第177話 ここにもギルドはあるんだな


俺がしばらく考え込んでいると、大倉さんよりも澤田さんの方が呆れて笑っていた。

「あはは・・・町田さんらしいですね」

その言葉で大倉さんも笑っていた。

俺的には救われた。


「大倉さん、本当にすみません」

「いえ、いいのです。 ただ、そうやって謝られると、こちらがやるせなくなりますぅ」

女の子って怖いな。

こんな子供なのにドキッとさせられる。

いや、見た目は大人になっているか。


おっと、フレイアを紹介しないと。

「澤田さん、俺の相棒ですが、フレイアといいます」

フレイアの耳が一気に赤くなった。

「テ、テツ! あ、相棒って・・」

「違うのか?」

「いや、違わないが・・ありがとう」

フレイアがおとなしくなった。


「フレイアさんですか、よろしくお願いします。 澤田です。 それにしても、おきれいですね」

フレイアがピクッとした。

「テ、テツ。 この星の住人はまたエルフをバカにして!!」

俺に食って掛かってきた。

「いや、だから違うってフレイア。 前にも言ったが、フレイアがきれいなんだって。 それにこの星の住人はエルフに免疫がないんだよ」

やぶ蛇だったようだ。

「またバカにして!」

レイピアを抜こうとするから、仕方なくフレイアの手をグッと握る。

不思議とフレイアがおとなしくなった。

「すみません、澤田さん。 いつもこうなんですよ」

「町田さん、エルフですか・・初めてお目にかかります」

澤田さんは落ち着いているが興味深々だな。

そりゃ、エルフだからな。


フレイアは澤田さんに任せて、俺は大倉さんの話を聞いていた。

すると大倉さんの後ろを女の人が通過する。

こちらをチラッと見て行った。

俺は違和感を感じる。

ん?

どこかで見たような気がするが・・。

俺の視線を見たのだろう。

「テツさん・・テツさん! どこ見ているんですか?」

大倉さんが俺を見つめている。

俺は慌てて返答。

「あぁ、すまない。 今、大倉さんの後ろを美人さんが通ったんだが・・どこかで見たことあるような気がするんだよなぁ・・よく思い出せないんだ」

俺がそう言うと大倉さんが振り向いて、先程通過した女性の背中を見て答える。

「あぁ、彼女、森村佳奈もりむらかなさんですよ」

「森村・・ん? え? えぇ!! 森村佳奈って、あの女優の?」

記憶にあるわけだ。

「はい、そうです。 テツさん、ファンなんですか?」

「い、いや、ファンってわけじゃないが、ドラマとか時代劇とかで見かけたりしていたからな。 それにバラエティでも明るい感じで雰囲気良かったから」

「あはは・・テツさん、それってファンじゃないですか」

「え? そうかな・・」

「そうですよ。 でもよかった・・テツさんってもっと違う世界の人かと思ってましたが、人間ですね」

「は? 何それ?」

「あはは・・では、私はこれで失礼します」

大倉さんは笑顔で仕事に戻って行った。


大倉さんの笑い声を聞いて澤田さんがニコニコしながら近寄って来る。

「どうかしましたか?」

「あ、いえ、先程女優の森村佳奈さんに似た人がいたので、大倉さんに聞いたら本人だというのです。 驚きました」

「あぁ、彼女ですね。 実は僕の知り合いなんですよ」

澤田さんが言う。

「え? 澤田さん、女優さんと知り合いだったんですか?」

「えぇ、まぁ・・彼女、女優業をやりながら、その影で医学部を目指していたのですよ。 それで今年入学できたって聞いていましてね。 あ、彼女の出身が兵庫県でしょう。 僕と同じ高校なんですよ」

「へぇ・・森村さん、頭いいのですね」

「ありがとうございます」

澤田さんが答えていた。


「それに彼女、回復系の職を選んでいるので大いに助かってます」

「そうなんですか・・」

「おまけに周りにも受けがよくて、彼女に回復を依頼する人が多いですね。 私のレベルなんてすぐに追い越されそうですよ」

澤田さんが嬉しそうに話してくれた。

なるほど・・世界が変わって、いろんな人が自分の生き方を見つけているんだな。

芸能人やプロスポーツ選手など、初期能力値も高いんじゃないか?

俺はフトそんなことが頭に浮かんだが、思っても仕方ない。


澤田さんが振り向き、マジマジとフレイアを見る。

・・・

「テツ、気持ち悪いぞ」

フレイアが俺に訴えてくる。

「いや、これは失礼しました、フレイアさん。 本当におきれいな方なので・・」

「き、貴様まだ言うか・・」

フレイアが前に出ようとする。

俺がまたも制止。

面倒な奴だな、フレイア。

澤田さんはフレイアに軽く会釈をしていた。


そんなことよりも、俺はこの街がどうやってできて、転移者はどういった人たちなのか気になった。

もし、アニム王の縁者なら報告しなければいけない。

俺は澤田さんにライセンスカードを見せてみた。

「澤田さん、これが何かわかりますか?」

澤田さんは驚いたようだが、同じように自分も見せてくれた。

「まさか、町田さんもお持ちだとは・・転移者の方々と話していると、とても便利なシステムなので利用させてもらいました」

「なるほど・・ということは、ギルドもあるわけですね」

「ええ、何ならご案内しますが・・」

澤田さんがそういってギルドの方へ案内してくれる。

フレイアもおとなしくついてきた。

・・・

歩きながら、俺のライセンスカードは帝都ギルドで作ってもらったものだということを伝えた。

澤田さんは驚いていたが、自分たちの街が魔法で出来上がってくるのを目の当たりにしてか、驚きも軽いものだった。

だが、帝都が空中にあるというと、言葉を失っていたようだ。


「空に浮かんでいる街ですか・・想像できませんね。 それに、いつか行ってみたいものです」

「こちらの街が落ちついてきたら、ご案内しますよ。 いや、それよりも帝都とのネットワークが確立すれば、行き来できるようになりますよ」

俺は思うままに伝えてみる。

「本当ですか! なるほど・・」

澤田さんも納得したようだ。


この街のギルドの建物の前に到着。

扉は手動だった。

扉を手でスライドさせて建物の中に入って行く。

中はそれほど人であふれているというわけではない。

数人がいる程度だ。

まぁ、街ができて、転移者も10人くらいじゃ、そんなものかもしれない。


澤田さんが受付に近寄って行って俺のことを紹介し、ギルドマスターを呼びに行ってくれた。

その間に俺は、受付の人にライセンスカードを見せた。

受付はかわいらしい女の子だ。

地球人かな?

そんなことを思ってみたが、どっちでもいい。

ライセンスカードをボードに乗せて、軽くチェックしてカードを返してもらった。

その際に、何度もカードと俺を見返していた。

「テ、テツ様、ようこそ我がギルドへ。 間もなくギルドマスターが来ると思いますので、お待ちください。 それにしても、Cランクの冒険者ですか」

受付の女の子は、やや驚きつつもニコニコしながら俺を見ていた。


「俺のライセンスカードに、何か不具合はなかったですか?」

別にあるはずもないが、会話をつなぎたいと貧乏性が出たようだ。

「いえ、ありません。 帝都ギルドが発行されたものだと確認できました。 帝都・・あるんですね」

「ええ、アニム王がいるところですね。 あなたたちも、光の神の庇護下ひごかにあるのですか?」

俺はさりげなく聞いてみた。

もし、違っていたら困るからな。

でも、カードが確認できたから大丈夫だと思うが。

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