第174話 アニム王、何から何までありがとうございます


王宮に到着し入口でアニム王からの呼び出しの件を告げると、すぐに案内してくれた。

どうやら会議室での面会らしい。


会議室の前に来ると、アニム王が待っていた。

「やぁ、おはよう、テツ」

「おはようございます、アニム王」

「テツのご両親様も、おはようございます」

ばあちゃんたちも挨拶をして、会議室へ入って行く。


広い会議室に少し驚いたばあちゃん達だったが、席についた。

アニム王も席につき、話始める。

「わざわざお越しいただいて、ありがとうございます。 早速ですが、本題に入りたいと思います」

一呼吸おいてアニム王が言う。

・・・・

・・・

どうやら、ばあちゃんとじいちゃんに帝都で王宮直轄の職人として働いてもらいたいということだ。

特にじいちゃんの錬金術師としてのレベルは相当なものなのだそうだ。

ドワーフと比べても、むしろじいちゃんの方が優秀かもしれないという。

じいちゃん、うれしそうだな。


ばあちゃんは、プリーストとしてのレベルがあるので、神官として活動してもらいたいらしい。

そんなにハードなものではなく、週に2日くらい活動して、後は自由にしてくれていいという。

・・・・

何という、うらやましい職じゃないか。

というよりも、俺にはアニム王の配慮のようなものを感じる。

やりがいを感じつつ、自身も収入を得る。

社会の役にも立つし、働き過ぎなくていい。

アニム王、なんと素晴らしいシステムを構築してんですか、この国は。


「それでは、当分の間は私のところの係を案内役につけますので、徐々に慣れていってください。 よろしくお願いします」

アニム王が、ばあちゃんたちに優しく言っていた。

ばあちゃんたちはキョトンとしていた。

まさか今の自分たちが人の役に立つ仕事をできるとは思ってなかったようだ。

いやいや、孫たちの面倒を見てくれるだけで、そしてその存在だけで俺は感謝してますよ。

「え、えぇ・・私たちでお役に立てれば・・ねぇ、じいさん」

ばあちゃんのつぶやきに、じいちゃんは黙ってうなずく。

早速、係の人が来てばあちゃんたちを案内してくれるという。

「じゃあ、テツ。 あまり迷惑をかけるんじゃないよ」

ばあちゃんは明るい顔でそう言うと、軽い足取りで会議室から出て行った。


アニム王は微笑みながらそれを見送っている。

「アニム王、何か・・その、申し訳ありません。 私の両親に仕事までお世話してもらって・・」

「テツ、それは違うよ。 彼らの力は本当に必要なのだよ。 特に御父上の錬金術師としての能力は、私の方でも高く評価させてもらっている。 こちらこそ願ったりかなったりだ」

「本当ですか?」

俺はいまいち飲み込めなかった。


「そうだねぇ、じゃあ、逆に敵側に君の父上のような人がいたとしたらどう思う?」

「・・・・」

俺はそれだけでわかった。

脅威。

それも絶対的な脅威。

考えただけでも恐ろしい。

軽く身震いした。


「わかったかね、テツ。 君の父上の重要度が。 さて、次は君だが・・いつ出発するのかね?」

アニム王が聞いてくる。

切り替え早いな。

「はい、この面会が終われば、フレイアとともに出発しようと思っています」

アニム王が目を少し見開いて、フレイアの方をみた。

「そうか、それは良かった。 フレイアと一緒ならば心配はないだろう。 さて、テツに渡すものがある」

アニム王がそういうと、アイテムボックスから何かを取り出していた。

「ギルドでも、もらったかもしれないが、これは私からの護符も兼ねたペンダントだね。 フレイアの分もあげよう」

そういうと、二人分のペンダントをくれた。

「身に着けてくれたまえ」

俺とフレイアは首からペンダントをかけた。


ペンダントが少し光ったような気がした。

「これで、君たちの専用のものになった。 どこにいても、君たちに何かあれば、私のところへ連絡が入る。 それに、光の神の領域であれば、それなりの扱いを受けることができるだろう」

アニム王が優しく言ってくれる。

「ありがとうございます、アニム王」

「アニム、ありがとう」

俺は、両親のことといい、何とお礼を言っていいやら困ってしまった。


「別に気にすることはないよ。 行く先々での情報をいろいろ教えてくれるだけで、冒険者としての仕事になるからね。 よろしく頼むよ」

アニム王が握手を求めてきたので、俺は力強く握り返した。

「はい、行ってきます」

俺はそういうと、会議室を出てアニム王に別れを告げた。


王宮を出て、俺たちはゆっくりと街を歩いていく。

「さて、フレイア、これからよろしく」

「こちらこそよろしく」

フレイアがにっこりと微笑む。

いい笑顔だな。


「でも、テツ。 どうやって地上へ行くの?」

フレイアが俺に聞く。

「・・・」

俺の軽い足運びが止まった。

「フレイア、風魔法で送ってくれ」

「そんなことだと思ったわ」

フレイアは別に嫌がるでもなく、風魔法で俺と自分を乗せて地上へと運んでくれた。


飛んでいる感じは、シルビアの風魔法と同じだな。

フワフワとゆっくりと降下していく。

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