第197話 ギルドの中、人がいっぱいだな
さて、気分を取り直して扉へ近づいて行く。
俺はおそるおそる部屋の扉を開け、中の様子をみた。
フレイアとレイアが並んでこちらに向かってきている。
すぐに俺の目の前に来た。
なんかちょっと緊張するな。
俺はレイアを見て言葉をかける。
「レイア、本当に良かったな」
「テツ、ありがとう」
レイアが本当にうれしそうに答えてくれる。
かわいいな。
フレイアよりもかわいい感じがする。
俺は優しく微笑んだ。
「ちょっとテツ、妹に手を出さないでよ」
フレイアがいきなり言う。
「フレイアさん、あのね・・」
「あれ、アニムは?」
「アニム王は忙しいみたいだよ」
俺が代わりに答える。
「そっか。 きちんとお礼を言いたかったのだけれど、また後だわね」
フレイアがうなずく。
俺は顔を引き締めて、レイアの方を向く。
「レイア・・その・・一言、言わせてほしい」
俺の言葉に、レイアが不思議そうな顔を向ける。
「何?」
「う、うん・・その・・レイア・・目をやられた相手って、地球人だよな? その・・どこの種族も悪い奴もいるし、いい奴もいると思う・・何ていうのかな・・転移してきて不自由だろうけど、俺たち地球人すべてを嫌いにならないでほしい・・」
俺はうまく言葉をまとめれないが、レイアに素直な気持ちを伝えてみた。
レイアは更に不思議そうな顔を俺に向け、フレイアの方を向く。
「お姉ちゃん、テツは何言ってるの?」
レイアの言葉に俺は呆けてしまった。
「え?」
「テツ、私が弱かったから傷を負ったわけだし、それにたった1人の狂人のせいでその種族が全部おかしいだなんて思わないでしょ、普通・・」
レイアはあっけらかんとした口調だ。
「え・・でも、そんな理不尽に・・」
俺が言葉を出そうとすると、フレイアが笑いながら言う。
「テツ、レイアも私も、この環境は好きよ。 それに今は帝都まである。 今から新しく世界が始まるのよ。 そんなこと、気にもならないわ。 レイアも無事回復したことだしね」
フレイアとレイアは微笑みながら話してくれる。
・・・
俺に対する最大限の気遣いだろうか。
何ていうのかな・・女の人って、やっぱり強いな。
「ありがとう、レイア、それにフレイア」
俺は改めてお礼を言う。
さて、気持ちを切り替えよう。
「フレイア、俺はこれからギルドに寄って帰るけど、どうする?」
「そうね、先にテツの家に帰らせてもらってもいい? お母様のお茶が飲みたいしね。 レイアにもあのお茶を飲んでもらいたいわ」
フレイアはそういうとレイアを見る。
「お姉ちゃん、いきなり私なんかが行って大丈夫なの?」
「大丈夫よ。 テツのお母様はとっても心の大きな方よ。 それにレイアのことをきっと気に入ってくれると思うわ」
フレイアが勝手なことを言ってレイアといろんな会話をしていた。
ま、レイアの目も治ったし、ハイテンションなんだろうな。
俺たちは話をしながら王宮を出る。
外で分かれて、俺はギルドへ向かう。
さて、ギルドまではすぐなんだが足取りが重いな。
いったい何の用だろうか?
そういえば、アニム王が報酬がどうのこうの言ってたな。
そのことだろうか?
そう思っているうちにギルドの入口についた。
扉がスムースに開いて、中へ入る。
うぉ!
結構人がいるぞ。
俺的には誰も知らない顔ばかりだが、みな冒険者なんだろう。
なるほど。
魔法の杖のようなものを持った人や、大剣を背負った人もいる。
弓を
アイテムボックスを持っていないのか?
という俺も、刀を腰に下げてるしな。
俺は人の間を抜けつつ、受付のところまで来た。
カウンターは3つあるのだが、どれも埋まっている。
受付待ちをしている人を見てみた。
カウンター横のタッチパネルにライセンスカードを触れさせて順番を待つようだ。
俺も同じように、ライセンスカードを触れさせてみた。
パネルに待つ人数が表示され、俺のカードにも表示される。
5人待ちか。
その待ってる間に掲示板でも見て来よう。
掲示板のところへ近寄っていく。
デジタルサイネージのような掲示板には、ランクごとに分かれていろいろ表示されている。
AランクからEランクまである。
ランク外の依頼もある。
ほとんど雑用程度のものだ。
・・・
ダンジョンの依頼が多くある。
そういえば、この帝都には60階層のダンジョンができたはずだ。
前の帝都でも40階層くらいしかないって言ってたから、相当なものだろう。
俺がダンジョンの項目を見ていたら、横の女の人が声をかけてきた。
「こんにちは」
きれいな声だな。
俺はそう思いつつ、声の方を向いた。
身長は俺と同じくらいか。
ショートカットの黒い髪、目は大きく小顔の女の人だ。
やはりアニム王国の女の人は、美人が多いな。
それに色っぽいぞ。
片手には杖のようなものを持っている。
パッとそこまでを考えながら、返事をした。
「あ、こんにちは」
「あなた・・帝都では見ない顔ね」
女の人が言う。
俺はどう答えようか迷っていた。
「はぁ、どうも・・」
ぼんやりと答えてみる。
「あはは・・何、警戒してるの?」
女の人はカラカラと笑っている。
「いえ、そういうわけではないのですが・・」
「ま、いいわ。 それよりも、ダンジョンに興味があるのかしら?」
「いえ、ただ受付待ちなので、掲示板を見ていただけです」
俺は正直に答えた。
「そう、何かあなた・・違和感みたいなものを感じたから、声をかけてみたのよ。 気を悪くしないでね」
「いえ、そんな・・あなたみたいな美人に声をかけてもらうなんて、人生でなかったものですから」
それは本当だ。
こちらから声をかけたことはある。
無視か、軽くあしらわれて終わりだったが。
「あら、ありがとう。 私、今ダンジョンに
「はい」
握手を求められたので、軽く握り返す。
小さく握りやすい手だな、俺はそう感じた。
女の人はソファの方へ移動していく。
移動する後ろ姿がこれまた色っぽい。
どうやら仲間がいるようだ。
その姿を見送ってると、俺のライセンスカードに受付が対応できる合図が送られてきた。
右端の受付のようだ。
アリアさんじゃないな。
受付の前に言って、どうぞと言われるままに座る。
「ようこそ帝都ギルドへ。 ポーネと申します、よろしくお願いします。 えっと、テツ様、今日はどういったご用件でしょうか」
俺は、ギルマスから呼び出しを受けたようだと伝える。
「少々お待ちください・・」
ポーネはそういって、調べてくれていた。
すぐにわかったようだ。
「そうですね、失礼いたしました。 早速ギルドマスターをお呼びいたしますので、奥の部屋でお待ちください」
そう言われて、ポーネが部屋に案内してくれる。
ポーネは次の対応があるので、すぐに受付に戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます