第187話 神鳥の羽
上空で羽ばたいていたフェニックスは、ゆっくりと降りてきた。
地上付近は、土ぼこりと煙ではっきりとは見えない。
俺からもフェニックスは良く見えないが、その位置はわかる。
俺はその方向へ走っていく。
!!
見つけた!
フェニックスを眼前に
スパッ!
どうだ?
やはり何かを切ったような手ごたえはない。
だが、どうやらフェニックスの左の翼を切ることができたようだ。
切り上げた刀をそのまま切り返し、今度は袈裟切りで切りつける。
フェニックスの左腹に当たり、そのまま切り抜けた。
翼のときもそうだが、どうも手ごたえがない。
物体を切ってる感覚がない。
そのまま素振りしてるような感じだ。
だが、そんなことはどうでもいい。
とにかく相手に対して切りつけていられるのだ。
やるしかない。
俺がそう思って見ていると、フェニックスはゆっくりと地上へと落ちてきた。
そのタイミングで、俺は連続で突きを繰り出す!
ドドドドド・・・・・!!!!
やはり何かに刺さってる感じはしない。
しかし、フェニックスがそのまま地面に倒れた。
サラマンダーたちは動かない。
『経験値を獲得しました』
『レベルが上がりました』
!!
天の声が聞こえた。
ということは、倒したのか?
・・・
だが、なんだこの妙な違和感は。
全く戦ったという感じではない。
こちらの攻撃が当たっているのかどうかもわからない。
相手の攻撃は確実にダメージとして残っているのだが。
そして、フェニックスの身体はそのままそこにある。
そう思って見ていると、白い炎がフェニックスを包み燃え始めた。
「テツ~!」
フレイアが駆け寄ってくる。
「テツ、大丈夫? すごい戦いだったね」
「フレイアこそ大丈夫だったか?」
俺がそう答えると、フレイアが回復魔法をかけてくれた。
「はい、ジッとして・・」
いやいや、子供か。
あいたたた・・そういえば、結構やられたんだよな。
火傷や火の矢による傷。
戦いのときにはそうでもなかったが、終わってみたら痛みだすよな。
すぐに傷も回復してきたようだ。
「フレイア、ありがとう」
俺はフレイアに謝意を示す。
「それにしても、フェニックスってすごいわね。 火の魔法でいえば、最上位クラスのレベルだったんじゃないかしら。 それを簡単に繰り出すんだもの。 テツもテツで、それを防いだのも呆れたものね」
フレイアが微笑みながら言う。
俺もそう思う。
「よく無事に生き残れたと思うよ。 でも、フェニックス・・一体何をしたかったんだろうな」
そんなことを思って、フェニックスのいたところで燃える白い炎を見ていた。
とにかく生き残れた。
良かったと思う。
「フレイア・・この炎、なかなか消えないな」
俺はつぶやくように言ってみた。
「そうね・・白い炎って、神聖属性のものが多いけど、きっとその属性のものなんだと思う」
フレイアが炎を見つめながら話してくれる。
そんなものか・・。
そう思って見ていると、先ほどよりも炎が勢いよく燃えあがる。
!!
炎が収束するように集まって、渦を作っていく。
その塊が膨らんで大きくなり、丸い炎の形になったかと思うと、その中からフェニックスが現れた。
キィェェェェ!!!!!!
甲高い声を一声すると、大きく上空へ舞い上がり、俺たちの前に降りて来た。
俺もフレイアも言葉がない。
俺は急いでフェニックスを見てみた。
レベル42:フェニックス。
おい!
さっきよりもレベル上がってるだろ!
終わったな・・。
倒しても、レベルが上がって甦るんじゃぁ、エンドレスじゃないか。
それよりも、燃えてる炎のときに対処するのか?
とにかく、もう遅い。
俺は半ばあきらめの境地と、どうとでもなれという投げやりの気持ちになった。
『人の子よ』
フェニックスが語り掛けてくる。
フレイアが驚いて俺を見る。
「テツ! 私にも聞こえるわ」
俺と一緒にフェニックスを見つめる。
『よくぞ生き延びた。 お前の意思は伝わった。 我もこの世界と共にあろう』
フェニックスはそういうと、一枚の羽を俺の前に落とした。
『それを持つがいい、人の子よ。 名を聞いておこう』
俺はテツと名を告げた。
『テツよ。 この先は、我の支配する世界となる。 何人も
そういうとフェニックスは飛び去って行った。
俺はフェニックスが残していった羽を拾い上げて鑑定してみる。
「神鳥の羽」とある。
それだけだ。
ありがたくいただいておこう。
そう思いながらアイテムボックスに収納する。
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