第126話 それにしても、レベルが上がったな


上空からルナとウルダが見ていた。

「クラーケンか・・我々の前に現れるとは、目障りだな」

ルナが不快な表情をする。

俺の身体にゾクッと感じるものがある。


ウルダがすぐに行動をとる。

「ルナ様、私が処理いたします」

ウルダの動きでルナはやや落ち着いたのだろうか、俺の寒気はなくなった。


ウルダがクラーケンの目線の高さに下りていく。

即座に斧を取り出して一振りする。

ブゥン!

クラーケンの腕が三つほど吹き飛んだ。

!!

マジかよ、たった一振りであの巨大な腕が吹き飛んだのか?

いったい何のためにあのイカは出てきたんだ?

俺は改めてウルダの戦闘力の高さに驚いていた。


ウルダがクラーケンの頭の部分に近づいて行く。

クラーケンは逃げる素振りも示さずに、海中から腕を伸ばしてきた。

残りの腕をグンッと伸ばし、ウルダをつかもうとする。

ウルダが斧をクルッと回転させた。

クラーケンの腕がほとんど吹き飛んだようだ。

・・・

あのイカ・・アホだろ。

俺がそう思った時だ。


パッシューーーーン・・ドーーーーン!!!


ウルダに雷が落ちた。

その閃光で、一瞬だが俺の目の前が白くなっていた。

すぐに視界は回復してきたが、見るとウルダが少しふらついている。

・・

なるほど、あのイカの能力か?

腕はおとりだったのか?

それにしても対価としては大きいだろうに。

そう思っていると、イカの無くなった腕の部分に白い影が出来つつあった。

まさか、腕が再生するのか?

あ、それよりもウルダは?

強烈な閃光だったが・・。


俺は、ウルダの横顔を見た。

!!

美人が怒ると、こんな顔になるのか。

きれいなのだが、怖い。

心が凍りそうな寒気を感じる。


「この魔物風情が・・」

ウルダが静かに怒気を込めてつぶやく。

俺は直感的にヤバいと思った。

そう思うと身体が勝手に飛び出していた。

ダッ!

俺は一気にクラーケンに向かっていき、刀を抜く。

クラーケンに向かいつつ、俺の後ろをチラっと見た。

シルビアは俺の背中から落ちたが、海の上で沈まずに浮いている。


クラーケンの目の間に向かって全力で突っ込んでいく!

イカって確か目の間が急所じゃなかったっけ?

それって、クマだったか?

そんなことが頭の中をよぎったが、刀を前に出しそのままさらに加速していく。

「クッ! 貫けよぉ!!」

そう叫びながら刀の影に隠れるようにして突きを繰り出す。

パッシューーン!!

少し強い膜を引っ張るような感じがあったが、すぐに弾けた。


どうやら貫いたようだ。

すぐに俺は後ろを振り返った。

クラーケンの頭の真ん中に、人の大きさくらいの穴が開いていた。

・・・

そのままクラーケンが海の上に水柱を上げて倒れ込む。

ドッパーーーーーン!!

クラーケンはプカプカと浮いていたが、しばらくして蒸発。

俺も海の上で立ち、その状態を見ていた。


『経験値を獲得しました』

『レベルが上がりました』

俺の頭の中に天の声が聞こえる。


俺はウルダの方を見る。

ウルダの震えていた身体が元に戻っていた。

「テツ、余計なことを・・」

怒りの矛先を俺に向けて来たのか?

やばいな・・獲物を横取りした感じになった。

そう思いつつも、俺はゆっくりとウルダに近寄って行く。

「すみません、ウルダさん・・身体が勝手に動いてしまって・・それに、美人は怒ってはダメなのですよ」

俺はまずはそう言ってみた。

「それに、ウルダさん。 あのままだったら、怒り過ぎて暴れ出していたでしょう。 周りには私やシルビアがいるのです。 こちらがやられてしまいます」

それは本心だ。

俺はそういいながら、クラーケンの魔石を回収しシルビアの方へ向かって行く。


悪かったなと言いつつ、またシルビアを背負った。

・・・

う~ん、役得だな!


「ウルダよ、テツの言う通りだ。 貴様は少し冷静さを学ばねばな」

ルナが助け船を出してくれたのだろうか。

ウルダは素直にルナの言葉に従う。

「ルナ様、申し訳ありません。 私としたことが魔物相手に自我を抑制できないとは、反省いたします」

あのウルダ、ルナには本当に服従してるな。

怖ぇ・・ルナ。

美人だけに、余計に変な感じだが。

でもまぁ、結果的に俺が一番得をしたな。

弱った高レベルの魔物の経験値を得ることができた。

狙ったわけではなく、本当に無我夢中で飛び出した結果だ。

・・・

仮に、これを狙ってやっていたとしたら、案外女の直感系でバレていたかもしれない。

とにかく、ラッキーだった。


ウルダもまた空に上がり、俺たちは見えている陸に向かって移動した。

陸地は目の前に迫っていたので、すぐに到着。

時間は12時前といったところか。


シルビアを背中から降ろす。

すぐにシルビアが俺の頬にキスをしてきた。

「テツ、ありがとう!」

俺は言葉を返せなった。

「な、なんだテツ。 こちらを見つめてきて・・お礼のつもりだったのだが、気に入らなかったか?」

「いや・・シルビアがなぁ。 意外だなと思って」

「わ、私だって、それくらいはできるぞ!」

いや、そういう気づかいができるんだなと思っただけだ。

これは口にしない方がいいだろう。


「シルビア、ありがとう」

俺は頬に手を当ててシルビアに言う。

シルビアはクルッと背中を向けて歩いて行く。

さて、俺も動き出さなきゃ。

ルナとウルダは空中で浮いていた。

どうやら待っててくれていたようだ。

アニム王のいる方向へそのまま向かって行こう。

前を見ると山が連なっている。

あの高い山は大山だろうか。

あの山を越えて富士山辺りを目指せばいいかな。

大雑把にそんなことを考えながら移動を開始。

移動しつつ、俺はステータス画面を確認。


テツ

レベル:39

種族 :人

HP :600/655 +15

MP :415/465 +10

力  :568     +15

防御 :530     +10

敏捷 :757     +15

技能 :453     +10

運  :72      +0

職業 :隠密9


固有スキル 

生活魔法8

罠解除1

軽歩行☆

忍術☆

鑑定☆

アイテムボックス☆

気配察知☆

自動回復☆

祝福☆


それにしても、レベル39か。

すごく上がったよな。

後、職レベルだが9まで来ている。

今よりも上の職なんてあるのだろうか。

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