第195話 シルビアの時と同じか


移動中、何度かレイアが俺の背中から言葉を投げかけてくる。

テツ、変な事考えてない? 失礼なこと思ってるでしょ? などなど。

その度に俺はレイアの目が心配だと答えていた。

・・

俺のエロい思考って、漏れてるのかな?

まぁいい。

俺たちは海伝うみづたいに移動している。

強い魔物の反応はない。

かなりの移動速度だと思う。

・・

時間は16時前だ。


移動はほとんど問題なく、スムースに移動できた。

明石大橋が見え、そのまま通過する。

淡路島に入ってフト思った。

そういえば、どうやって帝都まで行けばいいんだ?

俺、飛べないぞ。

ゲートもなくなってるし・・思っていることをフレイアに伝えてみた。

「大丈夫よ。 私が風魔法で運ぶわ」

フレイアが言う。

「そうか・・」

俺はそう答えつつも、風魔法と聞くとシルビアの時のイメージが抜けない。

途中で落下しだしたからな。

・・・

ま、何とかなるだろう。

そんなことを考えていると、自分の家に到着。

地上の家だ。

この上に帝都があるんだよな。

そう思って上空を見るが、普通の空だ。

光学迷彩のような魔法をかけていると言っていたが、凄いな。

改めて思う。


家の周りには、人の気配はないようだ。

みんな市役所のところに行ったり、冒険したりしているのだろうな。

勝手にそんな想像をしてみた。

事実はそうだったのだが。

フレイアが早速、風魔法で帝都へ運んでくれるという。

俺はレイアを背負ったまま、ジャンプする。

フレイアもそれに合わせて魔法をかけてくれた。


フワフワとゆっくりと上空へ上がって行く。

・・・

・・

雲を抜けると、下に街が見えた。

なるほど・・大丈夫のようだな。

白い塔のところへ向かってゆっくりと運ばれる。

塔が近づいてきたときだ。

ガクンと俺の方が少し下がった。


「テツ、ここまでが限界のようだわ。 ごめんね」

フレイアが申し訳なさそうに言う。

やっぱりダメだったか。

俺って、精霊との相性が悪いのか?

シルビアのときとよく似ているな。

だが、シルビアの時のような悲壮感はない。

なにせ、下にきちんと街がある。

足場がある、問題はない。

自由落下よりも遥かに遅い速度で下降する。

十分だ。


「フレイア、ありがとう」

俺は感謝を示して、塔の横に着地する。

レイアにもショックはないだろう。

「レイア、大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

レイアはしっかりと答えてくれる。

すぐにフレイアも降りて来た。

「テツ、すまない、最後までうまく運べなくて・・」

「いや、問題ないよ。 無事到着できたんだから」

フレイアにそういうと、俺たちはすぐにアニム王のところへ向かった。


王宮の入口で、アニム王に面会を求める。

少し待つようだが、王宮内へ案内された。

会議室の横の部屋で待機のようだ。

「こちらでお待ちください」

案内してくれた人が扉を開けてくれる。

俺たちは中へ入り、ソファに腰かけた。

中にいた人が、飲み物をすぐに運んできてくれる。

「間もなく王が来られますが、こちらでもどうぞお召し上がりください」

ありがたく頂戴した。


「ふぅ・・」

俺が一口飲んで息を吐きだすと、レイアが笑っていた。

クスクス・・。

「アハハ・・テツは何かおじさんみたい」

おじさんですか・・いや、実際におじさんだろうな。

自分では、まだまだ若いと思っているのだが。

「おじさんかぁ・・」

俺はそれ以上言葉が浮かんでこなかった。

「そうね、テツはおじさんかもね」

フレイアが追い打ちをかける。

姉妹二人して笑っていた。

その声の中、アニム王が現れる。

「おやおや、何か楽しそうだね」


アニム王、その歩く姿、やっぱりサマになってるよ。

俺は一人突っ込む。

「テツ、フレイア、よく無事に帰ってきてくれた。 お疲れ様。 それにレイア・・本当に気の毒なことをさせてしまった」

アニム王がレイアの近くに言って、そっと声をかけていた。

「え? お、王様? い、いえ・・こちらこそ、ありがとうございます」

レイアが潰された目でアニム王の方を向き、明るく返答している。

そんなレイアの姿を見ていると痛々しい。


アニム王が軽く後ろを振り向くと、王宮の人だろうか、一人の女の人が近寄ってくる。

「フレイア、神殿の方へレイアを運ぶのだが、いいだろうか?」

「ありがとう、アニム。 よろしくお願いするわね」

フレイアがアニム王に頭を下げていた。

俺はそれを見ていて、改めて思った。

そういえば、フレイアもお辞儀をする。

アニム王もお辞儀をする。

お辞儀の習慣が自然とある国だったんだなと思いつつ、やはり日本もそういった転移者の末裔まつえいなのかもしれないとも考えた。


レイアが丁寧に優しく神殿の方へ案内されていった。

レイアの背中を見送ると、アニム王が俺たちを見て顔を引き締める。

「テツ、フレイア、本当にご苦労だったね。 調査員を派遣して調査させているところだよ」

「レイアを見つけた街のことですか?」

俺は聞いてみる。

「そうだ。 今のところわかっているのは、やはり光の神を信仰し、魔法のみを絶対視する団体のようだね」

「魔法のみですか・・」

俺はぼんやりとオウム返しで言葉を返した。

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