第176話 澤田さん・・いるのかな?


俺って、何か問題発言したのだろうか?

明らかに警戒されている。

「澤田さんとどういったご関係ですか?」

門衛の1人が訊ねてくる。


「どういった関係? う~ん・・知り合いというか・・」

俺は返答に困ってしまった。

偶然オーガを倒したときに、その場にいた人だったからな。

俺的には何もしていないし、関係性もない。

困ったなぁ・・。

門衛の人はこちらをジッと見ている。

・・

あまり長く間が空くと、疑いの方が強くなるだろうな。

「そうですね・・町田が訪ねて来たと伝えてもらえませんか」

俺はとりあえずそう言ってみた。


門衛の1人が壁際に触れて、何やら連絡を取っている。

・・・

少し待たされた。

フレイアは黙って俺のそばで立ってくれている。

門衛の1人がホッとしたような顔をして、

「どうぞお入りください」と言って、通してくれた。


緩いチェックだな。

俺はそう思う。

こんなに簡単に人を通していいのか?

そう思ったが、この街のやり方があるのだろう。


門を通ると、中は結構な街並みに見えた。

これは間違いなく魔法で建てたものだと思える。

ということは、異世界人との接触は間違いないだろう。

そんなことを考えながら、街を見て歩いていく。

・・・・

目線の先の方から、こちらに走ってくる人がいる。


手を振りながら走って来た。

すぐに澤田さんだとわかった。

俺のところへやってきて、

「町田さん、ようこそおいでくださいました」

笑顔で話しかけてくる。


「いえいえ、こちらも移動途中で・・前に澤田さんがここら辺りで活動しているという話を思い出したものですから立ち寄ってみました」

俺は澤田さんの嬉しそうな顔を見ながら言う。


「そうですか、それはありがとうございます。 見ればわかると思いますが、街が出来つつあります」

「そうですね、いい街になりそうです。 それで、転移者と接触をしたんですね」

澤田さんは少し驚いたように見えたが、すぐにうなずく。

「そうなんです! 町田さんと別れて活動の拠点に戻ってきたら、見慣れない服を来た10人ほどの集団がいたのです。 話を聞くと、異世界から来たとか何とか・・」

澤田さんは、歩きながら俺にいろいろ話してくれた。

・・・・

・・・

転移者のこと。

街を作るのに、建物などが魔法で一瞬で作れること。

住民たちと一緒に街づくりをしていることなど。

また、澤田さんがどうやら地球人側のリーダー的な存在として活動をしているようだった。

そんな話の中、俺は意外な話を聞いた。


「町田さん、大倉って女の子をご存知ですか?」

「大倉?」

俺には全く記憶になかった。

「誰です、その子は?」


「私が町田さんに助けていただいて、淡路島に渡ってくる途中に出会った女の子なんですが、どうやら町田さんに助けていただいたとか言ってました」

マジか?

知らないぞ。

「本当ですか? いや、全く知らないのですが・・」

俺がそう言っていると、澤田さんが活動拠点にしてるらしい建物が見えてきた。

澤田さんは回復系の職らしい。

医師ということも関係してるのかな?

病院のような感じの建物だった。

澤田さんが言うには、魔法がある世界では余程のことがない限り死ぬことはないだろうという。

今までの医学が一体何だったのかと悩むこともあるそうだ。

ただ、人よりも身体のつくりは詳しいので、役立っているとも言っていた。


建物の中に入ると、1人の女の子が深々と頭を下げて待っていた。

「彼女が大倉さんです」

澤田さんがそう紹介をしてくれる。

「町田さん・・ですか? 覚えておられないかもしれませんが、舞子駅のところで町田さんがオーガを倒されたときに、私がその近くにいたのです。 おかげで助かりました。 どうもありがとうございました」

また、深々とお辞儀をされた。


「大倉さん・・でしたっけ? ご丁寧にどうも・・でも、本当に覚えていないのです。 すみません」

俺がしどろもどろに答えると、大倉という女の子は笑っていた。

「フフフ・・覚えていませんか。 オーガをものともせずに倒されたのに。 その後、明石大橋にジャンプして登っていかれたのですが・・」

大倉という女の子は上目遣いで俺を見る。

凛も大きくなったらこんな仕草をするのだろうか。

女の子らしい感じだ。

・・・・

俺は少し考えてみた。

やはり覚えていない。

だが、明石大橋を近畿方面から来たということは、アニム王に会いに行ったか、藤岡のところからの帰りだろうか。

いや、優のレベル上げの帰りかもしれない。


わからん。

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