第123話 シルビア! あんたアホですか!!


移動しながら、ルナが俺の刀を見て興味を示す。

「テツ、お前のその腰にぶら下げているものは、とても良いものだな」

「はい、ありがとうございます。 これは、私の父が作ってくれたもので、トロウルのメイスを基調にしています」

俺は素直に答え、ルナに刀を手渡してみた。


俺は軽そうに手渡してみたが、ルナはやや顔を引き締める。

「なるほど・・重いな」

ウルダも持ちたそうな感じだったので、ウルダさんもどうぞと言ってみる。

「うっ、かなり重いな」

確かにウルダの腕に力が入っているのがわかる。

顔も真剣な表情になっていた。


それをシルビアが興味深々で見ていた。

私も、私もという感じだ。

シルビアにもどうぞ、と言ってあげる。

ドン!

シルビアの両手は飛燕に引きずられて地上に落下。


ふぅーん! ふぅーん!

シルビアは両足を踏ん張って俺の刀を持ち上げようとしていた。

・・・

しかし、美人がしていい顔ではない。

鼻水が出ないだけマシか。

あの、シルビアさん・・何してるんですか?

シルビアは刀を一生懸命引き上げようとしているが、ビクともしない。

「クッ、うぅ・・な、なんだ、この武器は・・重すぎる。 はぁ、はぁ・・」

地面にめり込んでるような感じはない。

ただ、シルビアでは持ち上がらないみたいだ。

「テツ、なんだこの武器は? 私には重すぎて持ち上がらないぞ」

シルビアはそういって、刀を手放す。


俺が近寄って行き、刀を片手で拾い腰に掛け直す。

俺の動きを見て、シルビアは改めて驚いたようだ。

「テツ、お前凄いな」

「いや、シルビア・・そうじゃないんだ」

俺はルナとウルダも一応見て説明をする。

「この刀は、私専用の武器なのです」

!!

その一言で、ルナとウルダはわかったようだ。

「なるほどな。 テツ、貴様は良い武器を持っているな」

「ありがとうございます」

ルナは素直に褒めてくれた。

すると、ウルダが俺に少し興味を持ったようで、

「テツ、少し私と手合わせしてみないか?」

は?

いきなりですか?

このウルダって人・・美人だが、戦闘狂じゃないよな?

なんかそんな感じがしてたけど。


ルナも興味あるような眼差しでこちらを見ている。

アニム王に向かって移動するんじゃなかったのですか?

しかし、ここで断ると・・ダメだよな。

その時シルビアが余計な一言を放つ。

「それはいいな、テツ。 ルナ様、テツは先ほどサーペントを一人で倒したのですよ」

!!

アホですか、シルビア!

胸がでかいだけで、お前はやっぱりアホだったのか!

これなら、フレイアの方が随分マシだぞ!

俺はそう心で叫んでいたが、既に遅し。

・・・

ルナの目つきが変わっていた。

ウルダもニヤニヤしている。

やっぱりウルダは戦闘狂なんだ。

死なないよな、俺。


「わかりました。 ですが、ウルダさん・・殺さないでくださいね」

俺は保険をかけた。

「大丈夫だ。 軽い手合わせだからな」

ウルダはにっこりとうなずく。

その目・・絶対ぇ嘘だろ!

こんな雰囲気になったら、もう断れないよな。

まぁ、やるしかないけど・・。

あのアホのシルビア・・胸触っておけば良かったよ、ほんとに。

俺はそう思いつつ、ゆっくりと移動する。

ウルダはうれしそうにルナに挨拶していた。


俺たちは、ルナとシルビアから距離を取って向かい合う。

ウルダと向かい合うとわかる。

かなりのプレッシャーだ。

ウルダは強い。

俺が全力を出しても勝てない感じだ。

!!

ウルダが大きな斧を手にしている。

アイテムボックスか!


「テツ! 本気で来て構わないぞ」

「はい」

俺は自信ない返事をしたが、初めからそのつもりだ。

俺は軽くウルダに一礼をする。


シュパ!!

俺は一気にウルダに接近し、刀を抜刀する。

そのまま横薙ぎに払った。

ルナがそれを見ていてつぶやく。

「ほぅ、速いな」


ウルダが俺の横薙ぎを上に飛んでかわした。

正解だ!

刀の長さ以上にどうやら切れてるらしい横薙ぎ。

それをウルダは初見で見切ったわけだ。


俺の上からウルダが斧を振り下ろす。

俺は横へ飛びそれをかわした。

斧が地面に突き刺さると、そのまま俺の方へ石礫いしつぶてとともに振り回してきた。

俺はその斧をくぐるように前に転がる。

地面が揺れていた。

ウルダの穿うがった地面が、かなり先の方まで割れている。

・・・

バケモノか!!

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