第191話 嫌な怒りで、我を忘れそうだ
「誰か・・そこにいるのですか?」
檻の中から、蚊の鳴くような声で語り掛けてくる。
「レイア!!」
フレイアが思わず叫んでいた。
檻の中の子がその声に反応。
力なくゆっくりと身体を起こしている。
「え? そ、その声・・お姉ちゃん・・なの?」
フレイアが涙を流しながら大きくうなずいていた。
「姉ちゃん、どこにいるの?」
その言葉に、俺とフレイアはビクッとした。
部屋の中はそれほど暗いわけではない。
「レイア、ここに私はいるわ」
フレイアがそう声をかける。
檻の中から、細い折れそうな腕を震えながら伸ばしてくる。
「お姉ちゃん・・」
レイアと呼ばれる子の手をフレイアがぎゅっと
「レイア・・」
フレイアは泣きながら、檻の前でレイアの腕を
レイアはかなり衰弱しているらしく、よく見れば身体も傷だらけだ。
フレイアは回復魔法をかけていた。
すぐに身体の傷は回復したようだが、体力はどうにもならない。
しかも、目が見えないようだった。
!!!
明らかに目を潰されている。
俺の中で静かに嫌な感覚が沸き起こる。
「テツ・・私の魔法では、目は治せないわ」
フレイアが震える声で辛そうにこちらを向く。
「フレイア、帝都に行けば何とかなるだろう」
俺がそういうと、フレイアの目が大きくなってうなずく。
俺とフレイアがそうやって会話していると、入り口のところに受付の男が入って来ていた。
「こちらです、斎藤さん」
男はそういうと、一人男を招き入れる。
!!
見たことあるぞ。
確か・・えっと・・誰だっけ?
いや、見たことはあるんだ。
どこでだったかな?
俺が考えてる間に、斎藤と呼ばれた男が俺の前に来ていた。
「貴様は、確かテツとかいう男だったかな?」
斎藤は開口一番そう言ってきた。
いやいや、いきなり貴様呼ばわりですか?
そりゃ、古典なら尊敬語でしょうけど、ねぇ。
余計なことを突っ込もうかと思ったが、そういう雰囲気ではない。
俺は斎藤を見つめ聞いてみた。
「この建物にいる人たちは、何なのです?」
斎藤の口がニヤッと吊り上がったように見えた。
「フッ・・」
斎藤は鼻息を出しながら、俺を見た。
受付の男が斎藤の横に立ち、代わりに説明をしてくれるようだ。
「斎藤さん、私が説明しましょう」
男が一歩前に踏み出して言う。
「この建物にいる連中は、奴隷や捕虜です。 我々に敵対したり、この街の外で居たのを保護したのです」
!!
フレイアが反応した。
「ほ、保護しただと・・貴様ぁ!」
俺はフレイアの前に手を出し、制止する。
「保護にしては、乱暴な扱いだな」
俺は男を見据えて静かに答える。
人を見て話すなんて苦手なんだが。
まぁ、こんな心境ではな。
男は、斎藤がいるのが心強いのか、なおも続ける。
「拾ったもの・・いえ、保護したものを我々がどうしようと勝手だと思いませんか? それに生きているのです。 むしろ感謝してもらいたいものです。 その檻の中のエルフは上玉でね。 ただ、少し暴れるものですから、保護するのに手間取りましたが・・」
男がそこまで言うと、斎藤が男の前に手を出して、言葉を
俺はそれを見つつ、斎藤と男に言ってみた。
「では、この子を解放してもらえませんかね。 どうも私の相棒の知り合いのようですから・・」
内心は怒りで自分を見失いそうだ。
もしこの男が加担してるなら、死刑確定だ。
・・・
・・
さて、どんな反応が返ってくるのか。
斎藤、レベル25。
レイア、レベル26。
俺が見た数値だ。
しかし、斎藤はそのレベルとは違って何かある。
そう感じさせる。
「俺の一存では決められないな。 それよりも、貴様のその腰にある刀・・居合か何かをやっているのか?」
斎藤は静かに、だが威圧的に聞いてくる。
・・・
こいつ、俺たちを殺る気のようだな。
俺は確信する。
斎藤だったっけ?
戦うことしか興味のない感じだな。
「いえ、剣術は習ったことがありません。 我流です。 ですが、斎藤さん・・あなたこそ、その立ち居振る舞いは武道をたしなんでるでしょう」
俺はそう言葉を返す。
俺は決して強くはない。
だが、少林寺拳法や空手など、習っていてある程度継続して身につけている。
だからこそ感じるものがある。
ほんの少しの動き、足の運びなんかで違和感を感じる。
普通じゃないと。
少し構えただけで、武道経験者だとわかる。
構え方が違う。
隙があるとかそんなんじゃない。
言葉にならない言葉。
身体が語ってくる。
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