サイクロプスを倒したこと。

フェニックスと出会ったこと。

隷属の首輪を使っていた街があったことなどなど。

・・・

・・

「・・とまぁ、そんなわけで今に至っています。 後これ・・」

俺はそう言ってアイテムボックスからフェニックスの羽を取り出して見せてみた。


ギルマスは、おそるおそるその羽を手に取ると、じっくりとながめていた。

「テツ君。 君は・・なんていうのか、凄いな。 そういう言葉しか浮かばないよ。 すまないな、俺の言葉がつたなくて・・」

俺は微笑みつつ、黙って聞いていた。

フェニックスの羽を返してもらい、アイテムボックスに入れる。

「まぁ、これからの活動も楽しみにしているよ。 後、報酬が振り込まれているはずだから、後で確認しておいてくれ」

ギルマスはそういうと席を立ち、俺達は部屋を出る。


ギルマスはまた奥の方へ移動していく。

ギルマスって忙しいんだな。

ま、これだけの人いるんだ。

当たり前か。

俺はライセンスカードを確認する。

えっと、確かここだったな・・。

そう思ってお金というかギルの確認をしてみた。


一、十、百、千、万、十万、百万、いっせん・・・

え?

もう一度数えてみた。

桁は間違えてない。

おかしいだろ!

3000万ギルが振り込まれていた。

この国って、お金の価値って低いのかな?

かなり不安になったので、受付に行ってギルマスを呼び出してもらった。

順番を待つこともなかった。


すぐにギルマスが出てきてくれた。

「なんだい、テツ君」

「ギルドマスター、あのですね・・報酬ですが、桁・・間違えてませんか?」

俺が不安そうな顔で聞いたのだろう。

ギルマスがバンバンと背中を叩きながら話してくる。

「いや、妥当だと思うが、問題でもあったかな?」

ゴホゴホ・・。

いやいや、問題というか、俺の感覚が狂ってくるんですけど。


「妥当というか、3000万ギルってなってましたが・・」

俺は小声でギルマスに言った。

「あぁ・・まだ少ないと思ったんだが、そんなものだろう」

!!

少ない?

これで少ないって・・俺にはもう言葉がない。


ギルマスが俺の肩をポンと叩きながら、

「テツ君がした功績に比べると、まだ少ないと思うが、遠慮なく受け取っておくといい。 これからもよろしくな」

ギルマスはそう言うと、また奥へ消えて行った。

俺は見送るしかできなかった。


俺は何とも言えない感じでギルドを出る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る