第160話 審議官・・ですか?


「町田さん、ライセンスカードなんかどうします?」

田原さんが聞いてきた。

まさか既に持ってますとも言えず、

「え、あぁ、家族と相談して発行してもらいます」

俺は適当に答える。

「そうですね。 私もとりあえず帰って相談してみます」

「はい、これから大変な感じですが、よろしくお願いしますね」

俺がそう言うと、田原さんも力強くうなずく。

「こちらこそ、いろいろありがとうございます。 よろしくお願いします」

お互いに握手をした。

「では田原さん、また」

俺はそう言って軽く会釈をし、田原さんと別れて異世界人を近くで見ようと思って移動した。

田原さんは家に帰るみたいだ。


他の人たちも、早速ライセンスカードについて聞いている人もあれば、帰る人もいた。

俺もライセンスカードがどんなものか確認しておきたい。

もし、帝都のものと同じならアニム王に関係してくるだろう。

そして、こうやって異世界の人が転移してきたということは、ここだけじゃなく他の場所でも同じようなことが起こっているだろうとも俺は推測してみた。

ライセンスカードを発行している場所近くまで来る。

先ほど作った簡単な建物だ。


異世界人と市の職員だろうか、発行を受ける人はボードに手を乗せていくつか質問に答えながらやっているようだった。

きちんと一人一人の仕切りはあるようだ。

ライセンスカードを見ると、アニム王のところのものとよく似ていた。

それが確認できればいい。

俺はそう思って帰ろうとすると、階段の横から人が近づいてくる。

マントをまとっている。

どうやら異世界人らしい。


フードをしているので、顔はよく見えない。

俺と同じくらいの身長だろう。

俺もそれほど背は高くない。

そのフード付きがいきなり声をかけてきた。

「ねぇ、あなた・・何でレベルが見えないの」


は?

いきなり何言ってんだ?

男か? 女か?

声ではわからないな。

俺は声の主の方をじっくりと見た。


「ねぇ・・言葉は通じてるわよね?」

「あ、ああ、通じてるけど、いきなり何かなと思ってね」

俺も答えてみる。

「そう、良かった。 で、なんであなたのレベルが見えないのかって聞いてるのよ」

「知らん」

フード付きの相手は、俺の即答に少し戸惑ったような感じだ。

「え?」

「だから、知らないと言っている」

いきなり人のレベルを聞くなんて、警戒Maxだろう。


「どういうこと?」

「いや、こっちが聞きたいよ」

「あなた、この星の人よね?」

「はい、そうです」

俺の答えに声をかけてきた人は不思議そうに言う。

「私は異世界・・アニム王国というところにいたのだけれど、職業が審議官という、相手の嘘がわかるスキルを持っているのよ。 だから、あなたが嘘を言っていないのはわかる。 けれど、レベルが見えないのがわからないのよ」

!!

おぉ、アニム王の国民か?

だが、本当かどうかはわからないが。

でもまぁ、市長などと話していたところをみたり、その雰囲気や仕草からは悪意を感じないな。

俺はそんなことを思っていた。


「そっか・・でも、そんなこといきなり言われても俺にもわからないよ。 俺も隠蔽いんぺいするスキルなんて持っていないし・・」

「そっかぁ・・さっき上から見たときに、あなただけレベルが見えなかったから不思議に思ったのよ」

さっき俺と目が合ったと思ったやつか。

しゃべり方からすると女の子っぽい感じだが、わからんからな。

俺は警戒しつつ相手を見ていると、フードを外して顔が見えた。


!!

マジか!

何でアニム王国の女の人は美人が多いんだ?

魔法で整形してんじゃないのか?

美人だ。

美人というより、かわいい感じだ。

髪は緑色っぽい感じでストレートの髪。

かなり若い感じがする。

俺は失礼にも聞いてしまった。

「君、女の子だよな?」

「はぁ? 当たり前でしょ!! こんなかわいい男がいるわけないでしょ。 この星の男って、アホなの?」

アホですか・・そうかもしれない。

しかし、毒舌だな。


俺が謝ると、女の子は続けて聞いてきた。

「で、あなたのレベルはいくつなの?」

「いや、どうしてあなたに言わなければいけないのです?」

「え? 当たり前でしょ。 ライセンスカードを作るのにどうせわかるんだし、それに私みたいな審議官が最後に確認するから・・」

女の子は当たり前だという感じだ。


「そうですか・・ですが、俺は必要ありません」

「え? どうして? この街を出て行くの? 街の外はレベルの高い魔物とかいるかもしれないのに・・」

女の子は単純に心配してくれているようだ。

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