第163話 報告してみたが、緊張する


俺は少し気まずい感じがしたが、なかったことのようにフレイアに聞く。

「どうしたの、フレイア?」

フレイアは微笑みながら俺を見る

「まぁ、いいわ。 アニムが呼んでるわよ」

「アニム王が? そうか・・ありがとう、フレイア」

俺はそう答えると、早速王宮へ行ってきますと優に言った。

優はうなずきながらもフレイアを見てニコニコしている。

頑張れ、優。

それから地上でも異世界人、このアニム王国の元住人が来て、ここと同じような社会システムを構築するらしいとも、優に伝えた。

風吹君のことも付け加える。

優は少し目を大きくして、俺も負けていられないな、などとつぶやいていた。


優に後を頼み、俺はフレイアと街を歩きながら王宮へ向かう。

俺は横にいるフレイアを眺めてみた。

この子が俺を気に入ってくれているのか。

確かに美人だ。

目線を下に移動する。

そのまま目線がひっかかることなく下へ移動する。

足下まで目線を移動させた。

はぁ、ペッタンだな。


パコン!

頭を軽く殴られた。

「テツ、絶対失礼なことを考えてたでしょ」

「いや、何のこと?」

もう1回殴られた。

フレイア、あんたエスパーか!

俺ってフレイアのペットじゃないんですけど・・狂暴だな、エルフ。

そんなことをしてるうちに王宮へ到着。

すぐにアニム王の元へ案内された。

どうやら会議室での話らしい。

会議室、広いな。


案内されるまま部屋に入ってみたが、結構人がいる。

俺も席を勧められて座った。

普通に座ったけど、これって会議だよな。

こんな席・・しかも王族の席だろ。

重役会議なんて出席したこともないぞ。

俺は意味もなく緊張してきた。

「さて、テツもそろったことだし、先ほどの続きを考えてみたい」

アニム王がそう言って始まった。


俺は妙に緊張しているので、落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせる。

それが余計に緊張度を高めている感じだ。

人の声があまり聞こえない。

この席にいるのは、考えてみれば凄まじい顔ぶれじゃないのか?

アニム王にルナ、ウルダ。

アニム王国の偉いさんだろう人が5人。

騎士の格好をしてる人が3人。

それに俺とフレイア。

壁際には6人ほどが等間隔で立っている。


俺って場違いじゃないのか?


「テツ、地上の報告をしてくれないか」

アニム王が俺にいきなり振ってきた。

皆が俺の方を見る。

「え、えぇ、あ、はい・・」

俺が言葉を詰まらせていると、ウルダが笑っていた。

「あはは・・テツ、何を緊張しているんだ?」

ルナも微笑んでいる。


その笑い声を聞いて、少し俺の緊張が解けた。

「いえ、こんな場所で発言などしたことないもので・・」

俺は正直に答える。

その一言を発したら、何か落ち着いてきた。

続けて報告をする。

「では、地上でのことを報告させてもらいます。 私の住んでいた市・・街ですが、生き残りの住人がかなりいました。 その行政機関の人が、このアニム王国の転移者という人たちと接触し協議したそうです。 そして、早速この帝都のライセンスカードと同じようなものを作っていました。 そこで、審議官という人と接触し、私のライセンスカードを見せると、帝都ギルドのカードとすぐにわかったみたいです。 審議官は嘘を見破れるそうで、私が嘘を言っていないことを確認し、地球人と一緒に街を作っていくと言っていました。 今のところ、私でわかるのはそれくらいです」

最初は緊張していたが、話をしていたらかなり落ち着いてきた。

「ありがとう、テツ」

アニム王が労いの言葉をくれる。


「ミラン、どう思う?」

アニム王が聞いていた。

ミランって、ギルドマスターじゃないか!

さっきは緊張して、誰の顔も見てなかったからな。

よく見れば、壁際にエレンさんもいるぞ。


「はい、私もそれを聞いて安心しました。 ギルドとしては、街があれば連携していきたいと考えております」

「そうだな、こちらも早速、騎士団員と政務官を派遣したところだ」

騎士団長・・だったっけ?

その人が言っていた。

もう人を派遣したのか・・早いな。


「うむ。 となれば、他にも転移者はいるであろうな。 それぞれで今回のようなケースになればよいが、そうでない場合もあるじゃろう」

初めて年配者を見たな、その人が言っていた。

服装からは魔法関係の人だろうか。

わからん。


「ええ、そう思います。 そういったものたちを探し、保護しつつ街との連携が取れるようになるのが、まずは目指すべき道かと思います」

アニム王の横にいる人が発言していた。

「私もそう思う。 みな、これからよろしく頼む」

アニム王が頭を下げて、そして立ち上がった。

「会議は以上だ」

アニム王がそういうと、皆がそれぞれ部屋から出て行った。


残ったのは、ルナとウルダ、フレイアに俺。

それにアニム王とミランだった。

俺の方にアニム王が近づいてきた。

「テツ、緊張させてしまったかな」

アニム王が微笑みながら話す。


ウルダがまた大笑いした。

「あはは・・あのテツの顔といったらなかったな、あはは・・」

フレイアも後ろで笑っていた。

俺って、そんなひどい顔をしていたのか?

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