第128話 なんだ、あの集団は?


呼吸を整えつつ、シルビアが追い付いてくる。

「ル、ルナ様、すみません。 遅れてしまって・・」

「別に急ぐことはない。 気にするな」

ルナはシルビアを気遣っているようだ。


「シルビア、大丈夫か? 俺も少し急ぎ過ぎたかもしれない。 すまないな」

俺も反省をする。

確かにシルビアの移動速度を考えていなかった。

「べ、別に大丈夫だ。 少し速い移動だったので、不甲斐ない姿を見られてしまったな」

シルビアは自嘲気味に語る。

その仕草もいいぞ。

さて、気持ちを切り替えて辺りを索敵してみる。

やはり、レベルの高い魔物の反応はない。

俺がそうやって索敵をしていると、ルナとウルダが立ち止まった。

二人とも前を向いている。


「ルナさん、どうしたのです?」

俺はルナの方を向きながら声をかけた。

ウルダが答える。

「テツ。 この星の住人で、テツほどのレベルは多く存在するのか?」

俺には何を言ってるのかわからなかったが、質問には答えた。

「いえ、いないと思います。 今の世界になって、まだ数日ですから・・私みたいに、特別な条件でもない限り考えれないと思います」

俺はここまで移動しながら、この世界についていろいろルナたちに話していた。


当然だろう。

俺はたまたまアニム王の支援の下、レベルの高い魔物を倒す機会があった。

普通の地球人では、近代兵器を用いても魔物の討伐などは無理だろう。

ミサイルのようなものであればわからないが、そもそも直接攻撃を仕掛けないもので、経験値が入るのかどうかわからない。


「どうかしたのですか?」

ウルダに聞いた。

「いや、レベル的には20前後だと思うのだが、その集団というか、グループがこちらに向かってきている。 数的には・・15人前後か」

!!

15人!

15人前後も、レベル20辺りになった人がいるのか?

それはすごいな。


俺も注意深く索敵してみる。

・・・

なるほど・・確かに魔物とは違う反応だ。

レベル22が一番高いようだ。

後は15~20くらいで構成されている。

よくまとまっているな。


お互いの距離が100メートルくらいになっただろうか。

向こうも気づいたみたいだ。


3人ほどが先行して距離を詰めてきた。

こちらはゆっくりと移動する。

お互いの顔が見れる距離まで接近。

向こうの人が手を挙げて振ってくる。

こちらも手を挙げて振り返した。

ただ、妙に緊張感が漂う。


先行している3人は等間隔で広がり、俺たちにゆっくりと近寄って来る。

なるほど、いつでも戦闘できる位置だ。

「大丈夫ですか~?」

まずは様子見といったところだろうか、声をかけてくる。

俺も返事を返す。

「ありがとうございます。 大丈夫です。 あなたたちこそ、よくご無事で」

相手の男たちは、少し言葉を詰まらせた。

「え、ええ。 こちらから先、新宿方面はかなり危険ですよ」

そういいつつも、男たちの目線はルナたちにくぎ付けだ。

なるほど。

地球人ではありえない美人だからな。

ヴァンパイアだし。


ルナたちは言葉を出すことなくジッと相手を見ている。

俺はすかさず片手で口を隠し、小声でウルダに言った。

「ウルダさん、あなたたちの種族は言わない方がいい」

俺がそういうと、ウルダが黙ってうなずいてくれた。

ルナも俺の顔が真剣になっているのを確認したのか、そのまま男たちを見ていた。

シルビアが心配だが、ルナたちの手前、大丈夫だろう。


男たちの一人が後ろに手を振り、聞いてくる。

何かの合図だろうか?

「あなたたちはどこへ行くつもりなのですか?」

男たちの後ろの方の集団が近づいてくる。

どうやら安全だという合図だったようだ。


「ええ、私たちは身内が心配なので、様子を見に行こうかと思っていたのです」

俺がそう答える。

「そうですか・・しかし、都心部は考えられないくらい強力な魔物がいますよ」

「ありがとうございます。 ですが、せっかくここまで来たものですから、行けるところまで行ってみます」

俺がそう言ってるうちに、後ろの集団がやってきた。

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