第149話 ギルドマスター登場


ばあちゃんたちのギルドカードの登録は終わったようだが、俺はまだ少しかかるらしい。

エレンさんに話してみた。

「エレンさん、もし私たちがこちらに住むとしたら、どこら辺りになるのか、またどんな家になるのか知りたいので、よければ私の両親を案内してもらえますか。 無理をいいますけど・・」

「わかりました、テツ様。 では、ご案内させていただきます」

エレンさんは笑顔で気持ちよく答えてくれた。

好きになりそうなタイプだな。


エレンさんは隣の受付の人と家の場所などを確認していたようだ。


「ばあちゃん、俺の方はしばらくかかりそうだから、街を案内してもらってきて・・」

ばあちゃんはエレンさんに「よろしくお願いします」とお辞儀をして、じいちゃんと一緒にギルドを出て行った。

その後ろ姿を見送ると、受付の人が呼んでいた。

「テツ様、ギルドマスターが間もなく来ます」

「え? ギルドマスターですか・・何故なぜ?」


・・・

悪いことをしたわけじゃないが、警察を呼ばれたような気分になっている。

少し不安だな。

奥の方から、ラガーマンみたいな身体のおっさんが現れた。

受付の女の人に軽く挨拶すると、俺の方へやって来る。

「初めまして、ギルドマスターのミランです。 君が、テツ君だね。 王様から聞いてるよ」

え?

アニム王から話されてるのか?

どんな感じで伝わっているのだろう。


「おや、おとなしい感じだね。 王様からはかなり強い人間だと聞いていたのだが・・」

ギルドマスターが微笑みながら話しかけてくる。

俺はどう言葉を返していいのかわからない。

まぁ、挨拶くらいはしておかなきゃいけないだろう。

「ギルドマスター、初めましてテツです。 この星の住人です。 アニム王からはどのように伝わっているのかわかりませんが、普通の人間です」

「そうか・・それよりも、職種の判別がつきかねると報告を受けたのだが・・それはまぁ、口実だ。 実は、君の力を見てみたい。 異世界の人間に興味があるが、王様からはかなり強いと聞いているからね」

・・・

アニム王、いったい何を言ったんだ?

それに俺は普通の人間だったのが、単にレベルが上がっただけだぞ。


俺が少し戸惑っていると、ギルマス(ギルドマスター)が俺の肩を軽く叩いてきた。

「テツ君、あまり気負わなくていいよ。 どれくらい動けるのか確認させてもらうだけだから・・」

そういうと、ギルマスが受付に指示を出していた。

「テツ君、あの扉の向こうが闘技場になっている。 では、行こうか」

ギルマスが勝手に物事を進行していく。

鼻歌気分で案内してくれた。


どうみても普通の扉で、外からは闘技場があるとは思えない感じだ。

建物の規模からしてもありえないだろう。

!!

扉をくぐると、陸上競技場くらいの広さの場所に出た。

なるほど・・空間魔法か何かで制御してるのだろうな。

俺はそう思った。

その空間にギルマスと俺の二人だけが入る。

「テツ君は、何が得意なのかな? 剣術、体術、魔法・・まぁ大きく分けるとそれくらいの分野になるけど・・」

ギルマスが片手に木剣を持って聞いてきた。


「ちなみに俺は剣術なんだ」

「ギルドマスター、私も基本は剣を使っています」

「だろうね。 その腰に下げてる剣は、とてもいいものだろう」

ギルマスにはわかっていたようだ。

「はい、この剣は父が作ってくれたもので、とても役立ってくれています」

「君の父上がか・・そういえば、先ほどエレンと一緒に外へ出て行かれた人か・・なるほど」

「ええ、そうです。 あの・・剣術といっても、我流で誰に教わったわけでもないのです」

俺は自分のことを補足しておいた。


「ふむ。 まぁ、基本はあるけど、どの剣術家も我流だな。 俺も我流だ。 というか、技なんかも一応あるけど、基本はその本人のイメージを具現化したものが技スキルに変換されて獲得されるからね。 よく似た技があっても、同じ技はないと思うよ」

ギルマスは言う。

そうなのか?

道理で、技を獲得もしてないのに、スムースに剣が振り回せるわけだ。


「そうだったのですか。 なるほど・・魔法と同じようなものなのですね」

俺はそう答える。

「そうだね。 レベルによって威力などは異なってくるけど、後は本人のイメージが大事だと思うよ。 さて、こちらはいつでもいいよ」

ギルマスは剣を肩にかついでこちらを向く。

俺も飛燕を横に置き、木剣を借りた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る