第125話 シルビア、お前って面倒なやつだな
俺たちはアニム王のいるところへ向かって移動している。
俺の移動はひたすら走るのだが、ルナは飛んでいた。
背中の羽を広げて、羽ばたくことなく飛行している。
ウルダは俺と一緒に走ってくれていた。
シルビアは相変わらず、ポーン、ポーンと跳ねるように移動している。
それぞれが、軽く移動している感じだ。
周りからは相当な速度で移動してるように見えると思うのだが。
移動しながら、ルナに少し話しかけてみる。
「ルナさん、アニム王と念話してもいいですか?」
「おぉ、よろしく頼む」
ルナはそういうと何やら嬉しそうだった。
ん?
もしかして、二人はいい仲なのかな?
俺はそんなことを思いつつもアニム王に念話を飛ばしてみる。
『アニム王、テツです』
アニム王からはすぐに返事が来た。
『やぁ、テツ。 何かな』
『はい、つい先ほどルナ王と出会い、今アニム王のところへ向かっています』
『・・・・』
え?
アニム王の返事がない。
『あの、アニム王・・』
『わかっているよ、テツ。 それで、どれくらいで私のところへ到着できるだろうか』
アニム王が言葉に詰まるなんて珍しいな。
『おそらく、3~4時間・・いや、5時間くらいもあれば大丈夫だと思います』
『そうか・・』
シルビアがいるのを忘れていた。
海を渡らなければいけなかったんだ。
シルビアの風魔法では、海の移動が遅くなるだろう。
そう思っていると、海に到着。
それにしても移動中、魔物とは全然出会わないな。
俺がそんなことをフト思うとアニム王が話してきた。
『テツ、また近くまで来たら教えてくれたまえ』
『わかりました』
アニム王との念話は終わった。
俺はルナの方を見て、アニム王にルナのことを伝えたと言った。
ルナは微笑みながらうなずく。
なるほど、やっぱりいい仲なんだな、王同士だし。
俺は勝手にそんな風に思ってみた。
「ルナさん、前に見える水ですが、海といってかなり広い幅があるのです。 シルビアは風魔法で漂うように移動していました。 私は海の上を走れるのでいいのですが、少し移動が遅くなると思います」
俺がそういうとルナたちは平然とした顔で答える。
「心配ないぞ」
ルナは言う。
どうやらウルダも飛べるようだ。
そして、ウルダがシルビアを運ぶという。
「ウ、ウルダ様・・そのようなことをされては・・」
シルビアが恐縮していた。
「しかしな、シルビア。 貴様の移動では速度がなぁ」
ウルダの言葉にシルビアがチラっと俺を見る。
・・・
はい、俺は即座に理解。
わかりましたよ、シルビアさん。
「ウルダさん、俺がシルビアを背負います」
シルビア・・お前、アホな上に面倒だな。
心の声です、はい。
「テツ、いいのか? 私なら問題ないのだが・・」
ウルダは軽く答えてくれる。
「はい、俺もシルビアを背負うくらい、問題ありません」
「そうか・・では、頼むか」
そういうと、シルビアはホッとしたような感じで俺の方へ来た。
何ホッとしてんだ、シルビア!!
「テツ・・すまないな」
シルビアはそういうと、俺の背中に身体を預けた。
ったく、すまないじゃないぞ。
面倒な・・
!!!
いや、これは、これで・・ごっつぁんです!!
何と強烈な!
俺の背中にシルビアの胸が当たる。
今までこれほどのプレッシャーが背中にあっただろうか?
ない!!
くぅ・・。
「シ、シルビア、気にするな!」
俺はそう言いつつも、心では感謝、大感謝をしていた。
「シルビア、お前・・かなり軽いな」
そういうと、バカ! と言われ、頭を軽く殴られた。
こういうテッパン、最高だ!!
異世界、最高だな、おい!!
神様、ありがとう~!!!
って、危うく違う世界に飛ぶところだった。
さて、俺はシルビアを背負い、気分よく海の上を走っている。
地上と変わらない速度が出ているはずだ。
ルナとウルダはその俺の速度に余裕でついてきている。
しばらく移動していると、海の水平線のところに陸が見え、山のようなものが見えてきた。
もう、陸地が見えたのか?
行きはシルビアの風魔法に頼っていたし、まさか海の上を走れるなんて思ってもいなかったからな。
帰りの移動速度に俺は感心していた。
その時だ。
!!
いきなり目の前の海が盛り上がった。
ザッパーーーーン!
海の中から、白い大きなイカのような足が1本出てきた。
続いて本体の頭の部分だろうか・・イカだな。
海から顔を出していた。
こちらを眺めている。
クラーケン:レベル40
おいおい、レベルが高過ぎだろう。
それに、行きはいなかった・・って、空を漂っていたからか。
俺はそんなことを思いつつ、そのレベルに驚いたが、焦ることはなかった。
ウルダとの手合わせの効果だろうか。
もしかして麻痺したのか?
レベルは俺より2つも上だが、脅威を感じない。
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