第175話 のんびり行こうと思う


しばらくして地上へと到着した。

俺の家の近くだ。

時間的には8時前。

「テツ、これからどこを回って行くの?」

フレイアが聞いてくる。


「うん。 まずはアニム王が初めにいた場所のところを確認しようと思っていたんだ。 そこら辺りが、前の世界でこの国の中心部みたいなところだったからね」

「そうなんだ」

フレイアは顎に指を当てて返事をしてくる。

やっぱいいよなぁ、エルフ。

その仕草はグッとくる。

フレイアに変に勘繰られてもいけないので、すぐに違うことを言ってみた。

「それと、2回目にアニム王のところに行ったときに出会った地球人たちが、どうも頭の中に引っかかるんだ。 別にどうってこともないだろうけど、何かね・・」

俺はそう言ってみた。


確かに、あの泉たちの集団が気になる。

転移者が続々と出現してきている。

世界各地で出現していても不思議じゃない。

それに、どうも人がいるようなところに出現しているような感じだ。

藤岡のところにもいるかもしれない。

俺のところのように、うまく順応してくれればいいが、そうでなかったらどうなるのだろう。

そんなことを考えたりした。


「わかったわ。

私はテツについていくだけだから、よろしくね」

フレイアはこちらを向いて、微笑んでいた。

・・・

やっぱ、昨日キスしときゃよかったな。

軽く頭を振り、俺はアホな妄想を振り払う。


さて、高速道路を移動して行くのが無難だろう。

今回は、急ぐ必要はないのでゆっくり移動しようと思っている。

ゆっくりといっても、移動速度ではなく気分的な問題だ。

移動速度は相当なものだろう。

俺もフレイアもレベル35を超えているのだから。


移動しながら街並みを見ている。

それほど変化があるわけでもない。

相変わらず瓦礫の山だ。

淡路島に入り、そういえば澤田さんがこの辺りでいると言ってたが、立ち寄ってみるかな?

景色を見ていて、フトそんなことが頭に浮かんだ。


フレイアに、この辺りで人の街があるかもしれないので、立ち寄ってもいいかと聞いてみたら、OKの返事をくれた。


高速道路から降り、歩きながら街を探してみる。

澤田さんと出会った、高速道路の停留所の辺りから降りたので、近くに街はあるだろうと思う。

・・・・

・・

索敵してみても、魔物の反応が少ししかない。

それにレベルも高くない。

魔素が安定しつつあるのだろうか。


あ!

突然思い出した。

ペンダント。

ゲートとつながってるペンダントを持ってくれば、お腹空いたときに帝都に戻れたんじゃないか?

そう思った。


いや、でも・・・と思って、アイテムボックスに手を入れてみる。

ペンダントがあった。

これで、何かあったら帝都へ瞬間移動だな。

そう思ったら、それだけで心強かった。


一人でいろいろ考えていると、前に高い壁が見えてくる。

10メートルくらいだろうか。

結構高いな。

瓦礫と木々が邪魔で、今まで見えなかったようだ。


フレイアに壁があるが、中に人がいるのかなと話しかけてみた。

「魔素を感じるわね。 人がいるみたいよ」

フレイアが答えてくれる。

どうやら俺は、よほど注意して索敵しないと、敵以外はよくわからないらしい。

というか、俺の性格かもしれない。

自分に敵対するもの以外に、あまり関心がない。

そういえば、スキルなんてその人の個性がかなり反映されてるって言ってたような。

そんなものかもしれない。


壁の前までやってきた。

横に長く広がっている。

おそらく、ぐるりと居住地を囲っているのだろう。

こんな壁を建てられたということは、そういった魔法を使える人がいたということだ。

ま、中に入ってみればわかるが、入れてくれるのだろうか。

そう思いつつ、壁伝いに歩いて行く。

小さな入り口を見つけた。


厳重な作りになってる。

人が2~3人程、横になって通れる広さだ。

門衛だろうか。

門内側に2人立っていた。

こちらに気づき、声をかけてくる。

「何か御用ですか?」

別に威圧的な感じはない。

俺は澤田さんのことが気になったので、それを聞いてみた。


「えっと・・ここに澤田さんという男の人はいませんか?」

そういうと、立っている2人は顔を見合わせて、少し警戒し出した。

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