第165話 ココさん、張り切ってるな


「ルナさん、アニム王の言う通り人間は虚弱なんです」

「そうか・・では、ゲートを使わせてもらおう」

ルナは素直にアニム王の言葉に従っていた。

イメージとは違い、何か子供のような感じもする。

でも、とても知恵者のような感じもあるし・・う~ん、わからん。


地上へ少し仕事をしに行くことを、優たちに伝えてくれるように、俺はフレイアに頼んだ。

「いいわよ。 伝言しておくわね」

フレイアは嫌がるでもなく、笑顔で答えてくれる。

たったこれだけの返事なのに、俺は癒される感じがした。

嫁なら無視か、一言二言、小言がついてくるだろう。

「ありがとう、フレイア。 あ、俺の家、勝手に使ってていいから、よろしく頼みます」

「わかったわ」


シルビアがジッと俺たちを見ていた。

・・・

「シ、シルビアも留守番頼むよ。 それに、ばあちゃんたちの様子も見ていてくれ」

「そ、そうか。 わかったぞ、任せろ」

・・・

シルビア、何かやることが欲しいのだろうな。


とりあえず、こちらの方はこれでいいとして、問題はこのルナたちという爆弾と一緒に地上に行くことだな。

ルナはともかく、ウルダがなぁ。

俺の考え過ぎならいいのだが。

アニム王は忙しいらしく、俺に依頼してすぐに消えていた。


俺とルナ、ウルダはゲートを使わせてもらって、すぐに地上へ移動。

俺の家だ。

「ルナさん、審議官の居る場所まで移動します。 俺についてきてくださいね」

俺的には、なるべく飛ばずに移動してもらうと助かるのだが、そんなことは言えないな。

「うむ」

ルナはうなずくと、移動を開始。

一緒に走ってくれた。

なるほど、きちんと人のルールに従ってくれるんだな。

さすがだ。

すぐに到着。

俺の速度など平気でついてくるよな、やっぱ。


市役所の広場を見渡すと、先ほど魔法で作った建物が少し大きくなっていた。

そこの近くにワイバーンが翼をたたんで待機している。

なるほど、騎士団員がいるのだろう。

俺たちはそこに近づいて行く。

建物の中に入ってみる。

「すみませ~ん。 ココって審議官の方か、ギルド関係者の方いますか~?」

そう声をかけつつ入った。


中の人がこちらを見る。

騎士団員が最初に声をかけてきた。

「あ、テツさんですね。 王様から聞いてます」

誰?

俺はそう思って騎士団員を見た。

服装ですぐにわかるが、顔は知らない。

そっか、念話か。

横の人は、政務官だったっけ?

こちらに一礼してきた。

俺も礼を返す。


騎士団員と政務官が、ココと話をしていた。

ココの横には、先ほどは目にしなかったが、やや若い男の人がいた。

それに市の職員だろうか、3人ほどと一緒に話をしている。

「テツ・・あなた本当に帝都にいたんだね」

ココが微笑みながら言う。

こいつ、俺を疑っていたのか。

審議官って、嘘を見破れるんじゃなかったのか?


「だから言っただろ、ココさん。 それより、ここにダンジョンを作ったらどうかという、アニム王の言葉を伝えに来たのだが・・その様子なら聞いてるな」

「ええ、さっき帝都の人たちに聞いたわ。

あ、それとこの人だけど、この街のギルドを運営してくれることになったの」

ココが横の若い人を紹介してくれる。

「アポロです、よろしくお願いします」

俺も挨拶を交わす。

市の職員は発言しないな。

おそらく言葉が見つからないのだろう。


「まだ、若いけれど人がいないしね・・仕方ないわね。 それに、地球人も一緒に運営してくれるそうだから、何とかなるわ」

職員がお辞儀をしていた。

ココ、張り切ってるな。

頼むよ!!


「それはそうと、テツ。 ダンジョンなんて簡単にできるものじゃないのよ。 もしかして、あなたが作れるの?」

ココ、マシンガントークだな。

「それは知ってるよ。 確か、ダンジョンクリエーターとかのスキルが必要なんだよな」

「よく知ってるわね。 そうよ。 そのスキルや属性なんかもレアなんだけど・・で、誰がやってくれるの?」

ココがそういうと、俺の後ろからルナが姿を現した。


騎士団員と政務官は丁寧に頭を下げていた。

ルナはそれを見て、軽くうなずく。

地球人にはショックだろう。

黒髪の超絶美人。

みんな固まってるな。

当然な反応と言えば反応だ。

女優さんとはまた雰囲気が違う。

明らかにその身体から普通ではない雰囲気を感じ取れるからな。

触れることが何か許されないような、そんな感じだ。


ルナがココに近づいて行く。

「私がダンジョンを作るのだ」

ルナは静かに当たり前のように言葉を出す。

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