第189話 街は・・あった!


「う~ん・・」

「で、テツ、転職は決まったの?」

「やっぱ、帝都に戻ってからだな」

やっぱりまだ決められない。

「何それ?」

フレイアは少しあきれている。

俺は頭をきつつ笑ってしまった。


「それでテツ、これからどうするの?」

「うん、俺が前に出会った人の集団、それがどうなったかが、何か妙に気になるんだ」

フレイアは黙って聞いてくれている。


あの泉の集団。

俺の推測が間違えていなければ、横須賀方面に行ってるはずだ。

やつの地元だからな。

海も近いし、レベルの高い魔物も少ないんじゃないか?

そう推察してみた。

それに生き残りの人たちがいるかもしれない。

どうせここからならすぐだろう。


そう思うと、街を探索がてら見に行ってみてもいいかフレイアに聞いてみた。

フレイアはうなずいてくれる。

ありがとう。

・・・

5分ほど移動しただろうか。

横須賀中央の駅辺りについたようだ。

海に向かって、商店街が並んでいたはずだが、瓦礫の山だな。

やっぱ、人は生き残っていないのかもしれない。


このまま、まっすぐ行けば米軍基地が見えるはずだが・・無事じゃないだろう。

厚木ですら潰れていたからな。

戦艦三笠は無事だろうか。

そんなことが頭をよぎったが、とりあえず索敵をしてみた。

魔物の反応はほとんどない。

・・・

レベルの高い魔物はひっかからない。


フレイアにも聞いてみた。

「フレイア・・人がいそうな場所ってあるかな?」

フレイアが目を閉じて探っている。

・・・

「そうね・・何か・・小さな魔素の集団があるわね。 でも、これって・・」

マジか、あるのかそんな集団が!

俺は目の前が明るくなったような気がした。

だが、すぐに気づく。

フレイアが変な顔をしている。


「どうしたんだ、フレイア?」

「うん。 何か、変な魔素というか・・混じっていて弱々しいから、はっきりわからないけれど・・どうも人と違う魔素が混ざっているの。 それが同じ場所にいるというか・・なんだろう?」

フレイアにもよくわからないようだが、場所はわかるらしい。

でも、人の存在らしき集団があるのか。

それだけでも救われたような気がした。

こんないきなり魔物の溢れる世界になって、訳も分からず命を奪われたはずだ。

そして、死体すら残らない。

もし、今の段階まで生き延びている人たちなら、きっと新しい環境に適応していくだろう。

アニム王の国民かもしれない。

その人たちとなら同化もしやすいだろう。

勝手に希望的観測ばかりが俺の頭に浮かんでいた。


フレイアに先導してもらい、その場所へ移動する。

米軍基地方面を背中にして、久里浜方面へ移動した。

すぐに電信柱くらいある壁が見えてきた。

それが横に長く続いている。

結構な広がりがある。

こんな壁があるということは、既に転移者と接触していると思った方がいいな。

俺はますます明るい気分になる。


フレイアに魔素が多く集まってる方向を目指してもらう。

壁に沿って移動する。

しばらく歩いていると、入り口らしきところが見えてきた。

澤田さんのところの街と同じように、2~3人ほどが横に並んで出入りできるくらいの広さの門だった。

門番が3人いる。

良かった、人間がいた。

俺たちが近づいて行くと、こちらに気づいたのか、声をかけてきた。

「おい、お前たち、どこから来た?」


澤田さんのところとえらい違いだな。

でも言葉は通じるし、日本人のようだ。

おれはあっちと指を差して、ギャグでもかましてやろうかと思ったが、どうもそんな雰囲気ではない。

当然だろう。

こんな状況だ。

門番に立っているだけでド緊張だろう。

何せ魔物と一番最初に遭遇するところだからな。


さて、新宿方面といっても、信じてもらえないだろうな。

俺は少し考えて答えた。

「えっと・・静岡の方から移動してきたのですが・・」

俺がそういうと、少し緊張感が和らいだようだ。


「そうか、静岡か・・」

門番の一人がそういうと、他の二人も少し気が抜けたような感じがした。

ちなみに、3人ともレベル21だった。


「いやね、変な連中がいるから警戒していたんですよ。 で、何か用ですか?」

いきなり様子が変わったな。

「街の中に入ることはできるんですか?」

俺は聞いてみた。

「それはできますが、何か身分を証明するものをお持ちですか?」

俺はギルドカードを出そうかと思ったが、やめた。

!!

そういえば、俺って運転免許証を持っていたな。

ポケットに手を突っ込んで、免許証入れから運転免許証を取り出して、門番に見せた。


門番はそれを見ると、余計に顔がほころんだ。

免許証の効果は大きいな。

「町田さんですか、ようこそ私たちの街へ」

そういって中へ入れてくれた。

フレイアは免許証は持っていないと俺が言うと、素直に中に入れてくれた。

ただ、門番はフレイアに目が釘付けだが。

なんか曖昧あいまいなセキュリティだな。

あれ?

免許証の住所は静岡じゃないが・・日本の住人を見て、安心したのだろうか。

ま、いっか、入れたんだし。

そう思いつつも、街の中へは入ることができた。


街をみると、明らかに澤田さんたちの街のような感じを受けた。

俺は確信する。

異世界人との接触をしたらしいということ。

それに門番もそうだが、生き残りの人たちがいたのが素直にうれしかった。

規模は帝都の方が遥かに大きいが、それでも魔法で作られた街のようだ。

歩きつつも、フレイアが妙に弱々しい魔素を感じるという方向へ移動して行った。

フレイアが不安そうな顔つきをしている。


俺は歩きながら街並みを見ている。

帝都のような作りになってはいるが、変な違和感も感じる。

作る人が違えば、街の雰囲気も変わるものだな。

俺はそう思いつつ、フレイアについて行く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る