第127話 移動が楽だな
そんなことを考えながら、移動を続ける。
すぐに大阪付近を通過し、名古屋辺りが近づいてきた。
移動しながらやや違和感を感じていた。
魔物が出てこない。
海の魔物はよくわからないが、陸での移動では出会っていない。
俺は上空のルナの方を見上げた。
その俺の動きに気づいたルナが声をかけてくる。
「どうしたのだ、テツ」
「はい、実は不思議に思っていたのですが、魔物と遭遇しないなと・・」
「あぁ、魔物か・・」
ルナがそういうと、ウルダが代わりに答えてくれた。
「ルナ様、私が説明いたします。 テツ、ルナ様の種族は知っているな」
ウルダが言う。
「はい、ヴァンパイアですね」
「そうだ。 そのヴァンパイアの王であるルナ様に、よほどのバカでもないかぎり、前に出てくる魔物はいないだろう」
!!
なるほど!
そうか、魔物たちが餌扱いになるわけだ。
「ウルダさん! わかりました」
俺はそれだけを答えた。
ウルダもうなずき、また前を向いて飛んでいく。
「ウルダよ、あの人間はなかなか賢いな」
ルナがウルダに聞こえるくらいにつぶやく。
「はい、私もそう思います。 余計なことは言わないようですね」
「この星の住人も、いろいろ種類があるということか」
ルナはそうつぶやきつつ、テツの方をチラッと見る。
俺の視界に富士山が見えてきた。
しかし、移動する時間感覚がわからなくなってくる。
まさか生身の身体の移動の方が、公共機関よりも速く移動できるなど考えもしなかった。
時間を確認してみると、13時5分となっている。
う~ん・・本当に時間、合ってるのかな?
そんな疑問が起こってしまう。
俺はアニム王に念話を飛ばしてみた。
『アニム王、テツです』
『・・やぁ、テツ』
アニム王、すぐに返事はくれるが、何か妙な間がある。
『間もなく、アニム王のところに到着すると思います』
『そうか』
『アニム王・・何か具合悪いのですか』
俺は恐る恐る聞いてみた。
『いや、そうではないよ。 ルナから聞いているかもしれないが、私とルナは形式的には婚姻関係になるのだよ』
!!!
『え? えぇぇ・・ブフォ・・』
俺は驚いてしまった。
念話なのにむせる感じがする。
これだけの美人の女を・・いや、それはいい。
『ほ、本当ですか、アニム王!』
『テツ・・何か嬉しそうだね。 ただ、王家が勝手に決め、詳細をこれから整えて行くところで転移となったからね。 まだ始まってもいなかったのだが』
アニム王が淡々という。
なるほど、そりゃ言葉も見つからないよな。
『そうだったのですか・・何とも言えないですね』
『そうなのだよ、テツ。 言葉がないのだよ』
アニム王は困っているようだ。
『アニム王、間もなく到着となりますが、会ってみてから考えるしかないのではありませんか』
俺の言葉が効果があったのだろうか。
『そうだね、テツ! 考えても始まらないなら、行動して始めるべきだね。 ありがとう』
アニム王はそう言うと、念話を切った。
・・・・
アニム王、いきなり切ったな。
周りの景色も厚木付近に来ていた。
俺の様子を見ていた、ルナとウルダが微笑みながら話しかけてきた。
「テツ、アニムとの念話は終わったか?」
ルナの笑顔がたまらないな。
「はい。 アニム王に間もなく到着すると伝えました」
俺は走るのをやめて歩き出す。
俺に合わせてルナたちも地上に降りて来た。
一緒に歩く感じになる。
シルビアがかなり疲れているようだ。
・・・
うっかりしていた。
シルビアの移動速度を考えていなかった。
シルビアの顔を見ると申し訳なく思ってしまう。
ウルダがシルビアに声をかける。
「シルビア、大丈夫か?」
「は、はい。 大丈夫です・・はぁ、はぁ、ふぅ・・」
シルビア、大丈夫じゃないだろ。
・・・
それにシルビアさん、その呼吸法はラマーズ呼吸法に似てますよ。
出産のときにする呼吸法ですよ。
心の声です、はい。
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