第158話 そういえば、田原さんはどうなっただろうか?


ばあちゃんは、俺が嫁とあまりうまくいってないのを知っている。

だが家族になったので余程のことがない限り、別れるのはやめた方がいいとも言っていたことがあった。

俺もそう思う。

そりゃ相手が暴力を振るうとか、まるで生活無能力者というのなら話は別だ。

だが、あの嫁でも子供たちには朝以外は母親らしいことはしていると思う。

まぁ、俺に対してはやる気はないようだが。

う~ん・・やっぱ違うか?

しかし、学校行事などの家の外のことはうまくやっているようだしなぁ。

・・・

そんなことが俺の頭に浮かんだ。

まぁ、いい。


さて、この帝都での家は理想と言えば理想になる。

家族が離れず、同じ敷地で暮らすわけだから。

ただ、家を分けているが、大きな家の部屋分けと思えば問題もないだろう。

少し各部屋の距離があるだけだ。

それで今のところはいいと思う。

そう考えつつ、俺はばあちゃんの家に入らせてもらった。

中の作りは、エレンさんに見せてもらった様式になっている。

ばあちゃんたちは土魔法を教えてもらったらしく、気に入らなければこれからどんどん変えていくそうだ。

ばあちゃん、気合入ってるな。


俺は荷物をアイテムボックスから取り出して、まとめて置いた。

「ばあちゃん、これで全部かな?」

「えっと・・うん、これで全部だね。 ありがとう、テツ」

ばあちゃんは早速片づけに入った。

すごく体力あるな、ばあちゃん。

見ていて感心する。

じいちゃんは何もすることがないようで、ソファで座っている。

「じゃあ、俺はまた地上に戻ってくるよ」

ばあちゃんの家を後にする。


俺はまた王宮に行き、見張りの人に会釈してゲートをくぐる。

地上へ着くと、嫁たちはまだ荷物を集めていた。

優はもう出来てるし、颯や凛はほとんど持っていくものがない。

嫁とお義母さんが、モタモタしている感じだな。

見ていると、まだしばらくかかりそうなので、俺は外の様子でも見て来ようと思った。

「嫁さん、少し外を見て来るね」

俺はそう言って家の外へ出る。

相変わらず嫁さんの返事はない。

優に頼むなと一言付け加えた。


そういえば、田原さんところの風吹君って、どうなったっけ?

少し気になったので、田原さんの家に向かう。

なるほど、ご近所さんも結構普通に歩いているな。

日常を感じられるようになっている。

まぁ、ほとんどレベル10以上になっているので、ワーウルフ以外の魔物に悩まされることもないだろう。

聞けば、ワーウルフを飼っている人もいるみたいだ。


田原さんの家に到着すると、風吹君とお父さんが外で何やら話していた。

俺が近づくとこちらに気づいたみたいだ。

「あ、町田さん。 先日は風吹が優君にお世話になったみたいで・・ありがとうございます」

丁寧に挨拶された。

「いえいえ、私は何もしてませんから・・」

俺はそう答えつつも、田原さん何やらソワソワしている感じがする。


「田原さん、どこかへ行かれるのですか?」

俺は聞いてみた。

「えぇ、市役所の方に、異世界の人が何名かいると聞いたので、どんなものか見に行ってみようと思っていたのです」

え?

異世界人?

そっか、アニム王の帝都の人は空中都市に転移してきたけど、それ以外の人はどうなるのだろうとか言ってたっけ?

忘れてたな。


「異世界人ですか、それは興味ありますね。 私も一緒に行ってもいいですか?」

「そりゃ、もちろんですよ。 風吹も一緒に行ってもらおうと思って、家の外へ出てきたところです」

風吹君に「こんにちは」と挨拶された。

きちんとしてるな。

俺も、家族に言ってから行くと伝える。

また向こうで合流しましょうということになった。


風吹君はレベル19になってた。

この辺りでは最強なんじゃないのか?

そう思いつつも家に向かう。

ご近所さんとよくすれ違うのは、みんな市役所に異世界人を見に行ってるのかもしれない。


家に帰ってみると、嫁たちは用意ができていた。

田原さんのことを話して、俺は市役所へ行ってみると伝える。

嫁たちは別に興味もないようで、帝都に移動すると言っていた。

優は俺と一緒に来てくれるのかと思ったら、帝都の方に行くという。

嫁たちの荷物は、優のアイテムボックスに全部入ったようだ。

「そっか、じゃあみんなが移動したら扉から俺がペンダントを外しておくよ」

みんなの移動を見送った。


さて、俺は市役所に向かって移動してみようと思う。

5kmくらいしか離れてないから、一瞬だろうな。

やっぱ、感覚おかしいよな(笑)

俺は苦笑する。


予想通り、本当に数秒で到着した。

到着すると、田原さんもちょうど着いたところだったようだ。

「あ、町田さん、早いですね」

「はい、全力で飛ばしてきましたから」

とりあえず、そう言っておこう。


市役所には、結構人が集まって来ている。

時間は11時になろうというところだ。

これだけの人数が生き残っていたんだ。

まず俺はそう思った。

パッとみて、100人くらいはいるだろうか。

ご近所さんの顔も見える。

目が合うと、軽く会釈をしてみる。

ガヤガヤと騒がしかったが、市長が出てきた。


俺達のいる場所は、市役所の玄関前の広場だが、外に階段があって広場から見上げると庁舎のところでテラスのような感じになっているところがある。

クリスマスなんかでは、この場所から下を見ると結構きれいなイルミネーションが見えたりする。

その場所に市長が現れた。

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