第180話 サイクロプス・・マジか!


ミノタウロスが俺に近づきつつ、斧を振り下ろしてきた。

斧が直撃すればかなりのダメージを負うだろう。

ソロではなく、フレイアという相棒がいるというだけでこれだけ気持ちが違うのか?

以前、俺が死にかけた魔物だ。

だが今は、怖さよりも冷静さがまさる。

そして、斧が振り下ろされるより速く俺の方が動けた。


斧がまだ俺の頭上にあるとき、刀を抜き横に薙ぎ払う。

そのままミノタウロスをかわして駆け抜ける。

そして、振り向きつつ上段から刀を振り下ろす!

ズバン!

ミノタウロスの頭からきれいに引っかかることもなく地面まで刀が抜けた。


ほぼ同時に、ミノタウロスの斧が地面に到着したようだ。

ドッゴォーーーーーーーン!!!!

地響きとともに、ミノタウロスの前面がクレーターのようにえぐれていた。

その穴に、そのままミノタウロスも一緒に倒れ込み、蒸発した。


『経験値を獲得しました』


天の声を聞きつつ魔石を回収。

ついでに斧ももらっておこう。

アイテムボックスに回収。

しかし、この威力・・直撃ならかなりヤバいな。

俺はそんなことを思ってみる。

見た目には余裕で倒せているように見えるだろう。

だが、そんなことはない。

ミノタウロスに合わせて真剣に動いているだけだ。

一呼吸間違えればすべてが狂う。

俺の方が確かにレベルが高い。

だからこそ有利に動けているのだろう。

それにじいちゃんの刀。

これの存在は大きい・・空間までぶった切るようだしな。


フレイアが近寄って来て、やや呆れたように言う。

「テツ、あなた本当に何者なの? ううん、わかってるわ。 人間だもの・・でもねぇ、この目の前で起きた光景を見ると、まるで物語絵本を見ているみたいよ」

「そうなのか?」

フレイアは頭をゆっくり振って、

「そうなのかって、ねぇ・・ミノタウロスをソロで倒す人って普通いないわよ。 大体パーティを組んで、援護魔法を得ながらようやく倒せるような魔物だもの。 それに、めったに遭遇することもない魔物だしね」

フレイアは半笑いだ。

「フレイア、俺達だってパーティを組んでるぞ。 それにこのじいちゃんの武器の性能のおかげだな」

「あのね、パーティって言っても・・」

そこまでだった。

やはり、サイクロプスに気づかれたようだ。

脳内マップでわかる。

まっすぐこちらに向かってきている。

フレイアもサイクロプスは見たことはあるが、戦うのは初めてだそうだ。

大丈夫かな?

俺は少し不安になった。


ジャラ、ジャラという何かを引きずる金属音が聞こえてくる。

サイクロプスの姿はまだ完全に目視はできていない。

ただ、ビルなどの瓦礫の向こうに動いているものがチラチラ見える。

サイクロプスだろう。

まだかなり距離があるはずだ。

それでも見えるということは、でかいのだろう。

レベル40。

俺よりも1つ上だが、今はソロじゃない。

フレイアがいる。


サイクロプスが確実に近づいてきているはず。

なんか気分が悪くなる感じだ。

その大きさのせいか、距離感がつかめない。

スカイツリーを初めて近くで見たような感じだな。

!!

あれか・・顔の部分に目が一つ。

そりゃ、サイクロプスだからな。


だんだんとその身体が大きくなってくる。

どれくらいの距離が離れているのかわからないが、見上げる感じになってきた。

それにジャラジャラといった金属音。

どうやら引きずっているらしい鉄球みたいなものがあった。


あんなものを振り回されたり、当たったら・・巨大戦艦でも木っ端みじんじゃないのか?

でかすぎるだろ!!

そもそも振り回せるのか?

そう思っていたら、サイクロプスが右手を動かしだした。

ブンと一振りすると、鉄球がブオンと重い風を切る音をたてて、回りだした。

恐怖よりも、その鉄球って回るんだと感心した。


俺とフレイアは左右に分かれて移動する。

あの鉄球にあたるはずもないだろうが、その衝撃にはかなり注意しなければいけないだろう。

というか、当たれば間違いなく即死だな。

フレイアが移動しつつ、矢を放っていた。

俺の方から見えるだけでも、5本は矢が刺さっている。

しかし、サイクロプスは気にする様子すらない。

鉄球を回しつつ、俺の方へその鉄球を放ってきた。


!!!

すべての音が消えたような感覚を受ける!

ヤバい!!

俺は思いっきり飛んだ!

鉄球の飛んでくる方向に対して直角方向へ飛ぶ。

飛びつつもその鉄球の接地した辺りを見ていた。

!!

津波だ。

土や瓦礫がれきの津波だ。

鉄球が地面をえぐるというものじゃない。

地面が波打って盛り上がっていき、崩れ広がる。

どれくらい広がっているのだろう。

そこら辺のサッカー場や野球場がいくつも入りそうだ。


地響きみたいな音が鳴ったような鳴らないような・・・わからない。

そりゃ、こんなのをくらったら、何も残らないな。

だが、感心ばかりしていられない。

どうにかして倒さないと。


サイクロプス自体の動きは速くない。

だが、鉄球を振り回す速度は結構ある。

それにあの威力だ。

鉄球を放った直後は少し動きが鈍くなるのかと思った。

だが違った。

サイクロプスは関係なく、鉄球を持っている腕を引き戻すと、鉄球がゴムボールのように戻って行った。

アホみたいな怪力だな。


とにかく俺にできることは近づいて刀で斬ることくらいだ。

それしかできない。

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