第172話 フレイア・・俺に惚れたのか?
家の前に立ち、フト振り向くとフレイアがいた。
そっか・・忘れてた。
「フレイアは、どこで寝るの?」
「エルフはね、自然の中ならどこでも寝られるのよ。 木や森があれば、なおさらいいわね」
フレイアは空を見上げながら言う。
帝都は空中ということもあって、空が近い。
手に届きそうなくらいに星が近くに見える。
数も多い。
そんな星空を見ながら、フレイアがポーンと家の屋根に飛び上がった。
「テツ・・今日はここで休ませてもらうわね」
月明かりが蒼く家を照らし、影を作っている。
屋根の上でフレイアが星空を見ながら何やら歌っているようだ。
髪が月明かりで柔らかく輝いていた。
きれいだな・・俺はそういう言葉しか浮かばなかった。
そんなフレイアを見ていると、自然とフレイアの横に飛んでいた。
「よっと・・フレイア、こんなところで寝るのかい?」
「そうよ。 これだけ月明かりと穏やかな天気なら、最高の寝る場所ね」
「そっか、フレイア・・明日から、本当によろしく頼むね」
俺は、頭を下げる。
本当にわからないことだらけの中、フレイアの存在がどれだけ力強く感じることだろう。
俺は本気でそう思った。
「テ、テツ。 別にいいわよ。 私だって別に目的があるわけじゃないし・・」
フレイアが顔の前で手をバタバタと振っている。
若いときの俺なら、ここで髪でも撫でて一気にキスを奪って、お持ち帰りしたよなぁ・・なんて思ってみた。
それにキスなんて挨拶、挨拶、とかうそぶいて、キスしまくったっけ?
そんなことを思い出しながら、フレイアの横で星空を眺めてみた。
そんな俺の横顔を、フレイアがジッと見つめている。
?
「どうしたフレイア・・俺に惚れたのか?」
!!
フレイアの耳が一気に赤くなってきた。
「バカ!!」
頭を殴られた。
フレイアさん、もし人を殴るときはお尻を殴るように。
そう余計な一言を付け加えたら、もう一度殴られた。
「アホ!」
やっぱり頭だった。
これくらいで退散した方がいいだろう。
「フレイア、風邪ひかないようにな。 おやすみ」
「さっさと寝ろ!」
フレイアはそういうと、屋根の上でゴロンと横になっていた。
俺も家に入り、身体を生活魔法できれいにしてからベッドに入った。
・・・・
・・・
目を閉じたら、すぐに朝になった感じだ。
上空なので、日の出も早いのだろう。
時間は4時半過ぎだ。
よく寝た方だな。
外に出てみると、フレイアが家の前で弓の手入れをしていた。
「おはよう、フレイア」
俺がそう声をかけると、パッと俺の方を見て下を向く。
「お、おはよう、テツ」
わかりやすい子だなぁ・・ま、いっか。
「弓の手入れかい?」
「うん。 これから命を預ける武器だからね」
そうだよなぁ。
俺なんてじいちゃんに任せっきりだし、これは見習わなきゃいけないな。
俺の家の横、優の家、嫁とお義母さんの家・・起きている気配は全くないな。
隣のばあちゃんの家は・・どうやら起きているようだ。
そう思って俺は移動する。
フレイアもあわててついてくる。
「テ、テツ。 動くのなら声をかけなさいよ!」
「あ、はい。 フレイアさん・・では、ばあちゃんの家に行きます、到着です」
「テ、テツ。 またバカにして!」
フレイアがレイピアを抜こうとする。
俺はあわててフレイアをなだめた。
ばあちゃんの家のドアをノックすると、じいちゃんがすぐに出てきた。
「おはよう、じいちゃん」
「おはようございます、御父様」
じいちゃん、フレイアに挨拶されたら嬉しそうだな。
挨拶を済ませて家の中に入れてもらう。
?
あれ?
昨日と少し感じが違うぞ。
俺はそう思いつつ、リビングへ行った。
「ばあちゃん、おはよう」
「おはようさん!」
「おはようございます、お母様」
「あ、フレイアさんもおはよう」
ばあちゃんは味噌汁を作っていたようだ。
「ばあちゃん、何か昨日と感じが違うんだが・・」
俺がそういうとばあちゃんがニヤッとして答える。
「わかるかい? それにしても魔法って便利だね~。 壁の位置が少し気に入らなかったから、変えたんだよ。 それにテーブルも一枚板のような感じが良かったから、そんなイメージで作ってみたんだよ」
ばあちゃんは活き活きと話してくれる。
「なるほど・・それでか」
俺はそうつぶやきつつ、席につかせてもらった。
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