第185話 会話、できるのか?
それにしてもフェニックス、そんな珍しい魔物だったのか。
いや、魔物と呼ぶことができるのかどうか怪しい。
とりあえず、アニム王に聞いた話をフレイアに伝えてみた。
・・・
「なるほどねぇ。 私たちエルフの間でも、物語的な話しかないから。 長いこと生きてるエルフでも、見たという話は聞いたことないわね。 私が知らないだけかもしれないけど・・」
エルフのような長命種でも、出会うのが
「どうする、フレイア? 俺は見に行ってみたいと思っているのだが・・」
「私も行くわ! こんなチャンス、もうないかもしれないしね」
フレイアが俺の方を向いて大きくうなずく。
「フレイア、命の危険があるが・・大丈夫か?」
「それはテツだって同じでしょ。 足手まといにならないから大丈夫よ」
フレイアは力強く言ってくれる。
足手まといなんてとんでもない。
俺はそう伝えて、ゆっくりと移動を始める。
索敵にはフェニックスの周りにサラマンダーがついている感じで動かない。
そこへ向かって、歩きながら近づいて行く。
・・・
距離的に300メートルくらいまで近づいたと思う。
赤い大きな鳥が背筋を伸ばしたようにしてジッとしている。
シラサギなどの鳥がジッとして辺りの雰囲気を探っているような動きだ。
おかしいなぁ・・俺たちの気配は消えてるはずなんだが。
俺は不審に思いながらも、ゆっくりと歩を進める。
100メートルくらいの距離になっただろうか。
はっきりと視認できる。
透き通ったような炎を
あれがフェニックスだろう。
こちらをしっかりと見ている。
気配というか、存在を認識されてる感じがする。
・・・
今さら隠れる必要もないようだ。
それに何だか攻撃を仕掛けてくる感じがしない。
むしろ、堂々と進んだ方がいい気がする。
俺たちはその目線に向かって真っすぐに歩いて行く。
周りには魔物の反応は全くない。
サラマンダーがいるだけだ。
この2体も動かずにフェニックスの
30~50メートルくらいに近づいただろうか。
俺とフレイアはその場で立ち止まった。
フェニックスは動かずに俺たちを見つめたままだ。
俺もフェニックスを見つめている。
不思議と脅威は感じない。
『どうした、歩くのをやめたのか?』
!
頭の中に声のようなものが聞こえる。
俺はフレイアを見て、辺りを見渡した。
フレイアには聞こえなかったようだ。
俺は無意識にフレイアの腕を捕んていたみたいだ。
!!
フレイアが驚いた顔で俺を見る。
「どうしたの、テツ?」
「フレイア・・今、何か声のようなものが聞こえなかったか?」
俺は聞いてみた。
「声? そんなものは聞こえなかったけれど・・それにしても、フェニックスってきれいね。 輝いてるわ」
フレイアは目をキラキラさせて見ていた。
俺も気を取り直してフェニックスを見る。
『どうした人の子よ』
!
やはり、フェニックスか。
俺の頭に直接語りかけてきているようだ。
「フレイア、フェニックスが俺に念話みたいなものを飛ばしてくる」
フレイアは驚いたような顔を向ける。
「ほんとに? いや、でも・・会話できる魔物もいるって聞くけど、まさか魔物の方から話しかけてくるなんて・・」
フレイアはひとり
同時に、俺はフレイアの声を遠くで聞くような感じになった。
俺の周りが暗く感じる。
!
目の前にフェニックスがいた。
別に驚きとかはなかった。
俺もフェニックスを見ている。
『人の子よ。 この世界をどう見る?』
??
いきなりか!
いったい、何を言ってるんだ?
俺はフェニックスの問いかけの真意を探っていた。
・・・
だが、黙っていてはいけないだろう。
しかし、焦って失言しても怖いな。
『フェニックス・・俺は、今のこの世界が好きだ』
まず俺はそう返事をし、後は次の言葉を考えていた。
それは本当だ。
今までの人の作ったシステムから、レベルや魔法のあるシステムへと変化した。
自分というものを、人が評価するんじゃない。
人という生命を生み出した自然が評価するというと大げさか。
ただ、自分の行いや積み重ねが実るシステムになった。
最高だ。
どんな人も、ほぼ公平に評価される。
悪と呼ばれる行為も、レベルで評価されてしまうだろう。
それがどうも割り切れないが。
そして、自分自身も好きだが、この世界を作っているあらゆるもの。
好きというか、好意を持ってみていると思う。
自然災害は嫌だが、それでも自然が内包しているものだろう。
それを恨むことはできない。
その中で生きているのだから。
ただ、人災は嫌だ。
それは予防できるものだし、それを意識しない人間は嫌いだ。
考えれば考えるほど今の世界システム、最高じゃないか。
魔法で可能性も広がった。
・・・
・・
いろんなことが乱雑に頭の中で浮かび消えていった。
!
するとフェニックスが一振り、羽ばたいた。
バサァ・・。
大きな風が起こったように感じるが、風は起こっていない。
『そうか・・人の子よ、理解した。 我にその意思を見せてみろ』
え?
何言ってるの、この鳥。
それにわかったって・・。
!!
俺の思考を読んだのか?
まさか!
そう思っていたら、俺の辺りがスッと明るくなった。
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