第151話 ばぁちゃん、本気で帝都に引っ越しするみたいだな


「わかりました~! では、テツ様、これからもよろしくお願いします」

「いえ、こちらこそよろしくお願いします。 えっと・・」

「ア・リ・アです! お忘れなく!」

「すみません、アリアさん。 俺って、人の名前覚えるの苦手で・・」

苦しい言い訳をしてみた。

「いえ、構いませんよ~」

アリアがにっこりとして俺を見る。

こ、怖いな。

絶対嫌な気分になっただろ、それって。

俺がそんなことを思っていると、ギルドの扉が開き、ばあちゃんたちが帰って来た。


「あ、エレンさん、お世話になりました」

俺はすぐに扉の方を向き、立ち上がってお礼を言った。

「なるほど・・テツ様はきれいな方の名前はすぐに憶えられるのですね」

・・・

アリア、絶対根に持ってるよね。

「いえ、アリアさん・・そういうわけではないのですが・・」

「じゃあ、どういうわけですか?」

この子、絡んでくるよなぁ。

「あ、テツ様。 ちなみにエレンさんはダメですよ。 ギルドマスターの奥さんですから」


!!!

え?

えぇ~!

マジで?

マジかよ~!!

こんな美人が、あのおっさんの嫁さんなのか?

まぁ、ギルマスもそれなりにいい男ではあるけど。

しかし、エレンさんみたいな美人の嫁さんか・・毎日、帰るのが楽しいだろうな。

俺は毎日ストレスの嵐だ。


エレンさんが近寄ってくる。

「テツ様、いくつか場所をご紹介してみましたら、とても喜んでくれました。 もし、居住されるようでしたら、いつでも声をかけてくださいね」

「ありがとうございます、エレンさん」

「では、私はこれで失礼します」

エレンさんはそういうと、ばあちゃんたちに一礼をして奥の方へ移動して行った。


「ばあちゃん、どうだった?」

俺は聞いてみた。

「いやぁ凄いね、魔法ってのは。 家が一瞬でできるんだもの。 それに、場所はとてもいい場所ばかりで・・いつでも引っ越していいよ」

「引っ越し? そんなに良かったのか?」

俺も驚いてしまった。

あのばあちゃんがこれほど気に入るとは。

家のことにはかなりうるさい人なのに。

じいちゃんはソファに座ってくつろいでいた。


俺はばあちゃんと一緒にじいちゃんのところに行ってソファに座る。

「じいちゃんも気に入ったかい?」

「テツ、凄いな魔法というのは・・」

ばあちゃんと同じ反応だな。

「ばあちゃんの思い通りの家が建ちそうかな?」

「そりゃ建つだろうね。 それもすぐにだよ。 気に入らなければ、これまたすぐに手直しできるしね。 いやぁ、こんな便利なものはないねぇ」

ばあちゃんが生き生きとした顔で話してくれる。

余程感動したんだな。


エレンさんが建築できる魔法使いでも連れて行ってくれたのかな?

エレンさん自身がそういった魔法でも使えるのかな?

まぁ、どちらでもいい。

とにかく、もしここで住むのなら問題なさそうだな。

ばあちゃんたちの話を聞きながら俺は考えていた。

・・・

「じゃあさぁ、本当に引っ越ししてもいいのか?」

俺はいまいち信じられない感じだが、聞いてみた。

「もちろんだよ。 食べるものもそれほど変わらないらしいし、お店もいろいろあるみたいだしね」

ばあちゃんはノリノリな感じだ。

じいちゃんはどっちでもいいと言っている。


「そっか・・俺も嫁さんたちに聞いてみるよ。 子どもたちも学校なんてもうないだろうしね。 それにこの帝都の方が安全だと思うから」

俺もそう言いつつ引っ越しには賛成派だ。

安全性という点に関しては、地上よりもここの方が段違いに良いだろうと思う。

人もきちんと教育されているようだし、そりゃどこの国でも犯罪者はいるだろう。

でも、この国のシステムなら日本よりも、地球のどの国よりもしっかりしていると思う。

魔法を使えると、もしかして偽証なんて不可能なんじゃないかと思う。

犯罪者になるのは、余程のバカか特殊な事情でもない限り、起こらないんじゃないかとも思える。


とりあえず、一度地上の家に戻って準備だな。

その前に、嫁たちの泊っているところへ行ってみなきゃ。

ばあちゃんたちは街を散策するのかとも思ったが、引っ越して来たらいつでもできると言われ、先に地上へ戻るという。

なるほど、やっぱり本気で引っ越してくる気なんだな、ばあちゃん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る