第161話 地上の街の報告をしなくては
この女の子・・案外素直なのかもしれないな。
「いえ、そういうわけではありません」
「じゃあ、どういうわけよ」
女の子はしつこく食い下がってくる。
いや、やっぱ素直じゃないな。
「これ・・」
俺はそう言ってライセンスカードを見せた。
無論、帝都ギルドで作ってもらったやつだ。
!!
審議官という女の子はそれを見て驚いていた。
「え? あなた、この星の人よね? あ、そうか・・私たちよりも先に来た王国民の居住区で取得したのね」
何やら勝手に自己解決してくれてるようだ。
ありがたい。
「ちょっと見せてくれる」
女の子はそういうと、俺からライセンスカードを奪った。
「あ・・」
まぁ、カードにレベルは表示されないし、大丈夫だろ。
女の子は俺のライセンスカードを見て、少し驚いていたようだ。
「ふうん・・テツっていうのね。 !! テツ、どういうことよ。 Cランクの冒険者ってなってるけど・・それに発行元は帝都ギルドってなってるわよ」
女の子は俺の方へ近づきながら詰め寄って来る。
ちょっと怖いな。
別に隠すわけでもないので、俺は素直に答える。
「え、ええ、そうです。 帝都のギルドで発行してもらいました。 で、私は帝都に移住するのです。 だから必要ないのですよ」
・・・
「え? えええええ!!!」
!!
いきなりのビッグリアクションだな、おい!
こっちがびっくりするぞ!
「テツ! 帝都があるの? どこよ、どこ? それよりもこのカード、偽物じゃ・・ないわね。 どういうことよ。 あなたこの星の人間でしょう? なのにどうして、帝都ギルドのライセンスカードなんて持ってるのよ。 おかしいじゃない? 私たちだって、ほんの少し前に転移してきたっていうのに・・」
女の子はまくしたてくる。
よく舌が回るなぁ。
俺はむしろそっちの方に感心してしまった。
でも、説明するのも面倒だしな。
簡単な説明方法ないかな?
・・・・・
・・・
俺が考えてる間にも、ああでもない、こうでもないなどとしゃべってばかりだ。
「えっと・・君、何て名前なの?」
「え? あぁ・・私? 私の名前はココよ」
「ココ、俺はこちらに転移してきたアニム王と知り合いなのですよ」
そういうのが一番いいんじゃないかと思った。
・・・
予想通り効果があったようだ。
「え? 王様と知り合いなの? ほ、ほんとに? でも、ライセンスカードは本物だし・・嘘は・・言ってないわね。 そっか。 そうなんだね」
ココはそういうと、静かになった。
「そういうわけなんで、俺はライセンスカードは持ってるから・・ありがとう、ココ」
「いえ、こちらこそ失礼しました」
ココはそういって、カードを返してくれる。
俺は落ち着いたココを見て言う。
「ココ・・俺はいろいろ今の世界状況を見ていきたいとおもっているんだ。 そんな訳でまた、こちらにも立ち寄って情報交換させてもらうよ」
「ええ、そうね。 たぶんこの街は、王国のような感じの街へと成長していくと思うから・・まだ、人口規模は小さいけどね」
ココは力強く答える。
「うん。 俺もそう願うよ。 王国の異世界人とこの地球人・・仲良く発展していければいいなと思うよ、ほんとに。 ココ、よろしく頼みます」
俺は本当にそう思い、素直に頭を下げた。
「も、もちろんよ。 任せなさい!」
ココは胸を張ってやる気のようだ。
若いっていいな。
俺も負けていられない、そういう気持ちにさせてくれる。
「さて、テツ。 私はまた仕事に戻るけど、これからよろしくね」
ココはそういうと、ライセンスカードを発行しているところへ戻っていった。
俺はそれを見送ってゆっくりと歩きながら帰路につく。
アニム王に念話を送ってみる。
『アニム王、テツです』
『やぁテツ、どうしたんだい』
アニム王、元気になってきたな。
声が弾んでいる。
『はい、実は・・あ、それよりも今大丈夫ですか』
『問題ないよ』
『はい、実は私のいる街、地上の街ですけど、どうやらアニム王の国民が転移してきているようなのです』
『本当かね?』
アニム王は驚いているようだった。
『そうか・・帝都以外の住民も無事転移してきているのだな。 良かった・・』
『アニム王・・それで、私のところの市役所、いや行政機関の人たちと協議したらしく、ライセンスカードを発行して街を帝都のように作っていく計画のようです。 先ほど、審議官という人に
『あはは・・それは大変だったね。 でも、そうか・・私たちのシステムを取り入れてくれるんだね。 ありがたい』
『アニム王、またそちらに戻りましたら、いろいろ報告させてもらいます』
『あぁ、よろしく頼むよ。 それとテツ、フレイアが寂しそうにしているよ。 君、フレイアに気に入られたようだよ。 フフフ・・』
アニム王が意味深な笑いを含める。
『え? フレイアがですか? う~ん・・』
『テツ、また後でね』
アニム王はそう言って、念話を切った。
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