第181話 ギリギリだな
サイクロプスを中心にして、俺たちは左右に位置している。
フレイアは相変わらず矢を繰り出してくれている。
サイクロプスの側面に矢が刺さってるはずだが、微動だにしない。
蚊がとまっているような感じなのか?
とにかく近づかなければ
あの鉄球みたいなのを刀で斬ろうなんてことは思いもしない。
ただ、サイクロプスは動きは遅い。
それは確実だ。
足のところに潜り込めれば、どこかを斬ることもできるだろう。
このレベルになると、こちらの安全を削らなきゃ勝てないのかもしれない。
死ぬのは嫌だが。
明らかに高レベルな魔物のはずなのに、ついちょっかいを出してしまった。
ソロなら逃げてたな。
俺はそう思いつつも、ゆっくりと歩いてサイクロプスに近づいていく。
サイクロプスはまた鉄球を回し始めた。
重い風を切る音が不気味に聞こえる。
相手が巨大すぎるので、距離感がよくわからないが、50メートルくらいは離れているだろう。
サイクロプスが俺の方に鉄球を放ってきた。
そのタイミングで、サイクロプスに向かって俺も走り出す。
「テツ!!」
フレイアの声が聞こえたような気がした。
俺は鉄球を飛び越えて、サイクロプスの頭上にジャンプ!
これで、サイクロプスの身体に近づくことができるだろう。
その時だった。
サイクロプスは一気に鉄球を引き戻す。
!!!
マジか!!
俺の視界に黒の領域が広がってくる。
クッ、飛び上がるんじゃなかった。
余計なタイムロスが生じる。
転がるか、左右どちらかに避ければよかったんだ。
空中ではどうすることもできない。
あの鉄球とあの速度、いったいどれくらいの衝撃なんだ?
・・・
あれ?
やけに長いこと考えられてるな。
これって、死ぬ直前の・・そう思っていたら、背中に衝撃を感じた。
ドン!!
俺はそのまま地面に向かって叩き落された感じだ。
!
急いで上を見上げたら、フレイアが空中にいた。
その映像が見えた瞬間に、もの凄い勢いで鉄球が視界を横切る。
・・・
どうやらフレイアが風魔法で俺を助けてくれたようだ。
同時にサイクロプスの真下へ来ることができた。
あの威圧感、もし当たっていたら・・嫌な考えが頭の中に浮かんだが、すぐに追い払う。
前を見ろ!
サイクロプスは鉄球を持っていた。
その姿を下から見上げ、俺は刀でサイクロプスの足を斬りつける。
ズパン!!
右足にきれいに入った。
もう一振り、二振り・・と、何度も振り回す。
そして、下からサイクロプスを切り上げてもみた。
・・・
サイクロプスが揺れている。
俺は少し距離を取る。
サイクロプスの揺れが大きくなる。
見ていると、鉄球を持ったままサイクロプスが横に傾き、倒れた。
ドドーーーーーーン・・・!!!
足がきれいに切断できていたようだ。
さすがじいちゃんの刀だな。
サイクロプスは鉄球の重さに耐えられなかったのだろう。
しかし、まだ生きている。
俺はサイクロプスの身体に飛び乗り、鉄球を持っている腕を斬り落とす。
きれいに腕を落とすことができた。
そのままサイクロプスの頭に刀を突きたてる。
ドス!
・・・
サイクロプスは少しウゴウゴとしていたが、すぐに動かなくなり蒸発。
『経験値を獲得しました』
『レベルが上がりました』
レベルが上がったのか?
フレイアとパーティを組んでいたのに・・そんなことを思っていると、フレイアが降りて来た。
「テツ、大丈夫?」
心配そうな顔をして俺を見る。
俺も刀を収納し、フレイアの方を向く。
こんな心配そうな顔をさせてしまって申し訳ない。
嫁なんて俺のことを心配したことないぞ。
そんなことが頭に浮かぶ。
「あぁ、大丈夫だフレイア。 それに、ありがとう」
フレイアはホッとしたのか、今にも泣きそうな顔をしている。
「ほんとに、無茶をして・・」
「うん、すまなかった。 フレイアがあのとき魔法で俺を地面にたたきつけてくれなきゃ死んでたかもな」
間一髪だったと思う。
「私だって夢中だったから・・」
「それにしても、サイクロプスって動きが遅いけど、まさかあんなでかい球を軽々と振り回すなんてな」
「そうね。 私も見たことがあるだけで、戦うなんて思ってもみなかったから」
フレイアもだいぶ落ち着いてきたようだ。
「とにかく、
俺はその場で座ったまま、空を見上げて言ってみた。
そんな俺を
「でもね、テツ。 無茶はやめてよね。 私も心臓が止まりそうになったわよ」
・・・
・・
俺は軽く説教された。
サイクロプスの魔石を回収し、ついでに鉄球も回収させてもらった。
何かの役に立つだろう・・たぶん。
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