第124話 俺は、試されていたのか


ウルダが穿うがった地面の揺れで少し俺の体勢が崩れた。

ウルダが即座に振り向き、続けて斧を振り下ろしてくる。

クッ、このぉ!

ギン!!

俺は何とか刀で受け流して、直撃だけはまぬがれることができた。

ウルダの斧を受けてわかる。

この女、やはりバケモノだ!

まともに受けていたら、俺はつぶれていたんじゃないかと思う。

刀で受けつつ、流すことができたのが良かった。

刀=飛燕が俺の身体を守ってくれたような、そんな感じだ。


だが、ウルダの振るった斧の衝撃で、受け流したものの俺は吹き飛んでいた。

俺の身体は地面をこすりつつ、岩に激突して止まった。

起き上がろうと思うが、思うように力が入らない。

刀を杖にして、どうにか立ち上がることができた。

遠くに立っているウルダを見つめる。

俺は不思議に思った。

どうして、俺が転がった時に追撃しなかったのだろうと。


ウルダは斧を肩に担ぎ、俺の方を見ているようだ。

「ルナ様、この人間たいしたものですよ」

「うむ、そうだな。 ウルダの一撃をしのいだのだからな」

二人はニコニコしながら会話をしている。


俺の方へウルダが近寄ってきた。

「テツ。 お前はすごいぞ」

そういって、ウルダは俺の頬にキスをしてくれた。

??

俺は頬を軽く片手で触れつつ、どうしていいのかわからなかった。


「テツよ。 ウルダが褒めてくれたのだ。 誇るがいい」

ルナは言う。

「そうだぞ、テツ。 お前は、私の斧に傷をつけたばかりか、2度も攻撃を避け生き延びたのだ。 人として誇っていいぞ」

なるほど・・そういうことですか。

俺は試されていたのですね。


俺はゆっくりと立ち上がろうとしたが、身体はまだ痺れていた。

しかし、ウルダさん・・俺を殺す気でやっていたのか?

・・・

いや、それはわからないな。

でもまぁ、結果オーライだ。


シルビアは立ち尽くしたままだ。

あまりの出来事に放心状態のようだ。


ルナが俺の方に近寄ってくる。

俺の頭に軽く手を触れた。

ん?

こ、これは・・。

俺の身体が軽く感じる。

どうやら回復魔法をかけてくれているようだ。

「ありがとうございます、ルナさん」

俺はすぐに完全回復した。

ルナも微笑みながら、ウルダの斧を見せてもらっていた。

「なるほど。 まさかウルダの斧が傷つくとはな・・」

「えぇ、ルナ様。 私も驚きです」

二人ともが斧を眺めていた。

少しして、ウルダが斧をアイテムボックスへと収納。


その斧って、それほど丈夫なものなのか?

それとも良いものなのか?

何せ俺は、無我夢中だったからな、わからない。


シルビアがようやく動きだしたようだ。

俺の方へ駆け寄って来る。

「テ、テツ! 強いと思っていたが、まさかこれほどとはな。 本当に何者なのだ?」

いやいや、シルビアさん、人間です。

ただ、少しレベルが高いだけです。

俺は苦笑いしながらシルビアを見る。


俺の前にルナ、ウルダ、シルビアの3人の女の人が笑いながら立っている。

俺はその姿を眺め、改めて思う。

慣れてくるようだが、それにしても凄まじい美人たちだ。

シルビアもものすごい美人だと思ったが、ウルダも美人だ。

特に、ルナ。

何と言うか、触れることが怖いような美人。

ヴァンパイアだったよな・・何歳なんだろう。

人の尺度で計るのは良くないのだろうが。


そんな俺の視線に気づいたのか、ルナがこちらを見た。

「テツ、貴様、何やら失礼なことを考えていないか?」

その言葉に残りの二人もこちらを見た。

たまらん!!

この視線。

怖いのだが、刺さるようなその視線・・妙にうれしくなる。

俺って妙な性癖ができてないよな?

「い、いえ、その・・三人ともがあまりにもきれいなので、つい見とれていました」

俺は正直に答えた。


「テ、テツ! ルナ様やウルダ様に失礼であろう!」

シルビアが焦っていた。

ルナとウルダはうなずいている。


「ルナさん、私を回復してくれたのですね。 ありがとうございます。 そして、アニム王に会いに行かれるのでしたね?」

「うむ」

俺の言葉にルナがうなずく。

その仕草、アニム王もそうだったが、みんなさまになっているよな。

ただ、シルビアは少し違う感じがするのは気のせいだろうか?

俺は軽くうなずくと声を掛ける。

「では、出発しますか?」


ルナもウルダもすぐに移動できるようだ。

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